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「活字倶楽部」'00秋号
「活字倶楽部」'00秋号(雑草社)に掲載された記事です。
特集・召しませ! おいしい小説
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美食倶楽部(『潤一郎ラビリンス7 怪奇幻想倶楽部』に収録)
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| 【著者】 |
谷崎潤一郎 |
【出版社】 |
中公文庫 |
【発行年月日】 |
1998年11月18日 |
| 【装丁】 |
和田誠 |
【解説】 |
千葉俊二 |
【定価】 |
838円 |
究極の美食
料理は芸術の一種であるとまで考える美食倶楽部の会員たちは、おいしいすっぽんを食べるために夜行列車で京都まで出かけていくほど食べることに貪欲な人間たちである。彼らはやがて普通の料理では満足できなくなってしまった。そこで考え出された究極の美食。それはぜひ読んで確かめていただきたいが、彼らに比べて美食レベルの低い我々がそれをおいしそうに思えるかどうかは約束できない。ちなみに、私は遠慮します(笑)。
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| 【著者】 |
岡本かの子 |
【出版社】 |
筑摩書房 |
【発行年月日】 |
1992年2月20日 |
| 【装丁】 |
安野光雅 |
【解説】 |
工藤美代子 |
【定価】 |
971円 |
鮨
鮨屋の常連である初老の男が店の看板娘に過去を語る。男は幼少の頃極端な潔癖で、他人の手のふれた料理が汚らわしく感じられて食べられなかった。困りかねた母親は子どもの目の前で鮨を握ってやり、ようやく食べられるようになった。鮨それ自体ももちろんおいしそうなのだが、それ以上に母親が作るちょっと形の悪い鮨というところが魅力的である。親の愛情が子どもにとっては一番のごちそうなのだと改めて思わせてくれる。
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| 【著者】 |
南條竹則 |
【出版社】 |
集英社文庫 |
【発行年月日】 |
1998年2月25日 |
| 【装丁/装画】 |
岡邦彦/村上豊 |
【解説】 |
青木保 |
【定価】 |
476円 |
満漢全席
満漢全席といえば有名だがどんな料理なのかは想像もつかないと思う。しかし中華料理が大好きな著者(作中では南蝶氏)は満漢全席を食べたいがために某小説の賞に応募し、その賞金で友人四十人を連れて中国へ行った。熊の掌などの珍しい料理からフカヒレの姿煮まで、丸一日休むことなく出される料理の数々。実話を元にしているだけあって、満漢全席の全貌がリアルに描かれ、読んでいるこちらまでげっぷが出てしまいそう。
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趣味の本棚(テーマ「森」)
| 【著者/訳者】 |
ピーター・S・ビーグル/鏡明 |
【出版社】 |
ハヤカワ文庫FT |
【発行年月日】 |
1979年10月15日 |
| 【挿画】 |
Gervasio Gallardo |
【解説】 |
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【定価】 |
505円 |
森を見守る気高き生き物
ユニコーンはたんぽぽのようなたてがみと貝殻色に光る角を持つ、馬とは似ても似つかない太古の野生美をそなえている存在である。彼女がいたライラックの森には魔法が満ち、いつも春のようであった。長い間そこに住んでいた彼女は、あるとき自分がたったひとりであることを知り、住みなれた森を離れて仲間のユニコーンたちを探す旅に出た。捕らえられたサーカス団で出会った簡単な手品しかできない魔法使いシュメンドリックと、無法者の一団の中にいた女性モリーとともに、彼女は仲間のユニコーンを追い立てていったという赤い牡牛を求めてハガード王の城へと向かう。硬質の文体で描き出されたこの美しくも悲しい物語は、アメリカが生んだモダン・ファンタジーの最高傑作とも言われている。
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桜の森の満開の下(『ちくま日本文学全集 坂口安吾』に収録)
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| 【著者】 |
坂口安吾 |
【出版社】 |
筑摩書房 |
【発行年月日】 |
1991年4月20日 |
| 【装丁】 |
安野光雅 |
【解説】 |
鶴見俊輔 |
【定価】 |
1200円 |
美しくも恐ろしい桜の森
