ここにはすでに他へお嫁入りしたものもありますが、博物誌的な意味合いで飾ってあります。コサ写真、コサ好きならばひとつだって多く見たいと思いませんか。皆頼むからコサ写真をネットに上げてくれ…つけて歩けなくても、上げてくれ…
そんな執念のこもった庭園で言えばイギリス式迷路の奥に。密やかで隠微で傲然たる花々たち。

カネコ系が他のフリルブランドと一線を画すのは、何もフリルやピンタックやプリントの贅沢さだけじゃありません。むしろ特筆すべきはそのコサージュ!服にもまして靴にもまして、コサージュのみを一つ二つと集めつづける人間がここにいるのがその異様な魅力を物語っております。もはや服にコサを合わせるのではない、コサに服を合わせるのです。またその本末転倒の買い方にも応えうるコレクション性の高いコサであります。まさに手のひらの庭園。
はじめて買ったのはピンクハウスのいちごコサ、しかもそれがカネコ世界初の1歩を踏みだす買い物でした(笑)。はなっからコサ街道をゆくべく運命づけられたと申せましょう。
 お定まりの、近所の古着屋で出会い…このコサ、いちごの他にしろつめと菫がブーケになっていて、ラフィアも控えめで、なによりくるくる巻いた蔓がかわいーんですわ!いちごの花と実の起毛素材も…。
 こんな尋常じゃない凝りようのコサ見た事なかった。
その後順調にはまってゆく訳なんですが、私の場合、コサージュ街道とはその数をさして言うのではない。服との比率の狂いっぷり、かねあいのとれてなさ、はたまた同じような色がそろってしまってコーディネイトの差し色が増えない役立たずっぷり、でも持ってると幸せなんだもんね〜、というまことに始末の負えない打ち込み様をさすのです。白ならこの百日紅と、カメリアと、くちなしがふたつ。結婚式用にオーソドックスなくちなしを買って、白はもうやめようと思っていたその直後、(しかし薔薇は別にして、と
思っていた(死)百日紅に撃沈されました。
花の布地が光沢があって、繊細で綺麗で。フォーマル向きですが、カチッとはしていないので、ポリやインゲのスーツで遊ぶ時かな、と思ってます。(どういうシチュだ)
 遠目だと白花の曼珠沙華にも見える。そのつもりで金魚の和調エプロンを着た時、キャミソールの胸元に飾ったら、でっかいので重みで始終ナナメ45度うつむき加減。課題です…。似合うとも思えず、他へ嫁にやりました。
 これはオークションで目にした瞬間、問答無用で金を突っ込みました。なんとなれば、集めていたインゲのカタログで長年憧れていたコサだったから。93−94秋冬の、この頃は服にも垂涎のものが多いので、服飾費上の最優先事項で買っております。
 本当はナッツじゃなくて、薔薇の実なんですね。それと桑の実。主力は青いアスター。この青がなんともいえずひなびた青で、木の実のセピアとよく合って、全体に秋の色あいです。
 好きな「指輪物語」の著者のものに「ホビットの冒険」という本があって、その中にエルフの王が出てくる。春には草花を編んだ冠を、秋には紅葉と実りを織りなしたそれをかぶる…と書かれていて、その秋のよそおいはこんなではなかったかと、個人的に思うわけ。
 しかし似合うと好きって本当にどうしようもないけど違うのよね、と思い知らせてくれたコサ(笑)。この重みと素朴さはどうしても昔のジャケットの胸に着けるもの。トラッドまったく駄目なんです。
 98年日本調をセットで買った時以来、鬼のようだが本当にそれ以来といっていいプロパー買い。キルトスカートとか、毛織のストール、非フリル系のものはちょこちょこ買いましたが…和調をデフォルトに指定してからは、コサージュを虎視眈々と狙うようになりました。
 和調って、最重要ポイントはコサージュなんだ…しかし和調コサは人気で、店頭で見かけたら、と思っているうちにあれよあれよと紅葉も逃した。藤も逃した。朝顔も逃した。この曼珠沙華だけは…!祈りが通じて、
さるお方のお導きで手にしました。かしわ手。
