百姓天国第1集

 

ポスト世紀末を読む

コメ・流通等の自由化に向けて、農の再編成を論ず

 

                       

対談者 虚無生 夢酔、夢野 又夢

司会 森本 優

  

司会 今日はわざわざお忙しいなか、霊界より両先生においで頂き、本当にありがとうございました。実は、今日集まって頂いたのは、これから始まる「新農民」の時代に一言餞として、この混沌とした現界の動きの中で、如何に「新農民」は活路を切り開いてゆくべきかを、簡単に論じあって頂きたいと思ったからです。活路を開くと言っても、別になりわいが維持されるという意味ではなく、更に転じて、「田舎もんの革命」が如何に体制の変革を成し遂げ、同時に、今世紀末及び来世紀初頭に来るだろう地球的規模の危機を如何に救済してゆけるか、という意味に於てです。では両先生、よろしくお願いいたします。

 

食管制度にしがみつく日本の農業に未来はあるか・・・

夢酔  いよいよ日本の農業も大きな節目を迎えているね。先日の霊界新聞にもね、「コメ自由化しなけりゃスーパー301条の制裁規定を適用するぞ」、なんていう物騒な脅しが米国からあったことがのっていたよ。

又夢  「国際協調」とか、「自由貿易」とか、「消費者の利益」とか、一応もっともらしいこと言ってますぜ、それなりに・・・。コメの自由化も、かなり現実的なものになってきた見たいだ。

夢酔   世論を操作するにはね、そういった、表面的で大衆の感性に直接訴えることが出来るようなものが必要なんだろうね。結局目先のことが一番大切ってこと、今の日本ではね。

又夢   どちらかってぇと、「自由貿易」も「消費者の利益」も、このインテリの又夢さまにしてみりゃあ、どうも抽象的で捕らえ所のない表現だなあ。結局は、「資本の利益」に帰着するんじゃあねえのかい、特に今のごじせいじゃあね。

夢酔  農業問題、特にコメの自由化に関して、色々な人達が意見を言っているのをTVや新聞・雑誌等で伺う機会が非常に多くなって来ているんだけれどもね、どうも皆さん、肝心な所が抜け落ちているんじゃないのかな。一方はね、「生産効率性に基づく国際競争力」・「国際協調」・「自由貿易の原理」・「消費者の利益」又は「消費者の選択」とか何とか言って賛成し、又一方はだね、「日本農業の崩壊」や「食糧の安全保障」の他に、エコロジカルな視点から「水田の経済外的価値」なり、又は「食の安全性」なりを上げて反対してるんだけど、両者とも、それ以上の堀下げがほとんど見られないね。問題はコメの自由化という表面的な事実のレベルだけで問われるべきではないと思うんだがね。

又夢  真相を隠すにはもってこいのやり方なんだろうがね・・・。

夢酔  反対派の論者に一言いいたいんだが、ただ自由化阻止だけを叫んでいるだけで最悪の事態に備えていなければ、そのパワーも結局は「水泡と化して後に何も残し得ず只消え去ってゆくのみ」、というふうになってしまうんじゃないか。今襲いかかっている波は、尋常のものではなさそうだからね。

又夢  貪百姓ってえのは、昔からずーと保守的に物事を考え行動してきたし、またせざるをえなかったってぇことなんだろうよ。今でもほとんどの貪百姓は食管制度にしがみついてるし、お上のやることに対してあからさまに意を唱え、対決するってぇこたぁまずねえからなあ。

夢酔  でも既に政府は農民を安楽死させ、超国家的な競争の中に日本農業を投げ捨てようとしているのにだね、当の農民は過去のものとなりつつある制度にいつまでもしがみつこうとする。日本の農政に展望がないから、常に対応が後へ後へとまわってしまう。

司会  それじゃあ夢酔さんは、賛成派と同じく、コメの自由化を許して大規模農家の育成に力を入れろとおっしゃる・・・。

夢酔  別にそんなこと言ってるわけじゃあない。日本の農民、ひいては日本の国民は、この世紀末の激動期を如何にして生き延びてゆくか、もう少し真剣に考えておく必要があるんじゃないかとい言いたいんだよ。全世界にうごめくパワーと戦略をしっかりと検討し直し、それに対応した戦略をそろそろ日本も持たなきゃならないんじゃないか。もう一部の政治家・実業家・官僚・学者・知識人たちだけに政治を任せているようなことをしていてはいけないんだよ。とりかえしのつかないことになった後じゃあ遅いからね。

