あらすじ
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世界の終わりは、一台の車がガソリンスタンドによろよろとさ迷いこんできたことから始まった。ある軍事施設で事故が発生、超悪性のインフルエンザ、スーパーフルーが漏出してしまったのだ。厳重な警備をかいくぐり脱出してきた一兵士の一家の乗ったこの車から、スーパーフルーは瞬く間に全米に広まった。ほとんどの人は死に絶えた。しかし、なぜか免疫を持って生き残った者たちもいた。生者を求めて旅をつづけるそんな人々がうなされる毎夜の夢、それはネブラスカのトウモロコシ畑でギターを弾く黒人の老女の夢だった。夢の不思議な力に導かれ、老女のもとを目指す人々に忍び寄る黒い影。実は闇の男もこの絶好の機会に世界を征服せんと、心に病みを持つ者どもを集めていたのであった。
ついに正体を現した「光」と「闇」、「善」と「悪」の戦いの行方は・・・?
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長大な物語だが、不思議と読み終わった瞬間はそれを感じなかった。もっと読みたい、もっと読み続けたい、という欲求が残った。
物語は3部構成。第一部は、生き残った人々が夢に導かれ、マザー・アバゲイルの元へ、或いはランドル・フラッグの元へ。第二部は、それぞれの場所に集まった人々が集結し、次第に結束を深めていく。そして、第三部は戦い、そして帰還。そしてエピローグへ…。
第一部はお馴染みキングの、登場人物のエピソードを交えた、言ってみればキャラクター紹介。ここで数え切れない人物が登場するが、意外と戸惑うことは少なかった。『IT』では導入部のあちこち話が飛ぶ展開に戸惑ったものだが、『ザ・スタンド』ではそれほどでもない。スチュー、ニック、ラリー等のバックグラウンド、旅の行程が物語に深みを増す。
第二部は、それぞれ集った人達が友情・愛情・憎しみ・嫉妬など、世界が破滅する前と同じ事を繰り返していることが何となく滑稽だ。人々は戸惑いながらも共同生活を始めるが、次第に綻びが生じ始める。それは、「闇の男」ランドル・フラッグの陥穽によるものだ。善の方に位置する、マザー・アバゲイルとその同志たち。一方、悪のランドル・フラッグ。どちらも統率がとれているが、力はランドル・フラッグの方が強大だ。
そして、第三部。いよいよ善と悪の戦いが始まる。ロングクライマックスといっていい。これも、第一部、第二部があったればこそ。そうつくづく感じる。4人の男が西へ向かう。目指す先は西へ、ラスヴェガスへ。果たして4人の運命は?
ランドル・フラッグを倒すことはできるのか?
一大叙事詩と言っていい。第一部から第三部まで、見事に繋がっている。だから、第三部のロングクライマックスが生きている。個人的には、或る人物の死が痛い。それもあっけない死。それがかなりの数に及ぶ。これは辛い。
不覚にも涙ぐんでしまった箇所が2箇所。いずれも知的障害のあるトム・カレンに絡んだ場面。一つはトムを送り出すシーン。もう一つは、トムがある事実を認めるシーン。涙無くては読めない。
第三部後半の、生き残った人達が一路東へ、ボールダーを目指すストーリーが感動的。
アメリカ人はこの『ザ・スタンド』をキングの最高傑作として認めている人が多いという。個人的には、『IT』の方が好きだが、この物語もこれから先長年心に残る物語として記憶するだろう。
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