甲府市自治基本条例私案

 

森本案 

極私的経過報告その6

 

森本 優(2006/05/05,07/01)


修正案

H18.5.3

(前文・目的・基本理念の修正 H18.7.1)

 

前文

第一章 総則(目的・定義・理念)

第二章 自治の基本原則

第三章 市民

第四章 議会

第五章 執行機関

第六章 市政運営の原則

第七章 財政

第八章 他の自治体等との連携と交流

第九章 最高規範性

第十章 条例の見直し

附則

 

  

前文

 

 山紫水明の県都甲府市は、四方に山を巡らす美しい自然に恵まれ、先人たちが長い年月をかけて築いてきた歴史と伝統的な地域文化・知恵を、今日まで大切な財産として受け継いできました。

 地方分権の時代を迎え、この財産をより豊かな心の糧として子供たちに残してゆくには、今までのような行政主導ではなく、主権者である市民一人ひとりがまちづくりの担い手であることを自覚し、ともに力を合わせてゆく必要があります。

 私たち市民は、都市機能と自然環境が共存し高い文化を誇ることのできる平和で住みよいまちづくりに、一人ひとりが責任をもって参画・協働し、自治の栄える甲府市を次世代へと引き継いでゆきたいと思います。

 私たち市民は、市民・市議会・行政のそれぞれの役割と責務を明確にし、日々の暮らしの中で、一人ひとりの力がまちづくりに充分発揮され、お互いに磨き合い育ち合ってゆけるような、新たな自治の実現を目指して、ここに甲府市自治基本条例を策定します。

 

 

第一章 総則

 

目的

第1条  この条例は、市民一人ひとりが自治の主権者として、まちづくりに参画・協働できるための自治の基本事項を定めることにより、地方自治の本旨に基づく豊かで公正な地域社会を実現することを図り、もって市民の人権と福祉の向上に資することを目的とします。

 

定義

第2条  この条例において、次の各号に掲げる用語の定義は、当該各号の定めるところによります。

市民  市内に居住する者、市内で働く者、学ぶ者、活動する者、事業を営む者、等をいいます。 (市議会議員、市長、職員等も含みます。)

コミュニティ  地域社会の中で、地縁又は共通の公共的関心事(テーマ)によって繋がりを持ち、民主的な組織運営の下でお互いに助け合い共通目的を達成するために結ばれた組織及び集団をいいます。

参画  条例案・政策案等の立案から計画の実施及び評価に至るまで、すべての段階において市民が参加することをいいます。 

協働  各主体が、自主性・独立性を保ちつつ、目的とする協働事業において、互いの能力や特性を活かし合いながら、対等・平等の立場で支援・協力する関係をいいます。

協働事業  市民参画による地域協働社会を築き市民自治を推進するため、市民と市とがお互いの提案に基づいて協力し実施する、公共サービスに関する事業をいいます。

市民自治推進協議会(以下「推進協議会」という。)  市民の生きがい・幸せを実現するために、市民の市政への参画・協働を促して、市民自治を推進させる公募市民を主体とした協議会をいいます。

 

基本理念

第3条  私たち市民は、まちづくりにおいて、自らの意思と責任に基づいて主体的に決定し行動することを基本とします。

2 市民・議員・市長(職員)は、市政に関する情報を共有して、それぞれの役割と責務に応じてまちづくりに参画・協働し、市民自治を推進します。

 

 

第二章 自治の基本原則

 

市民参画・人権保障・適正手続き

第4条  市民、市議会及び執行機関は、市民の基本的人権を守りかつ市民自治を推進するため、それぞれの立場において、適正な手続の下、個々の市民の市政運営に参画する権利を保障します。

 

情報の共有・会議の公開・個人情報保護

第5条  市民、市議会及び執行機関は、情報を共有します。

2 それぞれの機関で行われる会議は、原則として公開します。

3 それぞれの機関は、他機関から必要な情報の提供を受け、又、自ら取得する権利を有します。

4 個人情報の保護には留意しなければなりません。

 

協働(独立・対等)

