百姓天国第6集

 

ゆ め ・ ゆ め 対 談

 

 

夢一族(夢山松吉・夢野又夢・虚無生夢酔)

 

夢酔  お忙しいところをわざわざお越しいただき、誠にありがとうございます。今回は、第四集の「かみさまのさとし」の続編として、ざっくばらんに対談していただきとうございます。まず、神様の存在を否定し、せせら笑っている輩が私の回りにも大勢いるようですが、そこら辺りから話を進めてもらいたいと思います。

又夢  まあ、人間が感応力においても、また哲学的反省能力においてもだ、退化してしまったってぇことなんだろうよ。もっと素直だったら神さんのお声をよく聞けるんだろうけどなあ。科学的知識とやらで頭がいっぱいになっちまった輩が多過ぎるよな。

松吉  まこと、「物質」のみが全宇宙を構成する真の「実在」だとする唯物論に毒されおって、「神々」とは人間の想像力が作り上げた全くの幻影でしか過ぎないと、一般的には受けとめられておるようじゃな。

又夢  そこらへんの哲学的なことは、夢酔のとっつぁんが一番良く心得ているんじゃないのかい。『虚空を掴む』って云ったっけ、あの本。オイラ一行読んだだけですぐ眠りたくなるんで、寝つかれねえ時のためにと、いつも手元に置いてあるにはあるんだけどなあ。

夢酔  この「物質」の土台となる感覚的「実在」は、何らかの働きかけに反応した知性によって描き出されたものです。ですから、その表されたものは、知性が働くプロセスの中で、どうしても一側面上の(感覚的なものを素材とした)影としての性質を持たされざるを得ません。ところが、今の科学の前提となっている「哲学」では、その表されてくる感覚的「実在」のみがすべてであり、知性の働き、およびその知性をも統一しコントロールしている何らかの働きかけそのものは、全くといってよいほど無視されてしまっています。今指摘されたような哲学の退歩をくい止めるには、知性の「知る作用」を充分把握し直し、更にその知性をも統一する何かあるものの領域にまで、己自身の内奥に辿って、踏み込んでゆかねばならないでしょう。形而上学は、まさにその領域を対象としているのです。

松吉  その内奥から働きかけ囁きかけてくる声に耳を澄まし、神々の声を聞き分けられるほどにミタマミガキをしておくことが、神々の御杖代となるべき人々のつとめとはなるのじゃぞ。それが、哲学を越えた行というもの。哲学は、一度は徹底的にやる必要があるかもしらんが、ただそこに止まっていてはならんのじゃ。神さまは、学の有無にかかわらず、心の澄みきったミコトモチに降りてくるのじゃから、己がミタマミガキをしっかりしてな、親神さまに抱かれるようにならなければのう。

夢酔  但し、現代の迷蒙を打ち破るには、哲学が是非とも必要です。神がかっていない一般の人々にも、神々の領域の門口まで理詰めで連れていけることを示すべきです。「理性を打ち破る理性」として、誤った「哲学」を正すには、哲学をもってするしかありません。

又夢  今のところその誤った「哲学」が流行っていてよ、一切の事象を説明するのにだな、あたかも全宇宙は、機械じかけの時計のようにみなされているんだよな。部分的な大小さまざまな「物質」が歯車となってだ、それぞれ複雑に絡み合い、因果関係とやらを持たされてだ、そのようにして全体としての宇宙は動いておるってぇわけだ。だからよ、医療の現場でも同じように考えて、悪い部分を対症療法的に切り取りとりゃあええってぇ風潮が強いんだよな。

松吉  そのような「哲学」を前提とした世界観・生命観が、人類を堕落させ、破滅に導いているのは我々にとっては自明のことなんじゃがのう・・・。早く、そのような誤った見方を正す哲学が普及されてほしいものじゃ。

夢酔  表された影の世界がすべてであり、本当の実在の世界が全くの無としてしか扱われていない今までの現象学では、人類はその影の世界のワナにはまって出口が見出せないまま、野垂れ死にするしかないんでしょうね。そのような現象学にとどまる限り、何故未来のことが予知できるのか、また何故全く干渉し合わない者達が時代・空間を越えて同じ体験をし、そして同じ精神を語るのか、一切説明できないままでしょう。

