我楽多本舗>書棚>「活字倶楽部」'01冬号
「活字倶楽部」'01冬号
「活字倶楽部」'01冬号(雑草社)に掲載された記事です。
趣味の本棚(テーマ「色」)
| 【著者】 |
荻原規子 |
【出版社】 |
徳間書店 |
【発行年月日】 |
1996年7月日 |
| 【装丁】 |
|
【解説】 |
|
【定価】 |
1700円 |
神話の時代を生きぬく少女
輝(かぐ)の神を祀る村の少女・狭也は幼いときに鬼に追われてこの村へ逃げてきて、今の両親に育てられた。だがある日、旅の楽人たちに自分が闇(くら)の神に仕える姫の生まれ変わりであることを知らされ、生まれたときに手にしていたという空色の勾玉を渡される。それを信じようとせずに輝の宮へ仕えることにした狭也は、大蛇の剣を守闇の神の末子・稚羽矢と出会う。狭也は剣を目覚めさせ、稚羽矢は父の果たせなかった女神との再会を求めて旅に出た。二人は闇の氏族に身を寄せ、輝の神との戦いに巻き込まれていく。
「古事記」の物語を下敷きにして、神が地上に存在した時代に自らの宿命と向き合いながら成長していく少女の姿をいきいきと描き出したファンタジー小説。
|
▲TOP
| 【著者/訳者】 |
ノヴァーリス/青山隆夫 |
【出版社】 |
岩波文庫 |
【発行年月日】 |
1989年8月16日 |
| 【装丁】 |
|
【解説】 |
青山隆夫 |
【定価】 |
602円 |
夢にみた青い花をもとめて
ハインリヒはある夜、夢の中で青い花を見た。その花弁の中心には美しい少女の顔があった。その夢を見てからふさぎ込むようになったハインリヒのために、母親は故郷のアウクスブルクへの旅をすることにした。道中で一緒になった商人たちによって古代の詩人の奇跡が語られ、ハインリヒは自らの詩人としての資質を育んでいく。「実現」と題された第二部はノヴァーリスの死によって未完のままに終わってしまったが、至上の芸術としての詩の理想を青い花に託して豊かなイメージで描き出したその作品は、今なお高い評価を受けている。ハインリヒが詩人として目覚めていく過程を、教養小説という形式で描いたドイツ・ロマン派を代表する作品。
|
▲TOP
| 【著者】 |
新井素子 |
【出版社】 |
講談社文庫 |
【発行年月日】 |
1983年10月日 |
| 【装丁】 |
|
【解説】 |
|
【定価】 |
448円 |
緑髪の少女の秘密
少年の頃、迷い込んだ山奥の家で緑色の髪をした少女と出会った信彦。二十五歳になった彼は、喫茶店でそのときの少女そっくりの女性・明日香と出会い、恋をしてしまう。明日香もまた信彦のことを覚えていて、好意を抱いている。しかし、明日香は髪を黒く染め、世間から隠れるように暮らさなければならない秘密があった。彼女は光合成ができる人間だったのだ。明日香の秘密に気づいた信彦の大学の松崎教授たちは、そんな明日香を人間としては見ようとせず、研究対象として捕らえようとする。二人は逃避行の旅に出た。悲しい宿命を背負う明日香の耳に、死んだ母親の奏でたメロディが静かに響く。星雲賞日本短編賞を受賞した、切なくも美しい愛の物語。
|
▲TOP
| 【著者】 |
小野不由美 |
【出版社】 |
講談社X文庫ホワイトハート |
【発行年月日】 |
1997年6月5日 |
| 【装丁】 |
山口馨 |
【解説】 |
|
【定価】 |
490円 |
歪んだ日常の恐怖
母の死後、再婚した父の元にいることが耐えられずに家を出た浩志は、子どもの頃に一年ほど住んでいた町で一人暮しをすることになった。浩志は引越したアパート「ハイツ・グリーンホーム」へ続く路地に立った瞬間、とても嫌な感じがした。さらに、転居したその日から続く無言電話や廊下の奇妙ないたずら書き。最も安心できるはずの自分の部屋にしのびよる恐怖。不快な生活の中で、浩志はかつての同級生と再会し、忘れていた過去を少しずつ思い出す。子どもの頃のささやかな罪悪感がもたらす歪みがなんとも無気味である。九〇年に朝日ソノラマから刊行された「グリーンホームの亡霊たち」を改題し、加筆訂正した作品。