第6条  市民、市議会及び執行機関は、それぞれの立場とその独立性・対等性を互いに尊重し合い助け合いながら、協働して市民自治の拡充に努めます。

 

説明責任

第7条  市議会及び執行機関は、市民に対して又は他機関に対して、応答し説明する責務を有します。

 

法令の自主解釈

第8条  市民、市議会及び執行機関は、地方自治の本旨及び本条例の目的にのっとり、自主的に法令の解釈及び運用を行うものとします。

 

 

第三章 市民

 

市民の役割・権利

第9条  市民は、個人として尊重され、豊かな自然的並びに社会的環境において平和裡に生存し、自らの生きがい・幸福を追求する権利を有します。

2  市民は、適正な行政サービスを受ける権利を有します。

3  市民は、市議会及び執行機関の保有する情報を知る権利を有します。

4  市民は、年齢・性別・国籍を問わず等しく、自らの意思に基づいて、市政運営の担い手として参画する権利を有します。この場合、市政運営に参画しないことによって不利益な扱いを受けることはありません。

5  市民は、市議会及び執行機関に対して、各機関の経理や事務処理等に関して、情報公開及び説明を求めることができます。

 

市民の責務

第10条  市民は、その権利の行使にあたっては、他の人の権利を不当に侵害しないように配慮しなければなりません。

2  市民は、自治の主体であることを自覚し、お互いを尊重し合いながら、責任を持って自ら発言し行動しなければなりません。

3  市民は、行政サービスに伴う納税等の負担を分任しなければなりません。

 

事業者の責務 

第11条  事業者は、前条に規定する責務を負うとともに、自然環境・住環境に配慮し、安心して住める調和した地域社会に寄与するよう努めなければなりません。

 

コミュニティの役割・権利・責務

第12条  コミュニティには、自治会等の地縁別のものと、NPO等の公共的関心事に従ったテーマ別のものとが存在し、どちらも、市議会及び執行機関との関係においては、市民自治を拡充し地域協働社会を推進するための主体として、本条例の市民と同じ地位を有するものとします。

2  コミュニティは、個人としての構成員を尊重し、民主的な組織運営に努めなければなりません。

 

 

第四章 議会 

 

議会の設置

第13条  市民の直接選挙による議員で構成された市の最高意思決定機関として、議会を設置します。

 

議会の役割と責務

第14条  議会では、法令の定めるところにより、条例の制定・改廃、予算・決算の認定等を議決し、執行機関に対する検査及び監査の請求、並びに国又は関係機関に対する意見書の提出等を行います。

2  議会では、各種常任委員会で、議会の議決すべき事件につき議案を提出することができます。この場合、各種常任委員会は、必要であれば推進協議会等から意見を求めることができるものとします。

3  議会では、情報を公開し、市民に開かれた議会運営に努めなければなりません。

 

議員の責務

第15条  議員は、品位と名誉を保持し、常に市民全体の利益のことを考えて行動しなければなりません。

2  議員は、議会の責務を遂行して市民自治を推進するために、自ら自己研鑽に努め、誠実に職務を執行しなければなりません。

 

 

第五章 執行機関

 

市長の設置

第16条  市民の直接選挙により選ばれた自治体の代表として、市長を置きます。

 

市長の役割と責務

第17条  市長は、その地位が市民の信託に基づくものであることを自覚し、市民自治を推進するため、誠実かつ公正に市政運営に当たらなければなりません。

2  市長は、市民の参画と協働の条件を積極的に整備し、そのための人材育成と適正人事とに努めなければなりません。

 

執行機関の組織体制

第18条  執行機関の組織体制は、市民に親しみやすく、簡潔で、効率的なものでなければなりません。

2  執行機関の各組織は、社会情勢のさまざまな変化にも迅速かつ的確に対応できるために、各分野を有機的につなげることのできる柔軟かつ効果的な仕組みを採らなければなりません。

 

 

第六章 市政運営の原則

 

基本構想・総合計画

第19条  市長等は、行財政改革に努め、総合的・計画的な市政運営を行うため、市の最上位計画としての基本構想及び基本構想の実現を図るための基本計画を、市民の参画と協働により策定するものとします。