又夢  今の政府には経済性を越え出た独自な戦略というものがまったくないね。そしてアメさんべったり。アメさんあっての政府だからなあ。

夢酔  そして同様に、今の農民にも、生活を越え出た独自な「夢」というものが見失われているんじゃないか。コメ自由化阻止の運動も、今一つ的を得ていないんだよ。

司会  そこらへんをもう少し詳しくお願いいたします。

 

アメリカの戦略と日米安保条約

夢酔  まず世界全体の動きを分析してから、問題の中心に入ることにしたいね。全体を総観せずに部分的な範囲で物事を論じても片手落ちになるからね。つまり、今回の自由化の問題も当然、「東欧の民主化」なり、ソ連の「ペレストロイカ」なり、「ECの経済的統合」なり、中国の「天安門事件」なりと、複雑微妙に関係しているんじゃないだろうか。それら全部は、世界を牽引している列強諸国の再編成に絡んで出てきているんじゃないかとにらんでいるんだがね。だからそれを分かり易く分析して、しかる後に日本の今後とるべき道を模索しなければいけないと思うんだ。

又夢  それじゃあまず、アメリカさんはどうなんですかい。コメだけでなく、流通・土地・金融・公共投資なんかでも色々口を出してきていますがね。

夢酔  私の偏見と独断によればだね、アメリカの凋落の最大の理由は、軍事費の支出と同時に、多国籍企業の海外流出があったからなんだよ。そのアメリカが、以前と同じように世界の最強国としてイニシアティブをとってゆくためには、どうしても日本の強い経済力と高度な先端技術が必要になってきたってことなんだろうね。だからアメリカとしては、国力が低下すればするほど必死になって日本に圧力をかけてくるってえ寸法。

司会  そのアメリカから流出する多国籍企業群が、再びヨーロッパに向かい、世界制覇の本拠地としてEC統合を準備しているという噂もありますが・・・。

夢酔  その動きが結局アメリカの国力を低下させてゆくんだろうね。だからアメリカとしても、国力を維持し増強してゆくにはってんで、戦後驚くべき経済成長を遂げた日本に目をつけているって訳。なにしろ、アメリカの膨大な赤字財政を支えてきているのは、日本から流れてくるマネーだという話ですからね。

又夢  日本の泡銭っこがよ、アメリカに流れちまってアメリカの財政を支えてるってぇこたあよ、もしかしたら日本はアメリカ合州国の一州になっちまったんじゃあないのかい。

夢酔  アメリカとしては、そのジャパンマネーと、世界をリードする日本の技術とを自由に操作し利用し尽くすためにも、どうしても日本を、アメリカ自身が用意した管理・支配システムの中に組み入れてしまいたいんですね。そしてその制度的根拠となっているのが、日米安保条約なんです。この条約がある限り、日本はアメリカの属国のままってことだね。

又夢  でも、安保条約は軍事に関するものなんじゃあないのかい。だとしたら、米ソの冷戦構造が崩れてきた今、何故ここで殊更問題になってくるんだい。

夢酔  彼等は、この経済戦争の勝敗の分かれ目は先端技術にあると思っているんだね。だから自国の競争力を回復させるためにも、なんとか日本の得意な技術を自分の国だけでこっそりと唾をつけ利用しようってんだ。そこでだ、民生用に開発された技術であっても、アメリカがどうしても欲しいと思ったものは、軍事利用を口実に独占しちまうんだ。勿論その条約の根拠が安保条約ってえこと。おまけに日本に、自らの意志でその管理・支配システムから独立されたらまずいってんで、自立の基盤である国内農業を撃とうとしている。同時に流通・金融も抑えにかかってくるだろうね。

又夢  日本が勝手に、ソ連や中国に技術援助なり経済援助なりをされたら困るんでしょうね。

夢酔  戦後の日本は、アメリカの世界戦略の中で、経済的にも軍事的にも強くアメリカに従属した国だったんですよね。それがいつの間にか、経済力で軍事大国を脅かすほどにまでなったんだ。軍備はアメリカに任せといて経済一直線でね。それで、そんなに経済が強くなったんなら軍事費のほうを負担すべきじゃないか、という話にまでなってきたんだね。でもね、国の立場がそれぞれ平等ならその話しもそりゃ一理あるがね、政治の舞台裏をのぞいて見る限り、決して平等と言えるようなもんじゃなさそうだよ。