|
▲TOP
ブックレビュー
| 【著者】 |
荒俣宏 |
【出版社】 |
角川書店 |
【発行年月日】 |
年10月30日 |
| 【装画】 |
岡野玲子 |
【解説】 |
|
【定価】 |
1600円 |
陰陽道にも造詣の深い著者が、かつて発表した「平安鬼道絵巻」を全面的に書きなおした。陰陽道が日本へと入ってきた時代から、陰陽師最大のヒーロー安倍晴明と宿敵・蘆屋道満の戦いや丑御前と源頼光との死闘まで、長い闇の歴史を描いた連作短編集。
陰陽師といえば安倍晴明というイメージはここ最近すっかり定着した感がある。だが、晴明の活躍した平安時代は日本において陰陽道が完成された時代で、陰陽道はそれよりもはるか以前に中国から入ってきていたのである。そこにはさまざまな物語があった。本書は、晴明以前に陰陽道に魅せられた人々をも描き出している。陰陽師の、というよりも陰陽道の物語といったほうがいいかもしれない。
物語はまず厩戸皇子、つまり聖徳太子の時代からはじまる。いまだ陰陽道という名前が存在しなかった時代、厩戸皇子は中国からきた夜叉と密約を交わす。吉備真備と安倍仲麻呂は中国より陰陽道の秘書「金烏玉兎集」を持ちかえろうとする。仲麻呂は嵐の海に沈んだが、真備によって秘書は持ち帰られ、竜に守られた仲麻呂の息子は浜へ流れ着き、安倍の家を再興する。陰陽道の力に憧れた人々の奇妙な縁が壮大なスケールで語られる。
以上のような陰陽道の物語の中では、晴明も完全無欠のスーパーヒーローではなく、登場人物のひとりにすぎない。戦略家であり、妻に悩まされる一人の人間として描かれている。収録作の中では「安倍晴明、橋姫と契ること」が策士策に溺れるというような晴明の失敗譚で、一味違った味わいがある。
|
▲TOP
|
獣たちの夜 BLOOD THE LAST VAMPIRE
|
| 【著者】 |
押井守 |
【出版社】 |
富士見書房 |
【発行年月日】 |
2000年11月1日 |
| 【イラスト・装丁】 |
寺田克也 |
【解説】 |
|
【定価】 |
1800円 |
1969年、学生運動華やかなりし頃。デモに参加していた高校生の零は、機動隊が鎮圧に乗り出して混乱する町の中を逃げる途中で、血まみれの日本刀を手にした制服の少女と出会う。話題のアニメ映画「BLOOD」の企画者による、もうひとつの物語。
「攻殻機動隊」「機動警察パトレイバー」など、クオリティの高いアニメーション映画が海外でも高い評価を受けている押井守。現在は実写とCGを融合させた意欲作「Avalon」の公開を控えているが、一方で押井塾というワークショップを主宰もしている。「BLOOD」はこの中から生まれてきた作品で、アニメの方には参加していないが、ノヴェライズを担当することになった。押井は「機動警察パトレイバー2」のときも、ノヴェライズを手がけているが、本書は設定を同じにしただけで物語自体は別物になっている。
まず舞台が映画より数年後の1969年に設定され、主人公をはじめ学生運動に関わる人々の日常が極めて細かく描き出される。食べ物へのこだわりも押井の映画作品を思わせて楽しい。
しかし一転して少女とヴァンパイアの死闘になると、完全にアニメのノリになる。両者には大きな落差があるように思われるが、読んでいてそれほどの違和感が感じられないのは、学生運動の時代もヴァンパイアの登場する世界も、現在の我々からすれば同じように遠い世界だからかもしれない。押井映画の魅力のひとつである難解なセリフの応酬(特に吸血鬼を生物学的に実在する存在とみなして考察するくだりはなかなかユニークだ)が、本書でも遺憾なく発揮され、押井の魅力がぎっしり詰まった一冊になっている。
|
▲TOP
| 【著者】 |
岩井志麻子 |
【出版社】 |
角川書店 |
【発行年月日】 |
2000年11月日 |
| 【装丁】 |
|
【解説】 |
|
【定価】 |
1300円 |
タミエは菓子製造を営む宮一の妾であったが、事業に失敗した宮一が日本刀でタミエの顔に切りつけ、自らも喉を突いて死んでしまた。タミエは一命を取りとめたものの、左目を失ってしまい、その代償として霊感が働くようになった。ホラー連作短編集。
