あらすじ
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不思議な力を持つ短剣で他の世界への窓を切り開き、羅針盤を頼りに旅を続けるライラとウィル。ライラの友達と話をするために、ふたりの旅は<死者の国>にまで及ぶ。ライラの担った役割とは一体? そして地上に楽園を求め、共和国建設を目指すアスリエル卿と<教会の権力>との、世界を二分する闘いが、今、はじまる!
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今回は読書環境が悪すぎた。ちょうど引っ越しが重なり、土日はほとんど読めず、平日もいつもより読書時間が削られたため、途切れ途切れの読書となり、結果、ストーリー展開にうまく溶けこめず、また、謎の解明も取りたてて感ずることもできなかった。
そんな環境での読書だったため、本当ならすごく引きこまれて読むだろうと思うところもあまり引きこまれることもなく、淡々と読み終えたのだった。それがすごく残念。
それにしても、この第三巻は長い話である(そのせいで読み終えるのに時間が掛かったのもあるが)。でも、この長さが特に苦痛と感じなかったのは、やはりストーリー展開が飽きさせないものだったからではないかと思う。それと、登場人物がみんな個性的で素晴らしい。
最終巻ということもあって、今までのキャラクター総出演、という感じだが、お気に入りのクマのイオレク・バーニソンや気球乗りのリー・スコーズビーなども登場し、ライラとウィルの冒険に手を貸してくれる。
その他、魔女のセラフィナ・ペカーラや、学者のメアリー・マローンなど。また、新しいキャラクターも登場し、そちらも楽しめる。しかし、やはり何と言っても一番素晴らしいキャラクターというか、この物語の世界での衆目は、ダイモン(守護精霊)という存在だろう。このダイモンがいることが、この物語世界そのものといっても過言ではないと思う。
今回は、「琥珀の望遠鏡」が重要な役割を果たすわけだが、何と言ってもライラとウィルの冒険行がメインのストーリーであり、この二人がどうなるかというところが重要なところだ。
また、ライラの両親であるアスリエル卿とコールター夫人の暗躍も気になるところ。特にコールター夫人は本心の掴めない特異なキャラクターで、彼女は善なのか悪なのか悩むところだ。
ラスト近く、謎が明かされ、この危機を救うためにはある決断を迫られるライラとウィルには心を動かされるところがあった。何とも皮肉で残酷で、そして美しい決断ではないだろうか。
この物語は、大人のための児童冒険ファンタジーではないかと思う。今や大ブームの「ハリポタ」シリーズが、大人も子供も楽しめる(大人は童心に帰って、という注釈がつくが)のに対し、こちらの「ライラの冒険」シリーズは大人が大人の感性のまま楽しめる児童文学だと思う。そう言う意味では万人には受けない作品かも知れないが、確実にファンは存在し、そのストーリーの壮大さと面白さ、そしてこの物語世界に魅了されるだろう。
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