男は桜の森がある山に住みついている山賊。ある日、殺した男の妻がたいそう美しかったので山へ連れて帰ることにした。男は女の美しさに夢中になったが、同時に女にたいして桜の森の満開の下にいるときのような不安を感じた。男は美しい着物や財宝を奪ってきては女に与えたが、山の生活に飽きてしまった女は都へ行きたいといい、男は女とともに都へ移った。そこで女はたくさんの人の首を集めさせては、ままごとのようにして遊ぶのだった。やがて二人は山へ戻るが、満開の桜の下で男は女が鬼であることを悟る。咲き乱れる桜の圧倒的なまでの美しさとそこに内在する狂気が、人間の残酷さや虚無を浮き立たせる。イメージの鮮やかさと恐ろしさに呆然とさせられる一編。
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| 【著者/訳者】 |
イタロ・カルヴィーノ/米川良夫 |
【出版社】 |
白水Uブックス |
【発行年月日】 |
1995年8月31日 |
| 【装丁】 |
田中一光 |
【解説】 |
米川良夫 |
【定価】 |
1165円 |
生涯地上に降りなかった男
イタリアのロンドー男爵の長男コジモは十二歳の時、姉が作ったカタツムリ料理を食べなかったために父親と喧嘩し、木に登って二度と降りないと宣言した。昼は木から木へと自由に移動し、夜は枝から下げた皮袋でみの虫のように眠る。木を伝って遠くの街まで行ってみたり、読書を通じて山賊と奇妙な友情が生まれたり、遠くの哲学者と文通したりする。樹上から民衆を指導し、恋人と枝の上で愛し合い、果ては戦争までも木の上から参加する。すべてを地上に降りることなくすませたコジモの波乱万丈生涯を弟が回想するという傑作小説。かつて木から降りて二足歩行を獲得した人間に対するアンチテーゼともとれる物語だが、そんなことはお構いなしにただひたすら痛快で面白い。
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| 【著者/訳者】 |
J・R・R・トールキン/瀬田貞二・田中明子 |
【出版社】 |
評論社文庫 |
【発行年月日】 |
1992年7月30日 |
| 【装画/挿画】 |
アラン・リー/寺島龍一 |
【解説】 |
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【定価】 |
各631円 |
森と生きる美しきエルフ
ホビット族のフロド・バギンズは養父のビルボから指輪を譲られたが、それはモルドールの冥王サウロンによって作られた「一つの指輪」だった。世界をサウロンの魔の手から守るため、彼は指輪をモルドールにある火口に投げ込まなければいけなくなった。ホビットの仲間サム、メリー、ピピン、人間族のボロミア、魔法使いガンダルフ、野伏のアラゴルン、ドワーフのギムリ、エルフのレゴラスとともに絶望的な旅へ出る。本書はその後のファンタジー小説に多大なる影響を与えた作品であるが、特に気品高い裂け谷の主・エルロンドや、ロスロリアンの森の木の上に城を作って住む美しいガラドリエルといったエルフ族の存在は、海外にとどまらず国内でもステレオタイプとなったほど印象的なものである。
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ISBN4-566-02362-1
ISBN4-566-02363-X
ISBN4-566-02364-8
ISBN4-566-02365-6
ISBN4-566-02366-4
ISBN4-566-02367-2
ISBN4-566-02368-0
ISBN4-566-02369-9
ISBN4-566-02370-2
【bk1書誌情報】 |
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ブックレビュー
| 【編者】 |
東雅夫 |
【出版社】 |
学研M文庫 |
【発行年月日】 |
2000年9月13日 |
| 【装丁/カバーイラスト】 |
中谷匡+福井なおと/千葉政助 |
【解説】 |
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【定価】 |
590円 |
新たに創刊された学研M文庫の第一回配本として刊行された本書は、1994年刊行の「少女」を題材にしたホラー小説のアンソロジーに4作品を追加して文庫化したものである。編者によると「これまで私が手がけたアンソロジーの中で、最も怖ろしい一冊」だという。
少女という存在はホラー小説にとって魅力的なものである。純真な存在だと思い込んでいるからだろうか、いたいけな少女がそのうちに秘めた異常性をむき出したときに、いいようのない恐怖を抱かせるようである。
本書はそうした少女が垣間見せる恐ろしさを存分に堪能できる。電波が飛びまくっている感じの大槻ケンヂ「なつみさん」、幻想としての少女の存在を巧みに描き出している生島治郎「頭の中の昏い唄」をはじめ、都会的な少年が避暑地で土俗的な怪異に遭遇する石原慎太郎の「鱶女」などは今の都知事の姿からは予想できないかもしれないが、実に魅力的な一編。前世からの因縁が悲しくも恐ろしい高橋克彦「眠らない少女」、少女の変貌ぶりがおぞましい村田基「白い少女」、教室にあつまる女学生という定番のテーマから意外なラストへ導く大原まり子「憑依教室」。
