山村君より 2016/9/5

テング蝶、ジュンサイ、ヒツジグサ、コウホネ、アサザとお送りした前回の便りから3か月も経ちました。 この間、何も咲かなかったわけでもなく、何も飛来しなかったわけではありません。ただ、周辺の大学やライオンズクラブとの連携打ち合わせ、市川市役所との打ち合わせ、池の存続に関する市会議員を巻きこんだ会合だの、会の在り方に関する議論とか、そう言った事に追われて、落ち着いた時間を持てないで来てしまったためでした。何処の環境保護ボランティアも老齢化と進まぬ新陳代謝に焦っているのが現状で、行政側もCOP21の協約に合わせて国から地方自治体に炭酸ガスを26%減らせと言ってきているのに形だけでも対応するのに手一杯、実は自治体の長からして、炭酸ガスのタの字も知らない中小企業の経営者上がりや助役上がりと言うのが実情です。その点では役所の役人も同列で、今年からやっと、市に環境部や環境政策課などと言った部局ができたばかり、体制づくりに追われているのが現状です。我が池の自然の存続も、官民挙げて危うい状況です。


写真1:ジュンサイ

さて、7月の分の報告です。6月から咲き始めたジュンサイは7月半ばまでに短い花の命を終えました。写真1は6月下旬のジュンサイの花の様子です。春に真っ先に咲いて春を告げるや消えてゆく Spring Ephemeral に擬えるなら、「夏のはかなきもの」とも言える水草ですが、そのムチンの感触は9月に入った今でも指先で楽しめます。あのヌルヌルは夏の涼味として古来中国でも珍重されて来て、南方出身だった西晋の張翰の故事から、美食の最高食材として有名になりました。望郷を表わすことばとしても「蓴羹鱸膾(せんこうろかい)」という四字熟語ができた謂れのものですが、ジュンサイの蓴(じゅん)と呼び方が違うのは何故だろう。昔教わった呉音とか漢音と言った違いなのだろうか。最近、京都大学の Hisayoshi, T. 等が“Inhibition of the DNA polymerase and RNase H activities of HIV-1 reverse transcriptase and HIV-1 replication by Brasenia schreberi (Junsai) and Petasites japonicus (Fuki) components”J Nat Med, 69: 432-440 (2015) などと言う論文を出しているのを見つけました。以前から癌に効くだのといった説もあって、結構最新の話題性もそなえているのです。


写真2:ハンゲショウ

6月の半ばからはいよいよハンゲショウ(写真2)の出番で、8月過ぎまで池の周辺の側溝がハンゲショウの白一色になります。間引きして、欲しい人に持って行ってもらいました。雨が降ると白が周囲の緑に映えてなかなか美しいものです。


写真3:イノカシラフラスコモ

写真3はイノカシラフラスコモです。世界でここだけの絶滅危惧第1種です。もっとも最近、風の便りにですが、本家の井の頭公園で掻いほりをして池を綺麗にしたらイノカシラフラスコモが再生したと聞こえてきました。多分、暑さで、9月には消えているかもしれません。私たちの観察では、2月に池の底に微かに顔を出して春1番を告げる水草ですが、ともかく暑さに弱く、30℃を超えるようになると、直ぐに枯れ始めて黒くなります。多分、25℃くらいまでが限界です。何しろ生態が全く分かっていません。40年以上も絶えてしまったと思われていたものが、偶然、我が池で見つかったのが20年前ですから、まっとうな研究がされていないのも当たり前です。シャジクモだのの仲間は、緑色植物が木質を備えて地上に這い出した時の祖先にあたり、植物遺伝学的には重要な位置にあるものらしい。東大の研究室がそのあたりの研究をやっているようですが、そこに持ち込めばDNAを調べてくれるかもしれません。


写真4:カワセミ幼鳥

写真4は、池の北隣にある式場病院(サバンの画家・山下清を見出した式場隆三郎の病院です。)の大きなガラス窓に飛び込んで気絶したカワセミの幼鳥です。病院に入院している女性が、救い上げて、市川市のお鴨場横の野鳥観察舎に引き取ってくれるよう頼んだのですが、野鳥観察舎そのものが老朽化のため取り壊しになるため、拒否。上野動物園もダメ。そんなわけで、すぐ隣の我々の処に持ち込んで来ました。折よく、皆で作業中だったため、ワイワイ言いながら見ている内に、気が付き、そのうちに、元気よく飛び立っていきました。因みに、ジュンサイ池は地元住民がカワセミを大切にしているため、カワセミがのんびりしていて、カメラを長時間向けてもあまり警戒しません。だから、良い写真が撮れ、会員の中にはイタリアの展覧会にカワセミの写真を出して、入賞した人もいます。オオタカも近所で営巣してます。