日本ホラー大賞を受賞し、山本周五郎賞にも選ばれた前作「ぼっけえ、きょうてえ」は一昨年のホラーシーンの話題をひとりじめした感があったが、一年を経て発表された本書も前作同様に明治の岡山を舞台にしている。 岡山へのこだわりはもちろんタイトルだけではない。岡山弁の会話が独特の空気を作り出し、じわじわと忍び寄ってくるような無気味さは前作以上に磨きがかかっている。
本書で描かれる文明開化の時代は、コーヒーや汽車など、日本に多くの新しいものが入ってきた。勧商場には人々が群がり、大盛況となった。しかし、一見華やかに見える場所も、主人公のタミエの目を通すと無気味な場所に見える。いくらモノが新しくなろうと、そこに集まる人間に変わりはないからだ。
タミエは妾から霊能者となったが、どちらも体をもてあそばれるという点では同じだと考えている。といって決してヤケになっているわけではない。生きることの宿命を受け入れた潔い諦念がそこにはあるようだ。そもそも、タミエのなかでは生と死が等価なのである。死ぬことも生きることも地獄であるならば、どちらへいってもたいした違いはないだろう。人間の中にある深い闇をのぞきこんでしまったような気分にさせる作品だ。
|
▲TOP
| 【著者】 |
佐々木敏 |
【出版社】 |
徳間書店 |
【発行年月日】 |
2000年10月日 |
| 【装丁】 |
|
【解説】 |
|
【定価】 |
2400円 |
スイス・ジュネーブのWHO本部で生物兵器によるテロが発生。ホワイトベレーによって犯人を全員射殺、人質を無事解放したが、その後生物兵器によって大量の犠牲者が生まれた。解読されたヒトゲノムをめぐって引き起こされる国際的な陰謀を描くサスペンス小説。
昨年、人間の遺伝情報を解読するヒトゲノムプロジェクトがほぼ終了したというニュースが世界中を駆け巡った。本格的な解明はこれからなのだが、それでもポストゲノムと呼ばれる医薬品や食品の開発への応用を目指した研究に、すでに多くの企業が次々と参入してしのぎを削っている。これらの技術は核などと同じで、悪用すれば人類を多大なる危険にさらすものだ。本書は近未来を舞台にその危険を描き出した作品である。
科学者として、時代に左右されるようなモラルにとらわれずに真実を追求する井坂は、細菌やウィルスの増殖するスピードや寿命をコントロールする技術に関する研究でめざましい成果をあげていた。一方、WHO本部のテロ鎮圧の指揮をとった黒人のキング国防長官は、白人大統領スミスの後押しで初の黒人大統領への道を歩きはじめる。二人は、それぞれ望まぬ形で世界規模の陰謀へと巻き込まれる。それは道義的には決して許せないことであるが、陰謀の主導者たちが懸念している世界の将来に関わる問題もまた深刻なものだ。 緻密な構成にぐいぐいと引き込まれて一気に読ませるが、我々が一歩間違えればすぐに破滅へと進みかねない岐路に立っていることを思うと背筋が寒くなってしまう。
|
▲TOP
| 【著者】 |
野坂昭如 |
【出版社】 |
国書刊行会 |
【発行年月日】 |
2000年9月11日 |
| 【装丁/写真】 |
下田法晴(s.f.d.)/山本和夫 |
【解題】 |
大月隆寛 |
【定価】 |
3000円 |
三島由紀夫や吉行淳之介に絶賛されたデビュー作の雑誌初出「エロ事師たち」をはじめとする初期の傑作短編を全3巻にまとめたシリーズの第一巻。独特の文体でエロティシズムとグロテスクのないまぜになった世界を軽妙に描き出した作品は読むものを圧倒する。
野坂昭如というと、今ではTVに出てくる変なおじさんというイメージしかないかもしれない。あるいはアニメ映画になった「火垂るの墓」の原作者として有名だろうか。
しかし、作家・野坂昭如としての真価は本書に収録されているような、生(性)と死にかかわる人間の営みを白日の元にさらけ出した作品群にあるといっていいだろう。