文庫化で新たに追加された四編も定番の岡本綺堂「停車場の少女」や頽廃的な世界が魅力的な松浦寿輝「宝筐」、最後の最後でぶきみな読後感を残す小池真理子「ミミ」、山尾悠子「通夜の客」と粒ぞろい。特に山尾作品は現在入手困難で古書価も高騰している「オットーと魔術師」(コバルト文庫)からの収録であり、ファンならずとも注目だ。
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| 【著者】 |
皆川博子 |
【出版社】 |
文春文庫 |
【発行年月日】 |
2000年8月10日 |
| 【装丁/装画】 |
大久保明子/岡田嘉夫 |
【解説】 |
岩井志麻子 |
【定価】 |
629円 |
阿蘭陀通詞の息子である蘭之介は狂月亭乱麿という名前で戯作を書いていた。その原稿を見た軽業師一座の頭の小ぎんは自分の夢とそっくりなことに驚き蘭之介のもとを訪ねてきた。過去の因縁に導かれて江戸、長崎、南の島を巡る蘭之介たちの数奇な運命を描く。
「笑い姫」というのは、作中で主人公の蘭之介が狂月亭乱麿の名で書いている戯作のタイトルのことである。口を切り裂かれ、笑った形に縫いつけられたという残酷な設定は父親がオランダの通詞であった関係で、蘭之介が出入りしていた天文屋敷で読んだユゴーの小説からヒントを得たものだ。まずこの趣向がおもしろい。そもそもユゴーにそんな内容の小説があったのだろうか。さらに蘭之介のもとに、夢で同じように口を縫いつけられる場面を見たという軽業一座の女座長の小ぎんがやって来る冒頭の場面で、読者はもう作者の世界に引きこまれてしまう。
不思議な縁で結ばれた蘭之介と小ぎん一座は、八丈島に流されていた蘭之介の幼なじみが恩赦で戻ってきたのを迎えに行った先で本庄茂平次というあごに傷のある男と出会う。この本庄こそ小ぎんの夢で口を縫いつけていた男であることがわかり、一座は敵討ちとばかりに本庄をつけねらう。蘭之介もまた幼なじみや、さらに登場してくる意外な歴史上の人物の思惑に巻き込まれ、舞台を転々としながらスケールの大きな物語が展開される。
復讐が話の中心となってはいるが、小ぎんをはじめとする軽業一座の明るさで読後感はさわやかである。
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| 【著者/編者】 |
樋口一葉/坪内祐三・中野翠編 |
【出版社】 |
筑摩書房 |
【発行年月日】 |
2000年9月15日 |
| 【装丁】 |
吉田篤弘・吉田浩美 |
【解説】 |
中野翠 |
【定価】 |
2400円 |
坪内祐三を全巻通しての編集に据え、そのほか各巻多彩なメンバーが編集解説を担当する新機軸の明治文学全集。本書はその第1回配本。ルビや脚注が多く、特に脚注には当時の新聞などから図版を掲載することで具体的なイメージを得られるように工夫している。
坪内祐三編集の明治文学全集。なんていい企画だろう。明治、大正の文学や文化に関して、いま一番精力的に取り組んでいる坪内のこれまでの仕事をよく知っている人であれば誰もがそう思うに違いない。 本シリーズの魅力はなんといっても脚注である。坪内が読みやすさを目指したというだけあってとにかく詳しい。しかも文章だけではなく図版がつけられているのである。当時の新聞や雑誌、風俗について書かれた本から抜き出された図版は、明治の人々の髪型やファッションなど、いくら文章で説明されても実際にどういうものかはわかりづらかったりするものが、まさに一目瞭然となっている。
樋口一葉といえば最近作家による現代語訳が話題になった。音楽におけるリミックスのようなおもしろい試みであるとは思うが、音楽でも原曲を知っているからこそリミックスを楽しむことができるわけで、多少とっつきにくくとも、やはり原文で読むのが一番であろう。そんな思いもあって本書が第一回配本となったのかもしれない。
本書では小説ももちろんおもしろいが、あえて日記をおすすめしたい。作家たちのネットワークをうかがい知ることができ、明治という時代の空気を感じられる。
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| 【著者】 |
夏目房之介 |
【出版社】 |
ちくま文庫 |
【発行年月日】 |
2000年9月6日 |
| 【装丁/カバー写真】 |
南伸坊/橘蓮二 |
【解説】 |
えのきどいちろう |
【定価】 |
700円 |
60年代から70年代はマンガが内面を描くという新しいスタイルを作り上げてきた時代でああった。その過程を思春期という多感な年頃にリアルタイムで立ちあってきた著者が、時代を象徴する作品群を自らのほろ苦い経験とともに語る異色のマンガ論。