 

アメリカの戦略に組み込まれて日本は自滅へ・・・

司会  以前ロッキード事件があったんですけれど、あの場合も、エネルギー自給をやろうとした為に、当時の首相だった田中角栄がアメリカから狙い撃たれた、というのが真相みたいですね。その同一線上で今度は、国の自立基盤としてのコメが狙われているとおっしゃるんですか。

夢酔  アメリカとしてみれば、それは当然考えに入れているでしょう。確かに、工業立国を目指して逆に30%の穀物自給率しかない日本に対して、今更食糧の自給を阻もうとするなんておかしいと思うかもしれませんよね。でもね、今の農業の状態でも、まだまだ復活の底力が隠されているのは承知なんではないのかな。もしもの場合には、うまく土地を利用して短期間に60〜70%ぐらいには穀物の自給率を向上させることができるだろうから、完全に自立力を奪い取って管理・支配システムの中に組み込んでしまおうとするアメリカにとっては、その自立の基盤が依然として目障りなのかもしれませんね。

又夢  日の本の一番弱くて、しかも一番かなめとなる所を狙ってきた・・・。

夢酔  コメの自由化は、純粋に経済的観点から見るならだね、アメリカにとってさほどうまい話ではないんだがね。でも、将来の日米関係を考える上ではそれが戦略上俄然重要性を増してくる。恐らくね、今の段階でも、この自由化の問題を脅迫の種にして、陰で自民党政府に不当な要求を受け入れさせているんじゃないだろうか。表では政府の顔をたてるようにするだろうけれどもね。何しろ、自民党は依然として保守層である農民の票を無視できないんだ。でも、それを承知の上で無理難題を押しつけてくる。その裏で政治決着が、国民の目の届かない所で成されていくんだね、それも、とっても重要なことが。計算高いというか何というか・・・。

又夢  政府としてもアメさんに金玉握られとるからどうしようもないんだろうなあ。下手に反抗したら第二のカクエンになっちまう。それよりイイコイイコしとったら、「立派」な政治家になれて、ノーベル(ノータリン?)平和賞でさえ夢じゃあない。

夢酔  今後のアメリカの方針としてはね、恐らくこのように、アメリカの要求を呑み続けてきた自民党政権は存続させながら、自立基盤としての国内農業は徐々に安楽死させるのではないかな。そのため、自民党の支持基盤を農民層から徐々に都市部の住民層なり他の産業層に移行させてゆくだろうね。そして、それと表裏一体の関係で、大多数の農業就労者を安楽死させ、そこから溢れた労働力を他の労働者不足で悩んでいる産業に振り分けるようになるんだろうね。農業には少数の大規模経営者さえ確保してさえおけば、票にはあまりこたえないって寸法なんだろう。

又夢  ピョウつうたら、国会で今、選挙制度の見直しをしてますぜ。これも自民党の地盤固めってえわけですかい。・・・まあそうなんだろうな。

夢酔  コメの自由化のみに絞って言えばだね、政府としても、自由化を急速に受け入れてしまったら、まだ依然として力を持っている農民層からの反発を受けることになるのは目に見えているからね、初めのうちは「自由化を絶対阻止する」とか何とか言って、裏では自由化に備え世論作りにやっきになっているんだろうね。下衆の勘繰りかもしれんが、今回の選挙制度見直しも、自由化を見据えた上でのもので、農民の反発に対処するためのものかも知れないよ。世論を見ながら徐々に「一部自由化」へ、そして支持基盤を選挙制度手直しの過程の中でしっかりと固めた段階で、「完全自由化」に踏み切るんじゃないのかな。以上の過程を出来るだけ波風立てずに終え、無事に「完全自由化」を達成することが出来たら成功というわけだ。そしてその結果、日本は「国際分業」の中に完全に組み込まれてしまうんでしょうね。

