体型の話です。
私は一般的に「やや痩せぎす」のほうだけれど、それでもただ貧相だと言うだけの
話で、カネコを着るには致命的な欠点がある。いわく、首が細くない。鎖骨が美しく
浮き出ていない。要するに骨格が100年前の日本人で、デブじゃあないが鈍そうな、
走るのいかにものろそうなふやけた体型をしている。それはカネコのポリや昔のピンハ、
インゲのローウエストを着る時にはいいのだが、綿のジャストウエストワンピース、
ことにワンダフルワールドのものは眼も当てられない惨状を引き起こす。私は自分の
お引きずりなところも、爽やかさや清新さのまるでない、饐えたような黴くさい土蔵の闇
に近しいところも、不健康な眼の下の隈も、しなしなくねくねするのに都合がいいので
気に入っているのだが、事実古い着物を着る時には非常に便利なのだが、綿のジャスト
ウエストは駄目ですね。

ポリのローウエストはいける、和調はまかせろ、レトロな昔のピンハの古すぎる型の
ワンピースもこなしてみせよう。しかし綿のジャストウエストだけは、酒浸りで崩れきった
生活の街娼がお嬢さんの洋服を着ちまったような、サイズに無理はないのだけど、
何となく性病に侵された腐肉をごまかしていい匂いのする袋に詰め込んだような、妙な
感じがする。これは夏用の爽やかメイクをしている時もそうなので、おかしなものです。
実際の私の容姿はただの地味な姉ちゃんなのだが。冬用の、毒虫みたいな暗赤口紅
こそがせいぜい分に合っている、と思ったりして、グロスなんかつけちゃってる時は
気恥ずかしい。

そして綿のジャストウエストの中でも、WWは特にそうなんですね…。あれはウエスト
なんぞは普通サイズであればいいが、顔回りの骨格、特に顎の線に清潔さが、鋭角が
なければならないと思っている。横顔の耳の下の、えらの部分がくっきり首と分かたれて
いなければ。要するに印象が鋭くないとってことなんでしょうが、私は少女の頃から顎も
引っ込んで鈍そうな首つきだったしなあ…(泣)。激痩せで、体重が今より六キロ落ち
込んだ時も、眼はおちくぼんで頬はこけたけれど、顎の線はわずかに繊細さが出てきた
かな…という程度だった。そういう体型なのだともうあきらめました。WWは外人顔の、
それこそ猛禽類のように鼻も鋭く、顎も尖り、奥眼のちょっと怖いような顔でなければ
WWを着た時の格好よさは成立しないのだと思う。可愛くて痩せてても、童顔や丸顔
ではただの「かわいらしいふりふり服」になってしまう。個人的には、フリルやレースの
ついた服をかわいらしく着るのは安易でつまらないと思うんで、大人顔の皆さんもっと
着てくれ。

WWはカネコ系中もっとも少女な服だと思うが、同時にそれは毒を含んだ、もっとも
アナーキーかつ驕慢な、着る者に鋭さと硬質さを要求する服だと思う。だから骨格は強く
美しいほうがいいよね。それが綺麗に浮き出るストイックな肉のつき方をしていることも
大事(単に痩せてても意味ない)。脚は特に細くなくてもいいが、走るのが速そうじゃなきゃ
だめだ。肉食獣の獲物を追うしなやかさと残酷さ、あるいは優雅に命がけで逃れる草食
動物の強さとしたたかさ。そんな緊張感のある脚をペチコートに包んで、「かわいいなんて
ものじゃない」不敵な精神とまなざしで、傲然と地を蹴り、シャレや韜晦でフリルやリボン
を装って見せる…それだったら私が綿のジャストウエストを諦めた甲斐があるというもの
です(笑)。
だから長身の皆さんももっと着てくれ。











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