2  基本構想及び基本計画に基づき策定される個別計画は、基本構想及び基本計画と整合性が保たれるように配慮されなければなりません。

 

オンブズパーソン制度

第20条  市長は、市民の市政運営に関する苦情、又は自治体内での違法又は不当な事実等を、公正かつ中立な立場で迅速に処理することで、市民の権利利益を擁護し公正かつ透明な市政運営を図るため、オンブズパーソン制度を整備しなくてはなりません。

2  市政運営に携わる者は、市政運営に違法又は不当な事実があると判断した場合には、自らその是正を試みなければならない。更に、必要であれば、オンブズパーソンに告発し、その是正を求めなければなりません。

3  前項において是正し又は告発した者の人権並びに組織上の地位は、厳重に守られるよう配慮されなければなりません。

4  市長等は、オンブズパーソンの職務遂行に関して、その独立性を充分に尊重し、積極的な協力援助を行わなければなりません。又、オンブズパーソンから勧告又は提言を受けたときは、これを尊重し、誠実かつ適切に処理しなければなりません。

5  オンブズパーソンに関する組織体制並びに運営等については、別に条例で定めます。

 

行政評価

第21条  市長等は、市民と協働して、客観的で公正な評価を行い、その結果を市民に公表しなければなりません。

2  市長等は、行政評価の結果を予算編成、組織及び機構の整備、並びに総合計画の推進管理等に反映させなければなりません。

3  前2項に規定する行政評価に関して必要な事項は別に条例で定めます。

 

行政手続

第22条  市長等は、市政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、市民の権利利益の保護に資するため、行政処分等に関する手続きを定めなければなりません。

2  前項の手続きについて必要な事項は、別に条例で定めます。

 

出資団体等

第23条  市長等は、市の出資団体並びに補助金又は助成金等交付団体に対して、出資又は補助等の目的が効率的かつ効果的に達成できるよう、業務及び財務等に関する資料等の必要な情報の公開を求め、また必要と認める時は、助言等を述べることができます。

 

自治体経営と協働事業

第24条  市長等は、事業の実施に当たり、地域における資源と人材を最大限に活用した合理的・効率的事業の展開を図るとともに、市民の参画と協働による市民自治を推進するため、市民との協働事業が育っていく条件を積極的に整備しなければなりません。

2  市民又は市は、新しい公共サービスを創造するための協働事業計画を、推進協議会に提案することができます。

3  推進協議会は、前項の提案に対して検討を加え、必要であると判断した場合には、理由を付して市長等に提言・答申をするものとします。

4  協働事業の実施に当たっては、関係する市民と市との間で、当該事業の協働の在り方に関して対等な関係が保たれるように、互いの役割分担と協力の内容等を定めたパートナーシップ協定を締結するものとします。 

 

市民投票

第25条  市長は、市政運営に係る重要事項について、広く市民の意思を確認するため、請求等に基づき市民投票を実施することができます。

2  市民、市議会及び市長は、市民投票の結果を最大限に尊重しなければなりません。

 

市民投票の請求等

第26条  甲府市に住所を有する者のうち、選挙権を有する者は、その総数の12分の1以上の者の連署をもって、その代表から市長に対して市民投票の実施を請求することができます。

2  市議会は、各種常任委員会の決定又は議員定数の12分の1以上の者の賛成を得て提案され、かつ、出席議員の過半数の賛成により議決されたときは、市長に対して市民投票の実施を請求することができます。

3  市長は、自らの判断により市民投票を行うことができます。

4  市長は、第1項又は第2項の規定による請求があったときは、市民投票を実施しなければなりません。

5  投票権者及び実施方法等市民投票について必要な事項は、別に条例で定めます。

 

推進協議会の設置

第27条  市は、この条例に基づいて市民自治を推進させるために、市議会及び行政とは独立した市民自治推進協議会を設置します。推進協議会は必要に応じて定期的に開催されるものとします。

 