又夢  かくして、めでたくアメリカ合州国の日本州として、忠犬ポチ公ならぬ我自民党政府は、主人から与えられた役目を忠実に果たすのでありました、マル。

夢酔  でもね、一度自立を放棄してしまったなら、「国際協調」が続く限りはまあ良いとして、何か異常な事態が発生して、その有機的な管理・支配システムそのものが機能しえなくなるような場合、一体日本はどうなるんだろうね。そのシステムに組み込まれている最も弱い部分が、まず淘汰の対象となることはまちがいないだろうからね。万が一事が起これば、そのアメリカの戦略に組み込まれた日本は、真っ先に自滅せざるをえなくなるんじゃあないのかな。そして大半の国民は、世界の地の果てを流浪するはめになっちまうんだろう、第二のユダヤ人としてね・・・。

又夢  敗戦後、アメさんに強引にいてこまれ、今度はいやいや「みちゆき」の、心中となればあわれ日の本の操かなかなカナカナ蝉、ってぇところやな。

夢酔  そうまでならんでも、日本がそのアメリカ主導の「国際協調」路線を歩む限り、第三諸国の庶民に対する支配・管理をいやおうなく補完してしまうことになってしまうだろうね。まあ、日本の支配層としてはそのシステムの中で、東南アジアや中南米等の弱者の上に立つ地位が与えられる限り、喜んでその管理・支配システムを受け入れることでしょうがね・・・。

又夢  ところで、「世界平和」・「世界平和」って、偉そうな顔した政治家や宗教家がオウムみたいに繰り返し言ってんだけど、オイラどうしても納得いかねえなあ。その平和の下で常に多数の餓死者や被抑圧者や被差別者なんかが出るとしたらだよ、その平和って一体何なんだい。一体誰が必要としてるんだい。その平和の中で栄えてる一部の・・・。

夢酔  まことに、工業立国によって得た豊かさが続く限り、政界・財界・学界・宗教界・官僚等のお偉がたは、世界の流れに如何に乗っかってゆくかばかりを気にして、決して弱者の立場に立つことはないだろうからね。

又夢  政府の「発展途上国開発援助金」もよ、潤うのはほんの一部の支配階級の人達ばかりでよ、一般庶民には何の利益もないみたいですし、かえって森林破壊や公害やらで、恨まれる場合の方が多いみたいですぜ。やっぱり、庶民同士の草の根ネットワークを充実させることの方が先決なんじゃあありませんかい。そうすりゃあ、その国の人が何を欲しているのか良くわかるだろうし、日本に対する非難もおさまってくるだろうしよ。その意味でも日本の「弱者」である百姓が、第三諸国の庶民に一番近い所にいるんだから、何とか交流を考えてゆくべきなんじゃあないのかい。

 

「自由」を押しつけてくるアメリカの謀略

司会  ところで、アメリカの戦略の絡みのなかで、中国・ソ連の動きをどう捉えていらっしゃいますか。ここ一・二年の間に共産主義諸国も随分と変わってきましたが・・・。

夢酔  私は政治評論家じゃあないんで詳しくはわかんないけれどもね、物事には相反する力がはたらいているよね。国家の場合も同様に、求心的な力と遠心的な力との相反するものが働いているんじゃないかい。だから、若くて求心力の強く働いている充実した国家というのは、えてして遠心的な力もそれに応じて強くなってくるため、国家の勢力範囲を拡張しようとし出すことでしょうね。そしてその遠心力にまかせて、とは言ってもそれは求心力に規定されてるんだが、国家の勢力範囲を目一杯い押し広げたとするね、すると今度は、求心力と遠心力とのバランスが崩れて、国家をまとめておこうとする求心力がうまく働かなくなってしまい、結局分裂崩壊してしまうんだ。そして再びその中で求心力の強く働いている充実した部分が・・・。

又夢  えぇーいじれったい。とっつぁんの哲学がでてくるとオイラもう我慢できねえ。

夢酔  だからだね、今世紀末の混沌とした時期においても同じことが繰り返されているんじゃあないかなって言ってんだよ。事実今のソ連・中国なんかを見てご覧、勢力範囲を拡大したはいいけど、経済力に代表されるようにだね、一度国力が落ちたら、少数民族の反乱等で四苦八苦してるじゃないか。でもね、同じことがアメリカに関しても言えるんじゃあないかい。