 本当はもっと暗い鮮烈な赤で、こんな痩せたアマリリスのような写りじゃないです(笑)。撮るのが凄く難しいコサ。がくの部分も、花びらの裏も恐ろしく凝っていて、何より嬉しいのは個人的には茎の部分!ちゃんと太いのです。針金に綿を巻いてあるのだそうで。
 あのまがまがしい妖気、むらがって咲いている時の非現実感、白昼夢っぽさをよく残しています。
和調に合わせるコサをその後も探しておりましたが、なかでも98年日本調パープルに合わせるそれ、紫のコサが欲しかった。
黄色味の勝った江戸紫の縮緬、初の和調であるこの回が一番好きなんですが、何分カタログでは雛菊コサだったんですね…それも縮緬の同素材はいいけれど、色が埋もれてしまって、私としてはもっとくっきりポイントを目立たせたかった。
そんなわけで菫コサのまわりをうろついていた。
しかし菫コサの人気高く、加えてラフィアの存在がどうも邪魔になる。あれは洋装には可愛いが、和には向きません。縁起ものっぽくジャンクっぽくなってしまう。
そんな折、またしても御導きによりこの勿忘草が…
まさしく垂涎の江戸紫!沈んだ渋い葉の色あい!それに何といっても、可愛いのは長く垂れたしっぽ、いえ斜茎です。これが着けるとうねるようにくねり落ちて艶やかなんだ…。わざとまっすぐ薬玉のようにつけたりもします。
そして和ものコサ第二弾。
カネコの服に関しては、私は季節を考慮したりしないんですが、それでも朝顔は夏のものかな…と思っていた。記憶では、薄い淡いすがしい色合いの、黄色みのない色展開だったと憶えていましたし。ただ、評判そのものは聞いていた。つぼみが咲きそうで激マブ、というのを。
御導きにより手にすると、色はどうもこの後の、二回目に出たほうの朝顔の記憶だったらしい。薄く生成り色を帯びた、
絶妙な淡いくせに暖かいピンク。私のような黄色人種にとってぎりぎりの、また考えうる限り最高のそれ。
和調において、淡さ儚さは成立しないだろうと思っていた。私にとっての民族調は郷愁にしろ狂気にしろ、ある種全く洗練を投げたところにある。誇張と強烈。絵草紙めいたいかがわしさ。そこへこの朝顔が嵌まり込んでしまうとは。
昔のインゲのポリワンピにもよく合います。丈夫だし可愛いけど、髪の毛とよく絡むんですよね、蔓が(笑)。
二個目の勿忘草、チビコサ。これはわらしべ長者のようにして(笑)手に入れました。
一つはいかにもおとなしい、地にとけこむようなのが欲しいと思っていたところ。私の所持品みんなある意味強烈だからなあ…デニムサンドレスの胸につけて、重くないのがよかったので、その点このWW97年、勿忘草はぴったりでした。何しろ単色小花という奴、手を出したことがないので、繊細系だと得意のハッタリも効かないし、手探りだったのですけど。
これは一般でいうところのコサらしいコサ、驚かれないコサです。エビフリャー型、というのを除けば(笑)。しっぽが邪魔になるかと思いきや、案外納まるもので、要するに名古屋城に対してのしゃちほこの角度で着ければいいんですね。リボンの結びがたっぷりしているので、羽根部分が垂れて、そう使いにくい形にもならなかった。
グレイがかった青の色が綺麗なだけ、写しにくいコサです。どうやっても色が出ない…。
白薔薇のスカートを持っているので、一つは白薔薇が欲しいものだと思ってました。で、これを手に入れてみたわけですが…どうもしっくりこない。花は漂白したように真っ白で、つぼみは可愛いし、ブーケとしては形よくきれいだとは思うんですが、葉っぱが起毛素材でないところ、またその色、など、なんだかちょっと違うんですね。さんざん考えて、下の一輪薔薇を手に入れた時に気がつきました。ケミカルなんです。感じが。
金子功氏が去ってからのピンクハウスはそれなりに違う路線でがんばってたと思うんですが、送り出される服に私はいつも違和感を覚えていた。デザインとかの細部じゃなくて、何かこう、全体的に…と思っていて、このコサージュのおかげでぴったりした言葉が見つかった。私にはケミカルなんだ、と。何もかもが。長年のもやもやが晴れてすっきりした気分です。ここまで回り道しないと気づかない頭の悲しさよ。
