「鉄塔 武蔵野線」
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 「鉄塔 武蔵野線」銀林みのる著 (新潮社 ハードカバー・文庫とも)

 私がこの本を読んだときの某所への書き込みを引っ張り出しますと・・・、

  この本を最初のほうを読んだだけで、背中がしびれるような感じ をおぼえました。
 「これは、あのころの私だ」
 多数の「元」男の子は、きっと同じ感想を持つのではないだろう か。まして、「今も」男の子ならば、ページをめくるのがうれしく てたまらなくなるはずです。
 主人公は、送電線の鉄塔を愛する小学5年生。引越しのために転 校する2学期前の夏休みに、近所の鉄塔の行く先を追っていく。そ の鉄塔群は「武蔵野線」、近所の鉄塔の番号は「75−1」。はた して、無事「1」号鉄塔を発見することはできるのか。
 そして最終章。私はうれしくて、うれしくて、もう一度小学生の ときに戻りたくなりました。そして、主人公を理解し、ともに喜ぶ 大人(読めばわかる)になりたいと思いました。
 なにしろ、熱かったあのころの自分を見ているようです。

 多少、紹介調であるのはおいておいて、今までに経験したことのない読後感を味わったのは確かです。
 子供の冒険・探検の欲求は、大人の目で見ると、つまらなく、くだらないものにうつるのかもしれません。でも、思い出してみましょう。鉄塔ではなくても、小さな森や、川岸、見知らぬ街・・・など、なにかを極めようとしていたことがあるはずです。

 私はこの本を読んで、今まで目には入ってきていたのに認識していなかった鉄塔の存在に気がつきました。そして、試しに探してみた鉄塔は、予想をはるかに越える形状と存在感を示してくれたのです。

 さて、2冊並んだ「鉄塔 武蔵野線」ですが、最終章がハードカバーと文庫で異なります。
 ・こってりとした味で満腹感を味わいたい人はハードカバー
 ・あっさりとした味で余韻を感じたい人は文庫
 あなたはどちらがお好みでしょう?

 もし、あなたが「子供のころの熱い記憶」をお持ちならば、読んで損はありません。
 (何しろ、文庫党の私がハードカバーを購入した数少ない本の一つなのです(笑))

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