写真5:ご存知ザリガニ

写真5。6月、7月はザリガニの大繁殖期です。毎日、20〜50匹罠にかかり、それを大町の自然博物館の方が持って行って、子供たちのザリガニ釣り大会の材料にしています。ザリガニはジュンサイやアサザの茎を片端からチョッキンチョッキンする厄介者ですが、子供には大人気で、池をオープンする日はザリガニを釣らせたり、つかませたりと、大忙しです。若い親の中にはザリガニもつかめない人もいるのですが、流石に我が会の会員は地元市川や葛飾の生まれ。子供時代、江戸川河川敷やジュンサイ池、或いは小川で遊んだ経験者ばかりで、指導には困りません。私が小学生のころは、河川敷ゴルフ場などと言うものはなく、一面のヨシの原の中に池塘が点在していて、ザリガニや蟹、ダボハゼが釣り放題でした。ザリガニ釣りは、その辺にいるカエルの皮をひん剥いてヨシの枯れ枝で造った釣竿で釣り上げると言う、野蛮なもので今は出来ません。大木君辺りは多分鶴見川で同じことをやっていたことでしょう。吉田君は葛飾ですが、如何ですか?


写真6:オオシオカラトンボ

写真6。夏本番になるといよいよトンボの季節です。写真はオオシオカラトンボのメス。オスはシオカラトンボを全身青くして、少し太らせたような感じです。毎日、仲間が朝、ザリガニやウシガエルのオタマジャクシの数を数えるのと同時に、シオカラトンボが何匹、オオシオカラが何匹、コシアキが何匹・・・と数え上げ、帳簿につけています。80歳の方にエクセルを覚えて貰い、毎月メールで開示するようになりました。千葉県の蜻蛉学会と言ったようなローカル学会に論文を報告することになると思います。これは、民間ファンドをとる狙いです。今年はトンボ博士が体調を崩して、夏の蜻蛉観察会は無くなりましたが、池ではヤブヤンマ、マルタンヤンマ、ウチワヤンマ、オニヤンマ、ギンヤンマ、クロスジギンヤンマと東京近郊では見られなくなったものも飛来し、千葉や横浜からも見に来る人がいます。とは言え、ヤンマは動きが速く、動体視力のない老眼ではカメラも寫せません。


写真7:アブのツガイ

写真7はアブのツガイです。池の仲間には(女子大の教授だった人ですが)、昆虫を1000種類以上見分ける人が居て、何時も、素晴らしい写真を撮ってくれます。その人が、池の物置の際の木に、日本でも常在する場所が数か所しか確認されていないアブが番っている写真を撮った、スゴイ、スゴイ、昆虫学会に報告できる。それまでは、写真は伏せておいてくれと喜んでいましたが、この写真のアブはそんなものではありません。まあ、そんなわけで、農薬を使わないで保ってきた「里沼―里山」周辺は生き物の宝庫です。ただ、悲しいことに、1000もの昆虫を見分けられない眼には、ただの虫にしか見えません。


写真8:クサガメ

写真8は変哲もないクサガメですが、日本中でミシシピーアカミミガメに追いやられて次第に数が減っています。我が池でも事情は同じですが、毎日、モンドリ罠を仕掛けて、アカミミガメを捉え、江戸川に流してます。市に相談したら、殺して持って来れば焼却すると言うことで、「生き物を大切にしましょうね」などと子供に言いながら、裏でそんなことをするわけにはいきません。第一、寝覚めが悪い。そんなことを仲間内で話していたら、超大型のスッポンとまだふにゃふにゃの子供のスッポンが網にかかり、いっそのこと食べてしまおうかと話していた矢先、スッポンも絶滅危惧種にしてされたと新聞に出ていました。野生のものは何処も減っているようです。


山村君より 2016/6/9

あっという間に一月が経ち、梅雨入りしました。これから鬱陶しいときが続きますが、今年はどうやら渇水の様で、空梅雨にならないことを祈っています。

でも、池は万緑。実に様々な虫が飛び回り始めました。小生のような素人には分からないようなかすかな虫さえも見分けられる、小学生のとき以来の昆虫追っかけの微生物学者はホクホクです(彼は1000以上の虫を見分けられるそうです)。昨日もこれまで見たことも無いハムシを見つけたと言って喜んでいましたし、その前は日本に数か所しか自生している場所が見つかっていない何とかいうアブがツガッているのを見つけたと言って喜んでいました。どこかに報告するそうです。