夏目房之介はマンガ評論に新しい地平を開いた人である。夏目が好んで使うマンガ・コラムニストという肩書の通り、自信もマンガを描く人間としてペンタッチのクセや画面の構成法に関する鋭い言及は、模写という実際に肉体を動かすことで得られた実感に基づいており、非常に説得力のあるものだ。
本書もまたそうした評論の延長上に位置付けられる作品なのだが、これまでの作品論や作家論とは違って、時代という切り口で書かれている。そのため、通常の評論の文章ではなくエッセイに近いものである。
六十年代から七十年代末までのマンガを極めて私的な観点から語っている。ちょっとあけすけ過ぎるのではないかと思えるほど、読んだ時の生々しい感情、特に思春期特有の性に関する内面的なものを、日記まで引用しながら吐露している。いささか露悪的で読者にとっては重すぎるものになってしまうのではないかという危惧を抱くが、夏目の軽く、対象から距離を置いた文章で楽しく読める。
解説のえのきどいちろうは夏目と世代が近いはずだが、それでも知らない作品があるという。かなりマニアックな作品もあるようだが、それだけにこの時代に対する夏目房之介の思いの深さが伝わってくる。
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| 【著者】 |
川添裕 |
【出版社】 |
岩波新書 |
【発行年月日】 |
2000年07月19日 |
| 【装丁】 |
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【解説】 |
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【定価】 |
700円 |
江戸時代後期、大衆の娯楽として絶大な人気を誇ったという見世物。細工物、珍奇動物、軽業、生人形など、数十万人を動員し社会現象にまでなった魅力的な見世物の世界を、浮世絵や戯作などの多くの図版や当時の随筆などの史料をもとに紹介する。
見世物という言葉は最近ではあまり使われなくなってしまったが、人の目を楽しませるショーのようなものだと考えれば、我々は毎日のように見世物にふれている。映画だってテレビだってそうだ。たとえば珍しい動物を紹介する番組は本書の中に出てくるラクダや象の見世物など、当時の人たちにとってはラクダや象ははじめて見るわけだから、我々がエリマキトカゲ(古い?)に大騒ぎした感覚とさして変わらないはずであるし、軽業はサーカスを、生人形のリアルさの追求は現在のCGでアイドルを生み出している状況を思い起こさせる。本書を読んでいると、いつの世も人は珍しいものや新しいものが大好きだったのだということを再確認させられる。むろん細かいことは気にせずに様々な趣向を凝らした見世物に思いをはせるだけでも楽しい。
また、見世物と浮世絵や戯作、歌舞伎などは相互に影響しあっていた。メディアミックスなどということばができるはるか昔の江戸時代は今以上にメディアミックス的だったのである。特に歌舞伎とは縁深かったようで、当時流行の先端を行っていた芸能なのだから当たり前といえばそうかもしれないが、軽業師が実際に歌舞伎に出演していたというのは驚きである。
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| 【著者】 |
南條竹則 |
【出版社】 |
集英社新書 |
【発行年月日】 |
2000年07月22日 |
| 【装丁】 |
原研哉 |
【解説】 |
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【定価】 |
680円 |
19世紀後半から今世紀前半にかけて活躍した怪奇小説の書き手たちの生い立ちと代表的な作品を紹介するガイドブック。モダンホラーとはまた一味違った味わい深い恐怖の世界へ案内してくれる。巻末にはM・R・ジェイムズの「枠の中の顔」の翻訳を掲載。
十九世紀後半から一九二〇年代にかけて、イギリスでは怪奇小説が大流行し、A・ブラックウッド、アーサー・マッケン、M・R・ジェイムズといった作家が質の高いゴーストストーリーを提供した。まさに怪奇小説の黄金時代であった。H・P・ラヴクラフトにも多大なる影響を与えたこれらの作家は、わが国の怪奇小説ファンにも親しまれている。とはいえ、どちらかというとマニアックな存在であり、新書というメディアでこれらの作家が紹介されるというのは、時代も変わったものだといささかの感慨を禁じえない。
本書は軽い読物風のエッセイで、上記の三人のほかロード・ダンセイニやH・R・ウェイクフィールドといった作家たちの生い立ちと作品のいくつかを紹介する。翻訳者としてもこれらの作家を手がけてきた著者ならではの手ぎわのよさで、怪奇小説の魅力を伝えてくれる好著である。
本書で怪奇小説の魅力にとりつかれてしまった人は、ぜひ「怪奇小説傑作集」全五巻、「恐怖の愉しみ」上下巻や本書の著者が編集した「怪談の悦び」(創元推理文庫)あたりで実際に作品に触れていただきたい。怪談の季節は過ぎてしまったかもしれないが、英国怪奇小説は秋の夜長にも似合うはず。