所轄事項

第28条  推進協議会の所轄事項は次のとおりとします。

(1)市民自治の推進状況についての検証を実施します。

(2)市民からの要望・発案及び前号の検証に基づき、市民自治推進に関する、政策立案、条例の制定・改廃、又は協働事業等について、提言・答申・調整等を行います。  

(3)推進協議会に関する情報を公開します。 

(4)その他、市民参画・協働の推進に関し必要な事務的事項を行います。

 

組織・運営・会議等

第29条  推進協議会の委員の人数は15人とし、過半数を公募市民とします。

2  委員の任期は2年とし、再任を妨げません。但し3期を超えて再任されることはできません。

3  会議は平日の夜間又は土・日に開催し、公開を原則とします。この場合、会議に係る資料を傍聴者の閲覧に供するようにします。また、会議録も原則として 公開とします。

4  議長は、会議の傍聴者に対して発言を認めることができます。

5  その他の必要となる事項は規則で定めます。

 

 

第七章 財政

 

総則

第30条  市長は、総合計画を踏まえた自主的かつ自立的な財政運営を、効率的かつ効果的に行うことにより、財政の健全性の確保に努めなければなりません。

 

予算の編成・執行

第31条  市長は、予算の編成に当たり、市民に対して市の財政事情及び予算の編成過程が明らかになるよう、充分な情報提供に努めなければなりません。

2  市長は、市の事業の予定及び進行状況が明らかになるよう、執行計画を定めなければなりません。

 

決算

第32条  市長は、決算に関する情報は分かりやすく工夫し、市民及び議会による事業の評価に役立つものとなるよう配慮しなければなりません。

 

財産管理・財政状況の公表等

第33条  市長等は、市が保有する財産の適正な管理と効率的かつ効果的な運用に努めなければなりません。

2  市長は、財政状況及び財産の保有状況を市民に分かりやすく公表しなければなりません。

 

基金

第34条  市は、公益活動を推進するため、公益活動推進基金(以下「基金」という。)を設置します。

2  基金として積み立てる額は、毎会計年度予算で定める額のほか、市民などからの寄附金・拠出金等(以下「寄附金等」という。)とします。

3  基金は、第1項に規定する基金の目的を達成するための費用に充てる場合に限り、処分することができます。

4  市長は、前項の規定に基づき、処分された基金の額を財源として、登録市民団体の公益活動に対して助成をすることができます。

5  公益活動の範囲及び登録等、基金に関連するその他の必要事項は、別に条例で定めます。

 

 

第八章 他の自治体等との連携と交流

 

第35条  市は、共通する課題を解決し、市民の福祉を向上させるため、他の自治体と相互に連携し協働するものとします。

2  市は、個人の尊厳に基づく市民自治の推進が、国際平和や環境保護等の地球レベルでの問題解決にとっても重要であることを認識し、世界の人々との交流及び連携・協働に努めるものとします。

3  市は、市民参画による市民自治の推進が、市民の基本的人権の保障に資することを認識し、県や国に対して権限・財源の移譲並びに制度・政策等の改善を求め、市民と連携し協働し合って市の自治基盤の強化を図っていかなければなりません。 

 

 

第九章 最高規範性

 

第36条  この条例において市民に保障される市政運営に参画する権利は、現在及び将来において、一人ひとり人の市民が市政運営の担い手であることを明らかにし、一人ひとり人の絶えざる参画により、自らの、延いては全市民・全国民、そして地球市民の、個人の尊厳に基づく基本的人権を守り続けてゆくことへの誓いとなるものです。

2  この条例は、甲府市の最高規範であり、他の条例・規則・その他の規範又は市の基本方向を示す各種計画の策定に当たり、この条例に定める事項及び趣旨は最大限に尊重されなければなりません。

 

 

第十章 条例の見直し

 

第37条  市は、この条例の施行の日から一定の年数を超えない期間ごとに、市民の参画と協働による市民自治の推進状況について検討を加え、その結果に基づいて、この条例の見直しを行うものとします。

2  前項の規定により見直す場合には、推進協議会と協働しながら市民の意見を適切に反映させる措置を講じなければなりません。

 

 

附則

 

 


甲府市自治基本条例をつくる会会議録


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