焼跡闇市派を自称する野坂は、戦中・戦後の混乱の時代を生き抜き、さまざまな職を転々としながら、やがてルポライターとして風俗や極道の世界を垣間見るようになった。貧しい生活や残酷な宿命の中で、それでもしたたかに生きていく人々。野坂は自ら見聞したもののすべてを、戯作調の文体に乗せて呪文、あるいはお経のように描き出していく。情念が渦巻くその文章に、読み始めたとたんに飲み込まれてしまいそうになる。
野坂の人生観というものは決して観念的なものではなく、具体的な体験の中から生まれてきた。だからこそ、奥に分け入ると重く深い闇が存在している。
愛情をひとりじめするために妹を殺す「子供は神の子」や母親が不安から娘を手にかける「死児を育てる」などは、むしろ現代にこそ読まれてしかるべき作品である。
|
▲TOP
| 【著者】 |
荒俣宏 |
【出版社】 |
平凡社新書 |
【発行年月日】 |
2000年10月18日 |
| 【装丁】 |
菊地信義 |
【解説】 |
|
【定価】 |
680円 |
現在ではあまり読まれることのなくなってしまったプロレタリア文学だが、その思想的な部分を除けば今の目から見てもおもしろいところがたくさんある。プロレタリア文学作品を読み返した著者が、新たな視点からその隠されたおもしろさを語るガイドブック。
一般にはあまり注目されていないものに目を向け、新たな視点からその面白さを紹介するのを得意とする荒俣が今回手を伸ばしたのは、なんとプロレタリア文学である。
プロレタリア文学とは一九二〇年代から三〇年代のなかばにかけて、労働者たちの悲惨な生活を描いた文学ジャンルである。特高に逮捕、虐殺された小林多喜二の「蟹工船」などは国語の授業で聞いた人も多いかもしれない。しかし、実際に読んだ人となるとほとんどいないと思う。かくいう筆者も読んだことはない。やはりその悲惨さというか、重苦しさのような印象が、プロレタリア文学を手にするのを遠ざけているのではないだろうか。
本書で紹介されている作品は、労働者の劣悪な環境を糾弾するために描かれたホラー顔負けの残虐なものであったり、機械が労働者を挫折させる未来世界を描いたSFである。プロレタリア文学は極上のエンターテイメントとして我々の前によみがえった。
もちろん労働者階級の文学ということを忘れてはいけないが、それ以上に小説としておもしろいのであれば読んでみたい。先入観にとらわれていては、おもしろいものは見えてこない。なんでも貪欲に取り込んでゆく著者には毎度のことながら頭の下がる思いである。
|
▲TOP
|
カップラーメンからキャバレーまで この人からはじまる
|
| 【著者】 |
鹿島茂 |
【出版社】 |
小学館文庫 |
【発行年月日】 |
2000年12月1日 |
| 【装丁】 |
奥村靫正 |
【解説】 |
猪瀬直樹 |
【定価】 |
638円 |
カップラーメンや予備校など、戦後の日本を象徴するモノや文化は、いつ、誰が、どのようにして考え出したのか。昭和30年代に少年時代を過ごし、戦後文化の発展とともに成長してきた著者が、時代の裏側で日本を支えてきた人々の隠されたエピソードを描く。
モノが生まれた時のエピソードを記した本はヨハン・ベックマン『西洋事物起源』(岩波文庫)や石井研堂『明治事物起源』(ちくま学芸文庫)、紀田順一郎の『20世紀モノ語り』(創元ライブラリ)など少なくない。
本書もそうしたものの一冊のように見えるかもしれないが、ちょっと違う。タイトルにあるようにモノではなく人に注目しているのだ。といって、有名な発明家の話というわけではなく、その時代の文化やスタイルを作り出した人たちのエピソードを紹介している。 例えば外食産業。「食堂」という言葉はなんとなく古臭いイメージがあるかもしれないが、実際に使われはじめたのは昭和のはじめである。この言葉を使った加藤清二郎は、早くて安くて美味しい食事を多くの人々に提供したいという思いをそこに込めている。そしてここから、日本の外食文化ははじまった。 ほかにも若者文化をリードした『平凡パンチ』や、受験のイメージを一新した代々木ゼミナールなどの創設者のエピソードが語られる。彼らは発明家のように名前が残ることはないかもしれないが、彼らの作り出した文化やスタイルは、形を変えながら現在まで受け継がれている。そして、そんな彼らに注がれる著者の眼差しはとても暖かい。