又夢  最近アメリカで少数民族の反乱があったなんて聞いていませんぜ。

夢酔  アメリカと中国・ソ連とでは、それぞれお国の成立事情が違うんだよ。中国・ソ連では武力に頼んで少数民族を支配し、今の勢力範囲を築き上げてきたんだけれど、アメリカの場合、比較的歴史が新しいということも影響して、国家の支えとなったのはお金だったんだね。「自由」と「成功」を求めてヨーロッパ諸国から色んな民族が移り住んだんだけど、「成功」するにはお金だってんで、お金が求心力となって巨大な国家が形作られ、両大戦を経てつい最近まで世界をリードしてきたんだ。だからアメリカの場合、その戦略上、武力による世界制覇ではなく、「自由」・「民主」といった御旗の下で巨大資本を核とした、経済的世界制覇をねらっているんだね。ところが共産主義革命がそれを邪魔するってんで、軍事介入したりして軍備に莫大な金がかかるようになっちゃったてえわけ。その上経済的世界制覇を狙ったお金が国外に出てっちまった。お金というのは利潤を求め出すと国家なんか二の次なんだからね。これがいわゆる多国籍企業。

又夢  国なんどかえってじゃまくそでもある、と・・・。ところで、アメさんは「自由」という言葉を好んで使いますなあ。今でも「自由主義」とか「自由貿易」とかよく耳にしますぜ。で、なんですかい、とっつぁんの言い方には否定的な響きがあるけど、いちゃもんをつけようってんで。

夢酔  理念としての「自由」は誰も反対しないと思うんだけど、それが現実の政治の舞台で使われ出すと、どうも話がおかしくなっちゃうんだよね。歴史的にみてもだね、この「自由」という理念は、以前の古い管理・支配システムを否定し、新しい管理・支配システムを作り出すのに非常に役立ったんだね。つまりね、そのおかげで封建時代の桎梏から人々を「自由」の身にしたことはしたんだがね、でも貧しい人々にとってはそのままでは生きてゆけないから今度はね、資本主義体制というシステムの中で低賃金労働者として、再び奴隷みたいに働かなくちゃあならない状態に放り込んでしまったんだ。要するに、結果として主人が替わっただけで、「奴隷」の身分には何の替わりもなかったってわけなんだね。例えばアメリカの場合だね、南北戦争で奴隷を解放したんだけれど、北軍が掲げた「自由」・「人権」・「博愛」等の崇高な理念の裏には、北部の産業資本家層の思惑が強く働いていたんだね。彼等にとって、南部の封建的な農業地帯から奴隷を「解放」して、それらを安い賃金労働者として酷使したかったんだね。こう言ったことはそれ以降の歴史の中でもしばしば起きている。

又夢  アメさんの体制が変わらん限りかい。

夢酔  正確には、アメリカに代表される資本主義体制が、ってことだろうね。以前の帝国主義時代にはね、植民地の豊富な資源と市場とを求めて、国家そのものが力まかせに侵略していったんだけど、資本が充分集中して多国籍にわたって活動するようになるとね、今度は資本そのものが、武力によってではなくお金の力によって、経済力の劣った国へ浸入するようになったんだ。そしてそこで、労働力と資源を非常に安く手に入れて商品を多量に安く製造し、全世界の市場に売りさばいて膨大な利益を生み出すようになったんだね。その戦後最強の国だったアメリカが今でも取っている戦略が、この延長線上にあるというわけなんだ。つまりね、「自由」・「民主」・「人権」等の理念を唱えて、「自由貿易」なり「国際協調政策」なり「自由民主主義」なりを押しつけて来ているんだけど、その背後には、資本の論理そのものが持つ途方もない力を利用して、全世界を自国主導の管理・支配システムの中に組み込んでしまおうってわけなんだね。

又夢  それじゃあ、日の本に対する「自由」の押し売りも、日の本の自立を奪い、自分のシステムに組み込んでしまおうってぇ下心あってのことなんだな。とんでもねえ野郎じゃねぇか。ところでだ、アメリカとしては、中国・ソ連・東欧諸国の人民を「解放」して、それらを再び自分の管理・支配システムに組み入れる絶好のチャンスに今あるってわけなんだろ。共産主義諸国は、今経済的に行き詰まって西側資本に門戸を開きつつあるからなー。