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| 【編者】 |
小松和彦 |
【出版社】 |
河出書房新社 |
【発行年月日】 |
2000年07月25日 |
| 【装丁】 |
菊地信義 |
【解説】 |
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【定価】 |
3800円 |
妖怪や陰陽師に関する研究で現在最も精力的に活動している研究者の一人である小松和彦が、「怪異」というテーマのもとに全8巻の論文集を送り出した。本書はその第2回配本。民俗学にとどまらない広い分野の文章を集め、新たな研究の可能性を探る。
妖怪を学術的に研究することは、現在の妖怪ブームのわりにはあまり進んでいない。むろん妖怪という存在自体がつかみどころのないものであるということもそのひとつの要因といえるかもしれないし、一方では宮田登のように先駆的な研究を残した人も少数ながらいたのだが、それにしてもちょっとさびしい。
そんな中、「妖怪学新考」(小学館ライブラリー)という挑戦的なタイトルの著作をはじめとする数々の仕事で、このジャンルを引っ張ってきた小松が妖怪を含む「怪異」というキーワードのもとで、様々な文章を集めたシリーズを編集した。
基本文献を集めたものではなく、現在の研究の成果を中心にしているのが一番大きな特徴といえるだろう。また、本書では芝居や黄表紙本、化物屋敷といったメディアの中に現われた妖怪をとりあげたり、澁澤龍彦などの異分野の文章を収めているのもおもしろい。小松の解説も研究史と今後の展望を簡潔にまとめていてありがたいが、欲をいえば文献一覧のようなものがあった方が便利である。
ほかの巻では「憑きもの」「河童」「鬼」「天狗と山姥」「幽霊」「異人・生贄」「境界」といずれも興味深いテーマが並んでいて刊行が待ち遠しい。
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| 【著者】 |
近藤健児・田村道美・中島泉 |
【出版社】 |
青弓社 |
【発行年月日】 |
2000年09月15日 |
| 【装丁】 |
タグチケイコ(聚珍社) |
【解説】 |
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【定価】 |
1600円 |
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珍しい文庫を収集している三人が外国文学の珍しい文庫作品を紹介するガイドブック。詳細なあらすじや同じ作家の文庫リストなども載っていて、読書欲をそそられる。後半では赤本と呼ばれる児童向け文庫の歴史や戦時中の文庫の奥付の変遷などについて語り、文庫の魅力や奥深さを知ることができる一冊。
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| 【編者】 |
澁澤龍彦 |
【出版社】 |
河出文庫 |
【発行年月日】 |
2000年8月4日 |
| 【装丁/カバー写真】 |
菊地信義/森田昌宏 |
【解説】 |
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【定価】 |
750円 |
古今東西の文学に通じた博覧強記のエッセイストである澁澤龍彦が、日記に書かれた夢から小説の一節、詩にいたるまで、夢を扱った文章を様々な作品から引用して並べたまさに「標本函」といった体裁の本。美しい夢から悪夢まで夢のフルコースを楽しめる。
澁澤龍彦といえば、幻想文学や博物学、マニエリスム美術に興味のある人にとっては、まさに読書の指針となるような人であった。彼のエッセイの中で紹介される文学作品や美術作品を読者は探しては読みふけった。七十年代には彼を監修者にした世界文学全集を刊行しようという企画さえあったことからも、彼の鑑識眼が高く評価されていたということがわかるだろう。
残念ながら世界文学全集の企画は実現することはなかったが、そのかわりに澁澤は多数のアンソロジーを残してくれている。澁澤の賦才はアンソロジーにあるとまでいった人もいるくらい高い評価を受けているが、本書はその中でもファンの多い「澁澤龍彦コレクション」全三巻を文庫化した一冊である(河出は自社から出している澁澤の文庫を「澁澤龍彦コレクション」と称しているので「言葉の標本函」というタイトルに変えたようだ)。
海外のものを中心に夢について書かれた一節のみを抜き出し、一作品はわずか数ページとなっている。そんな贅沢なアンソロジーも澁澤ならではといえるだろう。ぱらぱらめくって興味のあるページを見つけたら、そこだけ拾い読みする。そんな贅沢な読み方も、本書では許されるのではないだろうか。
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