|
▲TOP
| 【著者】 |
小松左京・高千穂遙・鹿野司 |
【出版社】 |
徳間書店 |
【発行年月日】 |
2000年11月日 |
| 【装丁】 |
|
【解説】 |
|
【定価】 |
1600円 |
SF作家の高千穂遙がサイエンスライターの鹿野司とともに、日本SF界の重鎮・小松左京から話をきく。話題は生命、進化、知性と文明、人工生命、死と多岐にわたって、大きな視野でものごとをとらえる小松の鋭く大胆な意見がスリリングに展開される。
「教養」とはなにか。一般的には「知識」とそう変わらないイメージでとらえられているのではないだろうか。だが、教養とはそういうものではない、と本書のまえがきで高千穂は述べている。教養とは知識を駆使して新しいものの見方を提示できるものなのだと。 本書の中では、まさにその言葉通りに次々と新しい見解が示されていく。現在、地球規模の温暖化が問題となっているが、今の大気は炭酸ガスが増えており、植物にとってはよりよい環境に近づきつつある。また、環境ホルモンによって精子の数が減少し、やがて人類が滅びてしまうというが、そもそも環境ホルモンと精子の減少に関係があるという根拠がはっきりしていないし、万一そうだったとしても、人工授精やクローンなど、人類はそれを乗り越えるだけの知恵を身につけているから大丈夫という。小松の大胆な意見に鹿野が科学的データを補強し、高千穂が素朴な疑問をぶつけていく。三人の役割がうまく分担され、読者をスムーズな理解に導く。
他人の意見をを疑いもせずに信じてしまうのではなく、自分の頭で考えることこそが真の教養のあり方なのだ。本書の中で小松が次々と繰り出す「教養」は、思考することの大切さと面白さを教えてくれる。
|
▲TOP
| 【著者】 |
いしかわじゅん |
【出版社】 |
角川書店 |
【発行年月日】 |
2000年9月日 |
| 【装丁】 |
|
【解説】 |
|
【定価】 |
1600円 |
吹雪の中スキーバスに置き去りにされた著者は、エッセイまんがの中でバス会社に対して「バカヤロー」と描いたところ、逆にバス会社から訴えられてしまった。はじめて体験する裁判の中で、次から次へと起こる非常識な事態に立ち向かった日々の記録。
いしかわじゅんはまんが家として高い評価を得ているが、最近はまんが評論でもめざましい活躍をしている。その歯に衣着せぬ文章は、読んでいて実に小気味よいものだが、一方でそれを快く思わない人もいるらしい。今回のことはその率直さが災いを招いてしまったと言えるかもしれない。もちろんいしかわに非はまったくないのだが、まんがのなかで実名をあげて怒ったことで、相手の会社に訴えられてしまったのである。
裁判のことなどなにもわからないいしかわは、とりあえず知り合いに紹介してもらった弁護士に高額の着手金を支払う。あとでわかるのだが、それはぼったくりであった。さらに、当事者のいしかわを無視するように形式的に裁判が進んでしまうし、弁護士の作る書類には日本語として成立していない理解不能の文章が並ぶ。本書にはそれらの文章が数多く引用されているが、いしかわの文章が単純明解でテンポもよいだけに、そのひどさが浮き彫りになっている。これが裁判というものなのかと驚き呆れるいしかわにとどめを刺したのが、相手側が偽の証人をだしたことである。絶対に許せないと怒るが、結末は思わぬ方向へ転がっていく。日本ならではの問題をいろいろと考えさせられる一冊だ。
|
▲TOP
| 【著者】 |
井村君江 |
【出版社】 |
ちくま文庫 |
【発行年月日】 |
2000年10月10日 |
| 【装丁/装画】 |
神田昇和/A・J・マレー、J・D・ベイトン |
【解説】 |
水木しげる |
【定価】 |
720円 |