夢酔  恐らくアメリカとしては、それらの国の民主化勢力を必要なかぎり利用して突破口をつくろうとしているんじゃあないだろうか。だからゴルバチェフのペレストロイカを支援してゆくだろうし、中国に対しては、徹底した「民主化」を要求しているね。ところで、彼等が一番求めているのは、莫大な経済援助と先進技術の供与でしょ。そこでだね、何故アメリカは無理難題を強引に押しつけてまで日本の自立を奪い、自己の管理・支配システムに組み入れたがるのか、という事がとても重要になってくるんだ。いいかい、前にも言ったようにアメリカも、中国・ソ連と同様経済力という観点からみて、国力の低下が激しいんだけど、このままでは世界制覇どころか自分の国一国でさえ支え切れない程にまでなってしまったんだね。そこで目をつけたのが日の出ずる国。日本は戦後勝戦国アメリカの核の傘の下で商い一筋。気が付いた時には世界で最大の債権国。一方アメリカは最大の債務国に成り下がっていたというわけ。当然アメリカとしては己の属国を利用しない手はないだろう。自国の立て直しをし、更に世界戦略を遂行してゆくには、日本のお金と先端技術がどうしても必要になってきたんだね。それで出来るだけ早く富める国ジパングを手中に収めようとして、色々な無理難題を急にいいだしてきたんだ。

又夢  アメさんが必要とした時、日本がそこにいたってえわけだ。でも、日本としてみりゃいい迷惑だよ。もしもってぇ場合アメさんと心中するつもりねえだろうからな。まして、アメさんに見捨てられ日本だけで自害、なんてことになったら死んでもしに切れん。

 

中・ソ・ヨーロッパの現状と展望

司会  申し訳ありません。アメリカの戦略はそれくらいにしてもらって、中国とソ連の観点からそれらの動きをどう捉えていらっしゃるのかお早くお聞かせください。中国で起きた「天安門事件」をどうご覧になられますか。ソ連の「ペレストロイカ」と東欧の民主化運動は・・・。

夢酔  アメリカの戦略との絡みでいえばだね、「天安門事件」は、道義上の意見は置くとして、国家戦略としては筋が通っていると思うがね。もしもだね、民主化の波に揉まれ、政情不安定なままで全国の市場が解放されるようになるなら、中国は再び分裂し、巨大資本の餌食になってしまうことにもなるだろうからね。中国としては、党のコントロールの下で部分的に解放して、経済力・技術力を高めることに努めるでしょう。そして、世紀末の混沌期に徐々に近代化を成し遂げて国力を蓄え、もしかすると激動期に生き残れる数少ない強国の一つとなるかもしれませんね。思うんですが、中国の民主化勢力としては、共産主義と資本主義との両勢力以外の、第三の道を取ることが必要なんじゃあないのかな。でないと、どちらも袋小路なんだからね。

又夢  ソ連に関してはオイラが言おう。ソ連の熊公も、そう易々とアメ公の思うようには動かねと思うぜ。熊公もアメ公の腹なんど一も二も承知の上で、国の立て直しを謀ってるんだろうから。「無制限な解放は国の存立そのものが脅かされる。かの波に呑み込まれないようにしながら、如何に国を立て直すべきか」なんちゃってね。

夢酔  その場合ね、ソ連が一番望んでいるものは、経済援助と先進国の技術です。アメリカの場合国家戦略が露骨だし国自体余力がないから、それを主に日本とEC諸国、特にドイツに求めて来るんじゃあないですか。日本としてはソ連の資源と市場は垂涎の的なんだろうけど、アメリカの監督の下に置かれている。それで勢いEC諸国に注意が向けられる。「日本はアメリカの戦略にほとんど組み込まれている。それじゃあ、ある程度独立性を保っているEC諸国、それも、その中でも強大な力を持つに至るだろう統一ドイツとおちかずきになろう」てなわけなんだろう。ECとのパイプを中心にして、来世紀初頭までに、経済再建・軍備近代化等、国力を充実させてゆこうとしているんじゃないのか。

又夢  そこで注目してるのが日本式国家統制型資本主義。「日本は純粋な資本主義国ではない、国家の統制の良くいきとどいた社会主義的資本主義国家だ」、てなわけで今一所懸命に、市場を部分解放した時のコントロール方法を研究しているそうな。