写真1:テングチョウ


写真2:ジュンサイ

今回は、その彼氏に教わったテングチョウ(写真1)の他、ジュンサイ(写真2)、コウホネ(写真3)、ヒツジグサ(写真4)、アサザ(写真5)の写真をお送りします。もうすぐ、ハンゲショウが真っ盛りになり、トチカガミやガガブタも咲き始めることでしょう。何れも、昔は何処でも見られた、しかし今は絶滅が心配される水草です。例年ですとトンボが騒がしく飛来してくるはずですが、どうも、今年は数が少ない。生き物に詳しい仲間は、何か異変が起きていると心配していました。皆さんのお宅の近くでは如何ですか?どうも、見た感じ、生き物の種類も数もひどく減っていることが素人目にもわかります。


写真3:コウホネ


写真4:ヒツジグサ

梅雨が開けたら酷暑が待ち構えています。昨年は池のジュンサイとイノカシラフラスコモが全滅する浮目に会いました。同じ轍は踏むまいと、先週の金曜日(2日)、晴れ間の見えている間に急遽、酷暑対策をしようと言うことになりました。昨年に続き、10個以上の水鉢を15cmほど掘り下げ、下にブルーシートと板を敷いて、井戸水を散布して水鉢の温度を下げられるようにし、しかも余った水を無駄なく池に導くようにしました。6人がかりで汗だくになって、泥田のような地面を掘り下げ、水遣りと水廻りの工事をからくも終えました。汗が眼に浸み、履いている長靴も泥から抜けなくなるようなる難工事(年寄には)でしたが無事終わり、その後のビールの美味しかったこと。


写真5:アサザ


山村君より 2016/5/11

五月の連休も終わりました。旅行も終わり、子・孫の襲来も終わって、本来の定常状態に戻ってホッとしている方も多いことと存じます。

我がじゅんさい池自然環境ゾーンも、次第にカラフルな花が遠のき、緑が濃くなってきました。そろそろ草刈をと、昨日は総勢18人が集まって、水生植物園の草刈と水鉢の整備に汗を流しました。


写真1:ナガバオモダカ

昨年の猛暑でジュンサイとイノカシラフラスコモが全滅したので、今年はまたゼロからの再出発です。世界でここにしか居ないイノカシラフラスコモは、この春ヘドロの底に残った胞子から芽が出て、今は順調に伸びています。

それに比べると、ジュンサイは育てるのがとても難しく、現在、アサザやトチカガミ、ショウブなどとどのように組み合わせて育てようかと、様子見の状態です。昔から、「想定外の全滅」を何度も起こして来た池ですが、複雑な生き物相が重なる都会の中の里山の池では、異常気象のみならず、人災、水の劣化など、あらゆることが同時進行で、ことが起きてからでないと原因に思い至らぬことばかりです。土地の古老が何人もいて経験を伝えてきた昔の田園システムのようなやり方を近代兵器と組み合わせないとうまく出来ないのではないかとさえ思うこの頃です。


写真2:ホソヘリカメムシ

とは言え今年も時が巡り、フトイが伸び、ショウブやウキヤガラも地味な花を咲かせました。江戸川の古名は「ふとい川」だったので、この辺りは地質が向いているのでしょうか?それとも関係ないのか?ハンゲショウは株分けをして見学者に分けてあげてしまいたいほど、どんどん伸び始めています。東京は勿論、東京近郊でもショウブの穂のような花(花ショウブではありません)が咲くところは珍しいらしいのですが、此処では自生したものを刈り取って菖蒲湯にするほど出て来ます。ウキヤガラも絶滅危惧第二種となっていますが旺盛に伸びていてフトネクイハムシ(絶滅危惧種)が沢山ツガイをつくり始めました。今、盛りはナガバオモダカ(外来種)の花です。在来種のサジオモダカ(絶滅危惧種)はまだ咲いていません。


写真3:ウズラカメムシ

そろそろ蜻蛉や蝶も飛び交いはじめました。昨日見たのは、蜻蛉ではクロスジギンヤンマ、ショウジョウトンボ、オオシオカラトンボの♂、蝶ではアオスジアゲハ、ゴマダラ、アカボシゴマダラ、ツマグロヒョウモン、カラスアゲハ(クロアゲハだったかも)、それに何種かのシジミ蝶ですが、作業の最中だったこともあって、動きの速いトンボや蝶は、眼と腕の悪い自分には撮影は無理でした。目ざとい人は一瞬で見分けるのですね。


