紀元28世紀。辺境の惑星ハイペリオンで不吉な前兆が確認された。謎の遺跡「時間の墓標」によって封印されている時を超越した怪物シュライクが、封印を解かれそうになっているというのだ。この封印が解かれると宇宙の存亡にも影響するらしい。おりしも宇宙の蛮族アウスターも、ハイペリオンに向かっていた。この「時間の墓標」の謎を探るため、連邦は7人の巡礼を選び出し、ハイペリオンに向かわせた。互いに面識もなく何故自分が巡礼に選ばれたのかも判らない7人。かくして7人はお互いの接点を見つけるべくハイペリオンに関わる自分の過去を語り始めるのだった...。
第一話:司祭の物語
ハイペリオンに住むというビクラ族の謎。彼ら七十人はなぜ「六十人と十人」なのか? 大峡谷の下にある聖堂の意味は? さらにその下には何があるのか? ホイト神父は「聖十字架の者」になってしまったのか?
シュライク登場。
第二話:兵士の物語
アウスターとの戦いがメイン。主に白兵戦。ここでもシュライク登場。圧倒的強さ。また、「時間の墓標」も多くの謎を残しつつ登場。シュライクは時間を溯るのか?
カッサード大佐の見た「餌」とは誰なのか?
第三話:詩人の物語
サイリーナスはある詩集を出版し、これが売れに売れ、巨万の富をなす。しかしその後まったく売れず、富も名声もなくす。そこにハイペリオンの国王が現れサイリーナスを助ける。サイリーナスの詩がシュライクを誕生させたのか?
「ハイペリオンの歌」は完成したのか? ハイペリオンとの関わりがいまいち解らない。それとも「ハイペリオンの歌」が重要なキーなのか?
第四話:学者の物語
ワイントラウブは巡礼に加わっている現在、70代の老人である。そして1歳くらいの赤ん坊を連れていた。どうやら自分の娘のようだが、それにしてはずいぶん歳が離れている。話が始まってすぐある矛盾に気づく。これは時間を溯るといわれるシュライクに関係があるのか?
そして、娘のレイチェルにある事件が起こる。
何と言う悲劇だ。もし自分の身にこのような残酷な運命が降りかかったら、果たして自分は耐えられるだろうか? 日ごとに記憶を失っていくレイチェル、毎日繰り返される「レイター、アリゲーター」「ホワイル、クロコダイル」の哀しい挨拶、レイチェルの最後の、そして最初の笑い。涙なくては読めない。レイチェルはどうなる?
次は、本来なら森霊修道士のマスティーンが語る番だったが、部屋におびただしい血の跡を残し行方不明となる。マスティーンはどうした? カッサード大佐の見た「もの」なのか?
一人物語を飛ばした意味は?
第五話:探偵の物語
レイミアの元にジョニィという男が調査依頼に来た。自分を殺した犯人を捜して欲しいというのだ。どうやらジョニィは19世紀の詩人、ジョン・キーツのクローンのようなものらしい。このジョン・キーツがハイペリオンと深い関係がある。レイミアとジョニィはハイペリオンに行こうとするが...。途中難解。どうやら銀河系には3つの派閥があるらしい。いきなり核心に触れる部分にきた。
"シュライクの出没、来るべき恒星間戦争(アウスター絡み?)、「時間の墓標」の開放とともに表われ出るさまざまな事象(シュライクの災い)は、一万年後の銀河系を支配する急進派が過去に遡及して仕掛けてきた第一弾の攻撃なのか?
あるいは、その急進派の人類抹殺計画を辛くも生き延びた人類(アウスター、元開拓星の人間、その他のごく小規模な人間グループ)が、最後の死力を振り絞り、時を溯って送り込んできた、せめてもの抵抗によるものなのか?
"
誰にも体験できない、形容しがたいラブ・ストーリー。文字どおり、レイミアとジョニィは一つになった。
第六話:領事の物語
転移システム(いわゆる"どこでもドア")のない時代。若き宇宙船乗りと未開拓地に住む娘の恋物語。宇宙船乗りは高速を越える船に乗り、宇宙を転戦。宇宙船内の数ヶ月が、地上では数年に値する。結果、男が数カ月ぶりに恋人の星に降り立つと、娘は数十年の年を取り恋人を迎える。この悲恋。しかし、二人は最後まで真に愛し続ける。その孫である領事はある目的を持っていた。その目的とは?
カバーに書かれてあるあらすじを読んでもよく理解できない。読む前はそんな印象だ。スケールが大きすぎて手がかりが掴めないのだ。また、聞きなれない名詞にも苦労させられた。「時間の墓標」?
シュライク? アウスター? 何それ? といった感じである。読み始めて一つ解ったことがある。なるほどこれは一巻では終わりそうもない物語だ。第一話の司祭が渓谷を降りていくあたりから少しずつ入り込めてきた。七人は過去にハイペリオンに関わった自分の物語を話しながら、「時間の墓標」を目指して巡礼を続ける。一人一人が自分の過去を語っていくことによって、「時間の墓標」とはどのような遺跡なのか、シュライクという怪物はどのようなものか、アウスターという蛮族の正体はなにか、また、それそれの巡礼がその謎にどのように関わっているのか、などが徐々に明らかになっていく。しかし、それでも多くの謎を残し、この「ハイペリオン」は幕を閉じた。
これほど壮大なSF叙事詩は今まで見たことも読んだこともない。できれば今すぐ読み返して謎を一つ一つ確かめたいところだ。いや、それよりも、次作「ハイペリオンの没落」を早く読みたい。
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