上岡覺の土地公有論・土地國有論

 

1 中村太八郎

 

 中村太八郎は、「普選・土地國有論の父」として、わが國近代史の書物にその名を見出すことができる。しかし、中村について書かれた書籍は、「普選・土地國有論の父 中村太八郎傳」(平野義太郎編・日光書院・昭和十三年十一月)くらゐしか見つからない。私が所有してゐるものは、その復刻版(中村太八郎先生事蹟顕彰会・昭和四十七年七月)で、中村太八郎先生事蹟顕彰会の理事をされてゐる太田義一氏より、譲つて頂いたものである。

中村は、明治元年二月二十日、長野縣東筑摩郡山形村大池に生れてゐる。普選・土地國有の運動がよく知られてゐるが、明治二十三年、地價修正反對運動をはじめ、數々政治運動に手を染めてゐたやうである。異色のものでは、世界大戰時、歐州遠征義勇軍の構想などもある。やはり、壓巻は大正八年三月一日の普選要求示威行列、わが國最初のデモ行進である。警視廳との粘り強い交渉で、主催者の計畫通りに實行することを認めさせた。

NPO、市民運動家の元祖のやうでもある。

(2000.3.26)

ホームへ 土地公有論・土地國有論バックナンバーへ