写真4:ネクイハムシ

今回お送りする写真は、ナガバオモダカの花(写真1)。写真2はホソヘリカメムシ、写真3はウズラカメムシです。カメムシは臭いから嫌と言う人が大部分だと思いますが、臭くないのもいるとのこと。世の中には変な人が居て、ネットで見るとカメムシの味見をしている人もいます。ウズラカメムシは茹でて食すと例のカメムシの匂いが口いっぱいに広がるそうですが、柑橘系の匂いもあり、メントールのスッとする匂いもするそうです。写真4はウキヤガラの葉の上でペアリングしているネクイハムシ(フトネクイハムシ?)。とてもきれいな虫ですが見分け方がやっかいそうです。写真5はご存知ナナホシテントウムシ。それから、写真6は池の薄暗い所からじっとこちらを見ていたウシガエル。近づくとゲッとか言って逃げて行きます。ゴイサギはこの大きい奴でも平気で呑みこみます。写真7は、仲間の一人(小学生以来の蝶の追っかけで、女子大の先生だった人)が、「ダイミョウキマダラハナバチというミツバチの仲間です。背中に黄色のコブみたいなものがありますが、たぶん別の生き物(昆虫かカビかはわかりま せん)に寄生されたものと推測しています。春先から晩夏まで、よく花(例えばハルジオンなど)に止まっています。相手は忘れましたが、このハチも幼虫は他 の昆虫に寄生するようです。 アブとハチの区別は頭を見るとわかります。ハチの仲間は触覚(アンテナ)がはっきりと伸びていますが、アブの仲間は複眼の間から短いものが出ている程度です(例外はありますが、一般的に複眼の大きさより短い)。翅の数は、アブは双翅類ですので2枚翅、ハチは4枚翅です。」と、教えてくれました。その仲間は、「池の周辺の木に、日本で5,6か所しかいない珍しいアブが自生しているのを見かけた。報告するまで誰かに話さないでください」と言ってました。その内、写真を掲載するかもしれません。


写真5:ナナホシテントウムシ


写真6:ウシガエル


写真7:ダイミョウキマダラハナバチ


山村君より 2016/4/4

「じゅんさい池」に今年も春が巡ってきました。4月に入って、都会の桜並木は外国人入り乱れ ての喧騒の巷ですが、葛飾の住宅街の中にひっそりとたたずむ「じゅんさい池」は、静かに満開を 楽しむ人々の散策のコースになっている程度で、小生のように年取ってからにわか仕込みのデジカ メ好きになった人間の恰好な被写体になってくれています。


ツボスミレ

その「じゅんさい池」本池のすぐわきにある自然環境ゾーンの、我が「水生植物園」にも小さな 花々が咲き始めました。今回はツボスミレ、ムラサキサギゴケ、ミツガシワの写真をお送りします。 それぞれの花の解説等は次回に廻します。なにしろ、花の話は調べ出すときりがないほど面白いか らで、時間を要します。なお、土筆はオヒタシに出来る程まだ生えていますし、水仙やタチツボス ミレやキショウブ(外来種)も雑然と雑草苑宜しく咲いていますが、それほど有り難くもない花な ので、今回は写真を割愛させていただきます。


ミツガシワ

前回は「水生植物園」の絶滅危惧種にかんする話題を二題お送りしましたが、今回はその後日譚 です。
ヒキガエルが産卵をおこなう数日前からメスを取り合うカエル合戦が盛んに繰り広げられ、陽光 の中それを上から覗き込むのは春の里沼(我々はそう呼んでいます)の楽しみの一つでした。とこ ろが、今年は2月の異状「暖波」でカエル合戦も見られないまま、2月の22日頃産卵が始まってし まい、わずかな数のオタマジャクシがかえったのみで、その後何やら消えてしまいました。カエル に詳しい生物の先生に言わせると、寒の戻りくらいでは絶対に死ぬものではないそうで、「変です ねー」なのですが、なんにせよオタマジャクシが沢山泳ぐ姿を見ることが出来ない春でした。ヒキ ガエルにも無精卵なんてあるものでしょうか。残念です。後で聞いたところでは、産卵を終えて 帰って行くカエルだったのでしょうか、車に轢かれてぺちゃんこになっていたのを見かけたとのこ と。来年は産卵があるかどうか。


