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イタリア式恋愛
【編訳者】 大久保昭男 【出版社】 角川文庫 【発行年月日】 1975年3月20日
【装丁】 表記なし 【解説】 訳者によるあとがき 【定価】 260円
表紙画像 あとがきによると「スガール出版社から出た、『イタリアの愛』(L'Amore in Italia)と、『愛の技術』(L'Arte di amare)の中から九篇を選び、一本に編んだもの」で、刊行当時現役だった作家による愛をテーマとした短篇を収めている。

全体として重く、恋愛の喜びよりは苦悩に焦点があてられている。現代において良好な関係を築くことの困難は、彼我で変りはないのだろう。
  • ピエル・ジュゼッペ・ムルジア「愛の夜」
    パーティで知り合った女性とのひと晩の出来事を、青年特有の感傷と倦怠とともに描く。熱狂し昂揚しても、セックスのあとにはまた憂鬱が訪れる。愛では満たされず、しかし彼らの世界には愛しかない、若さゆえの苦悩。
  • ダーチャ・マライーニ「ヴィアレッジョ行」
    ヴィアレッジョの画家を訪ねる主人公と夫、そして友人夫婦。夫と友人の妻は妙に親しげで、画家を訪ねたあと、夜中ホテルで主人公が目を覚ますと夫はいなかった。主人公は再び画家のもとを訪れ、身を任せる。揺れる女性の心理を巧みに描いている。
  • ゴッフレード・パリーゼ「馬乗りの女」
    結婚後、妻が突然物憂げな態度をとるようになった。原因はわからないが、ただ、夫の背に馬乗りになっているときだけ元気を取り戻す。夫は戸惑いつつも受け入れて、やがてそれが喜びへと変わっていく。夫婦関係の複雑さを戯画的に描く。
  • ドメニコ・レーア「打算の結婚」
    医師は高いステータスをもち、名士の娘と結婚するのが常識となっている地方で、医師の資格をとった主人公だったが、彼には以前から会計係の恋人がいた。両親に説得され、恋人と別れようとするが、恋人もまた医師と結婚できるまたとないチャンスを逃すまいと主人公に優しく接する。結婚にまつわる人々の思惑を風刺した作品。
  • アルベルト・モラヴィア「金星の住人」
    街で見かけた女が、車に近寄ってなにごとか話し、乗り込んで去っていった。見るからに娼婦であるが、まったく関係のない人間――たとえば金星の住人――であれば、ただなにかを待っているなにものかとしか思わないのではないか。だが、事物と一体化すれば女を理解することができる。観念へ沈んでいく男を軽く一蹴して奔放に振る舞う恋人が鮮やかな対比をなしている。
  • オレステ・デル・ブオーノ「不実な人」
    恋人に仕事だと嘘をついて出てきた彼が待ち合わせていたのは、前妻とのあいだの娘だった。娘を前にうろたえ、迷い、悔い、その言動に一喜一憂する。父親は、娘をのぞく全ての女性に不実なものなのかもしれない。
  • ウベルト・パオロ・クィンタヴァーレ「ピエルマリアの謝肉祭」
    ピエルマリアは性衝動がほとんどなかった。だが、周囲へのカモフラージュとしていろいろな女と寝ていて、たまたま自分と同じ背格好の女と出会い、自分自身とセックスしているように感じて夢中になる。女がいなくなってからは、女装が楽しみになった。優等生の彼はそれをひた隠しにし、自分の部屋だけで楽しんでいたが、我慢できなくなり、知人の誰もいないミュンヘンの謝肉祭へ赴いて女装のまま街を闊歩する。そこで彼が出会ったのは…。多分にご都合主義的な話だが、重い話が多い本書にあってはひと息つけて楽しい。
  • ウーゴ・モレッティ「カペストラーノ行の切符」
    貧しい田舎から出てきて娼婦となった女が、惚れた男と男の実家へ行けることを夢見て必死にお金をかき集める。田舎を出てきてからの回想が差し挟まれ、だまされ続けても誰かを愛してしまう女の愚かしさを淡々と語る。
  • マッシモ・ピーニ「若いサディスト」
    奴隷制度の甘美な喜びについて夢想する男。現在の自由な世界の閉塞感を逆説的に描き出す。
ISBNなし【絶版】

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