又夢  影、カゲ、と云ってると、唯心論者だと勘ぐられはしませんかい。

夢酔  感覚的「実在」は、唯心論者が云うような、「知性(こころ)によって勝手に作り出された幻」なとでは決してありません。実在そのものではないが、知性によって映し出された実在の影なのであって、実在そのものの反映と云えるものなのです。ですから、子供とか芸術家そして物理学などの科学者などで、つまらない欲に囚われにくい人達の中には、その影の世界を通して、神々の意志に敏感に気づく人も出てくるのです。

松吉  じゃがのう、この常暗世ではな、己の狭い欲に囚われた人間ばかりが幅をきかせておってじゃ、彼らの発するドス黒い想念が地球全体を覆い、この世を修羅場と化させておるんじゃよ。彼らにとってはな、神々の声に耳を澄ましその声に従う者達は、全くの馬鹿か気違いの類としてしか映らないじゃろうよ。このようにして、神の道はすたれ、スメラミコトの皇徳は忘れ去られてしまったんじゃ・・・。

夢酔  高次の聖的エネルギー(神々の働き)は、たやすく山川草木・動植物などの低次の生きものに流れ込んでいますが、途中でその流入に干渉して、回りのそれらのいのちを地獄へと投げ込んでいるのが、人間が持つに至った「囚われた貪欲な念」です。人が生きている間に放った念は、死後もかなりの間波紋を残しながら霊界に存在し続けるんですが、そのドス黒い念が支配的になるに至って、回りの低次のいのちは、充分神々の恩恵を受けることができなくなるのです。そして、自然災害・社会上の混乱・政治上の腐敗等が、ひっきりなしに起きてくるようになります。

又夢  夢酔のとっつぁんの哲学はよ、変にこむずかしくていけねえや。話を変えましょうぜ。ところで、松吉のじっちゃんが云った「スメラミコトの皇徳」てぇのは一体何だい。

松吉  一言で云えばじゃ、万有の主宰神さまがお持ちになられている大御心(宇宙の理法)を己が御心とされ、至高なる徳をもって民をしろしめす天子さまのことじゃよ。この全宇宙の一切万有は、主宰神さまの大御心に抱かれて、生成発展を繰り返しておる。じゃからこの人間界においてもな、神の道に従った最高の営みは、民が天子さまの存在を一切気にする必要なく、また支配権力の介入がないままにじゃ、自由に自然の恵みを受けながら、祀りにいそしめるものでないとな。

又夢  それじゃあ、じっちゃんが云っているのは、ほとんどアナーキーじゃねえのかい。天子さまがおられるってんで、さしずめ天皇制無政府主義ってえところかなあー。

松吉  全くの無政府状態ではないんじゃがな、「人の道」ではなく「神の道」にのっとった祀りでは、そのような外観を呈することじゃろうよ。しかしじゃ、考えても見てごらんな、アナーキーな状態が365日続くんじゃったら、そりゃ気違いさまだ。確かに神さまと「かみ」一重じゃがのう・・・。じゃからな、生活と云うものが人間さまにも必要なんじゃから、常民としての枠が当然出てくると云うわけなんじゃよ。乱調の美しさは、日常の諧調的な生活があって初めて、際立ってくるものなんじゃな。

夢酔  確かに古代、各地にその主宰神さまの大御心を己が御心としてしろしめされていた複数のスメラミコトがいたとも伝えられておりますが、数々の征服劇を経て、スメラミコトの理念は忘れ去られてしまったとも聞きます。今の天皇家の流れも、残念ながら現代に至るまで、そのような皇徳を現すまでには至っておりません。神武建国後の一時を除いて、それ以降の天皇家は、時の権力・エスタブリッシュメント層によって利用され続け、また天皇家は天皇家で、そのような状況の中で生き延びる知恵を身につけてきたというのが実情でしょう。そして現在天皇家は、世界一般からは、英国やアラビヤ等の王室と同じレベルで、王家として受とめられています。このように時の権力を正当化し、終には「封建遺制」と化した今の天皇制の存在意義を、再び問い直そうとする動きが強くなってきていますよね。