ムラサキサギゴケ

その代わり、今年は2月の末頃からイノカシラフラスコモが沢山再生して来ました。育成担当の 責任者としては大変嬉しい限りで、これで絶滅させないで済みました。前回も書いたとおり、東京 都からイノカシラフラスコモを再生したいと言う要請があって、本家で再生できるならそれに越し たことはないと快諾をしたのですが、水鉢の中のわずかなものしかなく、それもアオミドロまみれ で、他のシャジクモ等と入り乱れての様子だったので都の職員も黙って帰ってしまったような次第 でした。そこで、その後、近所の高等学校の先生でシャジクモやフラスコモの再生に力を入れてい る方二人と市川市の自然博物館の館員(殆ど唯一人で市川市の様々な生き物の面倒を見ている方で す。)にお願いして、水鉢の中からイノカシラフラスコモを選別し、また、ヘドロのなかから胞子 を見つけだしていただいて、再生を始めたところでした。自然博の方の薦めで大き目のバットやプ ラスチック容器に株(雌株だけ)を植え付け、また、危険を分散させるため会員各自家のペットボ トルでの栽培を試みました。それとは別に、昨年の春以来少し大きめのバットに山砂を入れ、水槽 で育てていたシャジクモ類の中からイノカシラフラスコモらしきものを選別して移植し、その後丹 念にアオミドロを除いて来たもの、および、3年前に小生が用意した畳一畳ほどの広さの木鉢(手 製、その中てジュンサイと素焼きの水鉢から移植した藻類…シャジクモとイノカシラフラスコモが 入り混じっていた…を育てていました。それが夏の酷暑で腐ってしまい、ヘドロ化したため、昨秋 ヘドロを除き、日干しをしてあとは雨水が溜まるままにしていた)があったのですが、2月になっ たらバットと木鉢から勢いよく藻類が育ち始め、一方で、ペットボトルやラスチック樽など全てう まく行き、3月末には、木鉢とバットの中に雄株と雌株を確認することが出来ました。また、顕微 鏡で造精器と造卵器も観ることが出来、一安心と言った状況にたどりつくことが出来ました。往年 の高級顕微鏡を、ネットオークションを通して格安で買い、安物のCCDカメラをつけて見ている わけですが、それでも原形質流動などが克明に撮影でき、仲間に見せて喜んでいるこの頃です。イ ノカシラフラスコモに関しては邦文論文が一報あるだけで、そのDNAや生態は全く分かっていな いので、専門の研究室に持ち込んで詳しく調べて貰いたいものと思っています。


山村君より 2016/3/10

 これから四季折々、小生の所属する「蓴菜池にジュンサイを残そう市民の会」 が管理している水生植物園の生き物の写真や短文や催し物の案内を 投稿させて いただきたいと思います。

・今回お送りするのは今年ほやほやと言うよりは、昨年の写真展で展示されたも の3点です。一つは小生が作り上げたカメ罠を仕掛けるところ、一 つはカワセミ がアカトンボ(ショウジョウトンボ)を咥えようとする瞬間、もう一つは卵を守 るヒキガエルです。生き物は、元の写真は素晴らしい のですが、一部を拡大し たため、ぼやけて見えるものもあります。ご容赦下さい。

・昔は、啓蟄を過ぎて少し暖かくなると春を告げるように田んぼや沼の水辺にア ズマヒキガエルが出て来たものですが、今や東京近郊ではほとんど 見かけなく なりました。どの家もコンクリートを打ってしまうからで、我々の池でも、年々 数が細って来ていますが、それでも今年も産卵が始まり ました。産卵は例年3月 の7,8日と決まっていたのですが、今年は2週間も早く、2月の22〜23日となりま した。温暖化の影響がこんなとこ ろにも出ています。卵を守るのはオスで、近 づくとものすごい目つきで睨みます。両生類なんかにも感情があるのでしょう か。ともかく、怖くなり ます。

・3月19日には朝10時から「自然観察会」を行います。皆さんも是非おいでくだ さい。毎回30人くらいが参加します。お話は市川市自然博物 館館員の金子さん です。様々な草や花木を手に取りながらわかりやすく説明してくれます。今回の テーマは「イノカシラフラスコモ」です。

・名前のとおり、昔、東京の「井の頭公園」の湧水の近くで発見されたものです が、数十年以上も前に絶えてしまって、今や、世界でも我が水生植 物園にしか いなくなりました。第一種絶滅危惧種です。昨年12月には東京都の職員が6名連 れ立ってやって来て見て行きました。ご存知のよう に、井の頭公園はボラン ティアが集まり、オリンピックに合わせて掻い堀を行いましたが、これを機にイ ノカシラフラスコモを再生したいとのこと でした。2月の中旬の、まだ水が冷た く澄んだ状態の時、最も早く水の中に緑を映し始めるのがシャジクモやフラスコ モの仲間で、何でも後になっ て陸上に進出した緑色植物の祖先にあたるのがこ う言った藻の類だそうです。小生自身は、中古の顕微鏡にCCDカメラを取り付け て、イノカシラ フラスコモにとりついたワムシやミジンコなどを撮影して楽し んでいます。そのうちにDNAなど解析したいと言い出すかも知れません。