長年にわたって妖精を研究してきた著者による妖精世界へのガイドブック。70種類におよぶ妖精たちの暮らしぶりを、伝説や民話、あるいは文学や演劇とともに、ときには日本の妖怪と比較しながら紹介する。多数収録された妖精の絵もため息が出るほど美しい。
1917年7月、イギリスのコティングリーという村に住む二人の少女が妖精の写真を撮影した。シャーロック・ホームズの生みの親であるコナン・ドイルは、雑誌でこの写真を本物であると断言し、学者や研究者を巻き込んだ大論争が展開された。いわゆる「コティングリーの妖精事件」である。「フェアリー・テイル」というタイトルで映画化されたのでご存知の方もいるだろう。現実には、1982年に撮影した女性の一人が妖精の絵を切りぬいて撮影したことを告白しているが、イギリスやアイルランドではいまだに妖精を信じている人たちがたくさんいるという。なんともほほえましい話ではないか。
そんな人たちの住まう国であるから、妖精の登場する民話や伝説には事欠かない。夜中、やり残した仕事や農作物の借り入れを手伝ってくれるブラウニー、病気を治してくれるホッブ・スラスト、糸を紡いでくれるハベトロット。もちろん、いい妖精ばかりではない。人間と妖精の赤ん坊を取り換えてしまうものもいれば、家の中で悪さをするボガートや水の中に人間を引き込んで食べてしまうアッハ・イシュキ、人間の死を預言して泣く無気味なバンシーという妖精もいる。本書でその豊饒な世界にぜひ触れてみてほしい。
|
▲TOP
|
奇想天外・英文学講義 シェイクスピアから「ホームズ」へ
|
| 【著者】 |
高山宏 |
【出版社】 |
講談社選書メチエ |
【発行年月日】 |
2000年10月10日 |
| 【装丁/CG製作】 |
山岸義明/山岸義明デザイン室 |
【解説】 |
|
【定価】 |
1600円 |
|
ニュートンの「光学」が明らかにした色と光のメカニズムは、ロマン派の詩人たちを新しい想像力へと駆りたてた。「ロビンソン・クルーソー」とマルクス「資本論」には密接な関係があった。一見文学とは関係のないものが、実は文学と深い関わりをもっていたことを次々と明らかにしてゆく異色の文学談義。
|
▲TOP
| 【著者/訳者】 |
ロバート・シルヴァーバーグ編/風間賢二ほか訳 |
【出版社】 |
ハヤカワ文庫FT |
【発行年月日】 |
2000年10月15日 |
| 【装丁/カバーイラスト】 |
ハヤカワデザイン/Michael Whelan |
【解説】 |
風間賢二 |
【定価】 |
740円 |
アメリカで高い人気を誇るファンタジー小説のシリーズの外伝を書き下ろしで集めたなんとも贅沢な全3巻のアンソロジー。第1巻の本書ではキング、シルヴァーバーグ、カード、フィーストと日本でもおなじみの4人の作品を収録し、ファンならずとも注目の一冊だ。
なんとも豪華なアンソロジーが登場した。スティーヴン・キング<暗黒の塔>、ロバート・シルヴァーバーグ<マジプール>、オーソン・スコット・カード<アルヴィン・メイカー>、レイモンド・E・フィースト<リフトウォー・サーガ>。いずれも人気のシリーズ作品である。日本でもファンの多いこれらのシリーズの外伝が読めるのが本書である。 ファンにとってはこの上もなく嬉しい企画であるが、本編を読んでいない人にはいきなり外伝というとストーリーもわからず楽しめないのではないかという心配があるかもしれない。しかし、たとえばキングの作品は本編の前日譚であるし、ほかの作品も本編とは独立した内容になっており、シリーズについての知識がなくても十分楽しめる。なにか面白いファンタジー小説はないかと探している人は、手始めに本書を読んでみると気に入ったものが見つかるかもしれない。
本書に続く2、3巻ではアン・マキャフリイ<パーンの竜騎士>やアーシュラ・K・ル・グィンの<ゲド戦記>ロバート・ジョーダンの<時の車輪>が収録されている。これを読めばアメリカのファンタジーの現状がわかる…といえば大げさだが、その一端がうかがえることは間違いない。
|
▲TOP
我楽多本舗>書棚>「活字倶楽部」'01冬号