とよティーの喫茶室
 

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■憲法を「守る」って、どういうこと?

 「憲法を守ろう」とか、「憲法を守れ」という言葉を最近よく耳にしますが、文脈によって少し意味が異なりますので注意してください。

 

 私が皆さんに向かって「憲法を守ろう!」と呼びかけるとき、私は「今より悪い内容に変えられないように、憲法を防衛しよう!」という意味で言っています。決して、皆さんに「憲法のルールに従おう!」と言っているのではありません。これに対して、私が安倍首相らに向かって「憲法を守れ!」というとき、それは「憲法のルールに従え!」という意味で言っています。

 

 「守る」という言葉には、いろいろな意味がありますが、ここで区別しようとしているのは次の2つです。

  ○決めたことに従う:「約束を守る」「規則を守る」 (・・・英語の keep, observe に相当する意味)

  ○大切なものが失われたり損なわれたりしないように防ぐ:「国境を守る」「身を守る」 (・・・英語の defend, protect に相当する意味)

 この2つを取り違えないように注意してほしいのです。

 

 私が皆さんに向かって「憲法を守ろう!」と呼びかけるとき、うっかり「憲法の決まりに従おう!」と言われているのだと誤解していませんか? 確かに「憲法」はルールの一種ですので、そういう誤解が生じるのも無理はないかも知れません。でも、私がこのサイトの他の箇所で説明しているように、日本国憲法は日本国民に対して“憲法の決まりに従う義務”を明記していません。最も極端な場合、「国民は憲法の決まりに従わなくてもよい」と言うこともできるのです。

 これとは逆に、日本国憲法は、天皇・首相その他の公務員に対して、「憲法尊重擁護(そんちょうようご)の義務」を負わせています(日本国憲法第99条)。ここにいう「尊重擁護」とは、上に書いた「守る」という言葉の2つの意味を両方含んだ言葉です。言い換えれば、天皇・首相その他の公務員は、日本国憲法の決まりに従い、また同時に憲法が破壊されないように防衛する義務をも負っているのです。

 

 ですから本来ならば、私が皆さんに向かって「憲法を守ろう!」などと呼びかける必要はないのかも知れません。にもかかわらず、今あえて私が皆さんに「憲法を守ろう!」と呼びかけるのは、どうしてでしょうか? それは、安倍首相をはじめ政権政党の政治家の多くが、いま日本国憲法を守ろうとせず(=その決まりに従おうとも防衛しようともせず)、「憲法改正」とか「自主憲法制定」という美辞麗句を使って、日本国憲法を破壊し破棄し、その代わりに“アメリカに協力して戦争ができるような内容の憲法”を制定しようという姿勢を鮮明にしているからです。つまり私は、首相らによって憲法が破壊されないようにしよう、首相らが憲法の決まりに従うようにしよう、という意味で、皆さんに「憲法を守ろう!」と呼びかけているのです。

 

 私の言いたいこと、わかりますか? やっぱり「日本語って難しい」ですね。


2007/8/15 初出