あらすじ
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真夏の珊瑚礁から一転して、極寒のシベリアに飛んだ椎名誠。彼を待ち受けていたのは、なんと便座の全くない便器だった! ソ連邦トイレ事情にはじまり、地球上の食物連鎖にまで話がおよぶ表題作のほか、少年期を過ごした幕張の川でのカヌー体験「はじめての川下り」。免許取得までの汗と涙と憤怒の記録「自動車たいへん記」など、全7編を収録。素朴な疑問と正しい怒りの過激実感文集。
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椎名誠の本は相変わらず面白い。どうも、彼のエッセイを読むと文体までが彼の作品の中のものに似てしまうと言うのがあるんだけど、そこは意識して合わせないようにしてみようかな?
この雑文集に収められているのは、下記の7編。彼のエッセイ集には良くある話だが、それぞれの話は何の脈絡もない。どれから読んでも良いし、ある作品を読まなくても一向に構わない。一応、簡単に感想などを。
「ロシアにおけるニタリノフの便座について」
ロシアに行く、というので、その同行者にロシア風の名前を付けてしまう、というのが可笑しい。その中で、やっぱり「ニタリノフ」は最高の命名だろう。便座がなくてどうやって致すのか、謎だ。ロシアのトイレはめちゃくちゃ汚いそうなので、できれば遭遇したくない。
「万年筆いのち」
物書きとしては、やっぱり万年筆にはこだわりたいものらしい。万年筆と言えばパイロットくらいしか使ったことのない自分としては、モンブランなんてもったいなくって使えない。惚れていた女性からもらった万年筆を語る辺りは、椎名誠の照れくささも感じてなかなかよろしい。
「はじめての川下り」
今でこそ椎名誠も野田知佑と一緒に川下りしている写真とか紀行文を読むこともあるけど、最初ってやっぱり緊張するモンだなあ、と感じた次第。野田知佑の人柄もキチンと書かれていて、カヌーデビューの話としてはなかなか興味深い。
「自動車たいへん記」
笑った。椎名誠って免許持ってなかったんだ。40過ぎてからの教習所通い。そりゃあ、教官には腹も立つというもの。わかるよ、わかる。
「ストロングな波」
八丈島の大波の話。ドドーンと波止場にうち寄せる波を見るのが好きな椎名誠氏。もちろん、自分も好きだ。ただそれだけの話。
「梅雨のかたまりをとびこえる話」
梅雨が来ている時期に、その真っ最中の場所から一気に梅雨明けした沖縄へ行った、という、これもただそれだけの話。
「まつりはいいなあ」
比較的長めの作品。日本全国の祭りを探し歩いて、その時期にやっている祭りを見に行こうというもの。合計7つの祭りが紹介されている。一番読み応えがあって楽しい作品。つまらなさそうな祭りも、椎名誠が書くとなんか楽しそうに感じてしまうのは、やっぱり彼の文体に寄るところが大きい。どれも楽しそうに見えてしまう。祭りはいいなあ。
どれも他愛のない話だ。だけど、椎名誠が書くと、面白いのだ。笑っちゃうのだ。やっぱり椎名誠は文句なしに面白いのだ! ハッ、いかん、いかん。似非椎名誠文体だ。 |