又夢  明治政府の時はすさまじかったよなあ。挙国一致体制を整えるってんで、天皇さまさまを担ぎ出しちまってよ、ついでに天照さんを「国家神道」の柱に祀り上げちまったときたもんだ。その上にだ、当時の政権にとって不必要・不都合な神さんは全部弾圧してしまったんだからなあ。人間の都合で、神さんの調和した体系を乱しに乱したんだから、その後の日の本は、敗戦を迎えるまで、乱れに乱れたんだよな。

夢酔  今回の地球規模での大峠では、天照大神を祀る天皇のの霊統筋だけでは、世界どころか日の本さえも救えませんね。全世界で埋没させられている神々の発動と、それぞれのミコトモチ達の活躍がないとね。そのためには、諸々の神々を統べる主宰神さまの大御心を己が御心となし得るスメラミコトの発現が、是非とも必要なのです。その皇徳によって、地球は破滅から免れるはずです。個人的には、戦後民間から皇室に入られた、美智子さま・雅子さまの両お妃さまが、それぞれのミタマにしたがって、スメラミコトの理念を現す為、それぞれの大役を果たして下さればと、切に願っているのですがね。日の本、更に地球あっての天皇家なんでしょうから・・・。

松吉  天皇家の方々には、この「むすび」を遂げるためにもじゃな、みずから埋没させ、もしくは無視し続けてきた、諸々の神さまにお詫び申し上げ、真心をもって、それらの神々の発動をお願い申し上げていただきたいのじゃ。わしとしてもじゃ、美智子さま・雅子さまをはじめとした天皇家の方々が、率先してこの病める地球をお救いくださりますよう、心を込めて願うばかりじゃよ。そして、古代の天皇制の理念が、現代の日の本に現され、全世界を普く照らし出すことをな、ただただ一心に願うておるわけじ。

又夢  でもよ、オイラ霊界にいるからよくわかるんだけどな、「昔・天皇家の配下どもに滅ぼされた」なんてえ念が、今でもしつこく霊界で反響してますぜ。ちょっとやそっとで、そのような念を鎮めることが果たしてできるんだろうかなあ。時たま皇室に対して過激な行動をとる連中が出てくるけど、そういった念が取り憑いている場合が多いんだよなあ。

松吉  そのような念がずっと取り憑いて、手に負えなくなるような人間はじゃな、その神格自体が相当低いと申せる。弾圧され埋没させられた神さまの系統を受けているミコトモチであってもじゃ、神格が高ければ、その至高なる徳から発せられる言霊を必ずや受け入れてくれるはずじゃ。ただその「むすび」で一番問題となるのはな、そのような被抑圧者の念などではなくてじゃ、天照大神を祀り、天皇家を古よりお守り申し上げてきた「皇軍霊団」の念のほうなんじゃ。彼等は霊界にあって、天皇家の忠実な下僕として仕えてきておるが、その忠実さがあざとなって、なかなかこれからの「むすび」とはなりにくいんじゃよ。彼等としては何よりも、天照大神とご主人様に忠誠を尽くすのは当然なことじゃろうし、じゃから、そのような自ら作り上げた既成秩序を乱そうとするものに対しては、霊界から襲ってくるんじゃな。

又夢  どうも、皇室の方々が、如何にスメラミコトの理念を全世界に示されようとしたとしても、自分の元配下の連中が、邪魔しに飛んで来るってえあほな話になっちまってるようで・・・。

夢酔  一番良いのは、天皇家の方々自身から、その霊団にたいして言向け和すことです。天皇家が新しい舞台を踏む為にも、そのことは是非必要です。中には頭の固い頑固な念も混じっているでしょうが、誠を尽くせば必ずや聞き入れてくれるはずなんでしょうがね。

松吉  埋没神・未来神も含めてな、それぞれの神さまが立たれる磐境(イワサカ)をじゃ、日の本の各地に二十九つくり、それぞれに斎宮を設けるべきなんじゃよ。それと同時にじゃ、全世界各地に、日の本をモデルにした二十九の神国共産共益社会を準備しておくことじゃ。そのようにしておけばな、近い将来必ずや、本来あるべきスメラミコトが降臨し、全世界をその皇徳によって導くべき秋がやってくるはずじゃ。

夢酔  今こそ、明治維新の時の「王政復古」とは全く別な意味合いで、神政復古が叫ばれるべき秋ではないでしょうか。(完)

(百姓天国第6集 1993.8.10 掲載)

 

 

つづく

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