すっごく写しにくいコサ第二弾。私が持ってる中で、曼珠沙華と肩を並べて気の違ってるコサなんですが、そのビョーキのような感じが全然出ていません。本当は大変でかくて広げた手のひらくらいはあります。花びらはもっと黄味が強く、ピンクはまだらの濃い気違いピンクで、どうにも気が狂ってます。これを着物のとき、ごーんとショールにつけたりでーんと根付の位置に飾ったりします。…それ以外に使い道あるのか。
ケイタマルヤマの着物ブランドから出たものですが、このときは他にも牡丹や露草や色々可愛いコサージュがありました。しかしこの菊を見た瞬間思った。「いっとけ自分!」他に花は数あれど横溝世界を気取るならこの狂ったコサしかない。また私の選ぶ着物によく合うんですね。やっぱり肌の色を基準に組み立てていくから、暑苦しいものや濃いものや分かりやすく狂ったものばかりが集まってしまって。おかげでこのコサ、家族からも「あの狂ったの」と呼ばれる始末。大好きです。
薔薇を求めて、手に入れたこれは生成りの薔薇。インゲボルグのくちなしコサと同じような、硬い素材でできています。しかしひといろに見えず、陰影が微妙につくようコテ当てしてあってなかなかただものではないのです。くちなしよりも少し紅茶色っぽい感じの生成りの濃さで、特に葉の色にそれが顕著です。明らかに赤茶を帯びている…そういえばとある時期からカネコやワンダのブラウスの色出しなんかは彩度が変わりましたね。ブルグレとか生成りとかが特に。
私はブルグレは往年の古いもののほうが暖かく鈍い沈んだ色合いで好きだったな…近年のものは冴えて硬質の感じで肌に合いません。逆に生成りは古いたまご色よりも、その後の赤みを帯びたもののほうが使いやすい。全般にカネコは和調もどんどん彩度低いほうへいってしまって、買いたくても似合わなかった…。芥子と南天柄とか、欲しかったんですけど。
この一輪薔薇も素材や感じが似てるからくちなしの代わりに使えるか、といったら使えません。奥深い…。
上の方のエビフリャー型勿忘草、これは同色の大きいほうです。この、写真に出ない、灰色がかった青の色がたまらなく好きで、単色小花ブーケ大に挑戦してしまいました…。Gジャンやデニムのチャイナジャケットにつけるので、重さはクリアできるかなと思っているんですが。私は顔が丸いので、こんなころんと丸くまとまったコサ、顔の近くにつけて大丈夫なのか…?デニムキャミワンピの胸のほうがよくないか…?などと煩悶中。罪なコサだぜ。リボンも二種ついてるし。
しかし本当に色合いが出ませんね。右はやや近いほう。この葉っぱの起毛のかわいらしさがとんでもない。さらに花への入り方がいじらしい。起毛の葉に弱いらしいです、自分。それとつぶつぶ集まった小花。もう開いてしまっているのもだいぶあるんですが、気がつくと一つ一つ指でぎゅっと閉じて形を整えようとしている己に気づく…平気で人に一時間ぐらい時を使わせてしまうコサ。使われるんじゃない、使え!春夏つけたおせ!でもこのリボンがね、緑がかった青と青天鵞絨の二種使いでね…(ループ)
鈴蘭っていったらカネコでよくでたほうの、花にそれこそ鈴のようにまあるくコテ当てして花茎は細く繊細で、はかなくもコロコロかわいらしい、といったイメージなんですが、これは「え…何の花…?」と一瞬疑うくらいおおざっぱ。花のつくりも茎も太く、これは水に当たってふやけたんじゃないですよ。花の中心には謎の芯があるし。葉っぱでようやく鈴蘭なのねと自分を納得させました。それにしたってこの花はないよ、と言いたくなるぐらいおおざっぱ。「鈴」とちがうやん。明らかに科が違うやん…。
けれど眺めているうちにかわいくなってきてしまうのがカネコ脳。これはこれでいいのだと、むしろ昔のインゲの大胆不敵な野放図さ、大づかみな感じにはふさわしい、と思えるようになりました。というか私に鈴蘭つけるならこれぐらいのおおざっぱなつくりじゃないと到底ダメだな。葉っぱがかなり大きく、白小花でも甘さはないので実は結構使えそうです。とりあえずアーミー系狙ってカーキのフィッシャーマンズベストにでもつけたれ、と夏のコーディを練る。