夢酔  アメリカとしては、日本を手中に収めるには、まさにその農産物に対する補助金や大店舗法などの、日本が行っている統制そのものが、一番目障りなんだろうがね。

又夢  ところで、「東欧諸国の民主化は、自由主義体制の勝利である」なんてうれしそうにいってるやからがいるが、オイラはちっとばかり違った見方をしてますぜ。その民主化運動てぇのは、ソ連のイニシアティブの下で始まっているよね。思うんだけど、それはソ連を体質的に強化し直すための第一歩だったんだな。前の大戦で勢力範囲を拡張したことはしたが、経済の破綻をきたしたため国家そのものを立て直さにゃあならんってんで、経済的な負担や民族問題の脅威をひきずってる東欧諸国をいの一番に切り捨てたかったんだ。これからも、今世紀末の混沌とした時期に立て直しをはかって体質を強化してよ、来世紀初頭の大いなる危機の時代に最終的な覇者となるためにだなあ、不必要なもの負担となるものは切り捨て、有用なものは極力自己の勢力化に繋ぎ止めてゆきますぜ、きっと。国家そのものにも自己保存の欲求があるはずでしょうからね。

夢酔  歴史は繰り返す、か・・・。今東欧諸国と呼ばれているあたりは、大国の恣意の下で翻弄されるという歴史が続いてきているんだよね。今回は、ソ連の「保護的」な強制から、巨大資本の「保護的な」搾取へ、ということなんだろう。ただ今の段階では大抵の民衆は、共産党の強制力にしか目が向かなかったから、その来たるべき「搾取」に対してまだ余り注意を払ってないみたいだがね。

又夢  以前の生活より相対的に良くさえなればってぇえ気持ちが強いんだもの、そんなことくよくよ考えてちゃあいられませんぜ。まあ、現在のEC諸国を中心とした巨大なヨーロッパ経済圏に組み込まれていくんだろうな。ヨーロッパも来世紀に向け、生き残り策を確実に推し進めているようですぜ。

夢酔  巨大資本の流入、膨大な人的・物的資源、古くからの伝統文化と高度な知的レベル、そして高い自立性、以上のことを考え合わすなら、来たるべき大ヨーロッパこそが来世紀を動かしていくことになるのではないか。

又夢  まあ、そういう戦略を立てているのは間違いありませんぜ。

夢酔  それに引き換え日本は、独自の戦略を持っていないし、又アメリカさんとの関係上持てないんだね。ただいいように操られるだけ。もうこの辺で、庶民一人一人が異を唱え始めないと大変な、それも取り返しのつかないことになってしまうね。

 

我等が取るべきは、常寂光土(ユートピア)への道

司会  それでは、世界全体の動きの分析はこれくらいにして、本論に入っていきたいと思います。私も先生のおっしゃるとおり、今の内に何とかしないと取り返しのつかないことになると思っているので、この「地球百姓ネットワーク」の世話人になったり、この対談を企画したわけなんです。本当に、今まで物を言わなかった百姓、更に国民の一人一人が、政治の表舞台に登場して言いたいことをどんどん言っていかねばならないし、時代もそれを要求してるんじゃあないんでしょうか。もう一部のスペシャリストに自由なる言論を任せていてはいけないと思います。現場の声を直接ぶっつけあって、我々自身の力で自らの道を切り開いてゆかない限り、日本に未来はないでしょうから。

 そこで、一百姓または一庶民の立場として、ここで両先生に自由なる言論の火蓋を切ってもらいたいと思います。前に先生は「今の農民には夢がない、コメ自由化阻止の運動も今一つ的を得ていない」といった発言をなさいましたが、両先生の御考えをここで全面展開して頂けるようお願いします。

夢酔  農民に欠けているのは、将来の展望と「夢」だね。と、言ってもだね、算盤勘定のことをいってるんじゃあないよ。己のなりわいに対して誇りを持ち、万物と共生しながら何の憂いもなく生き甲斐をもって農業に従事出来る常寂光土、そんな理想社会実現への夢なんだよ。つまりね、社会そのものを根底から変えない限り農民に未来はないってこと。それがだね、大抵の生産者・農業団体なんかは、食管制度の維持・コメ自由化阻止を最終的な勝利目的として考えてしまっているんだ。これでは、たとえ現状を変えないことに万が一成功したとしてもだね、依然として農家は、この工業優先の現経済システムの中で安楽死を待つしかないんじゃあないのかい。農家の保守性そのものが自らの死を招いているといっても過言ではないんだね。

又夢  でもですぜ、その保守性によって、百姓は長い間生き延びてこられた、というのもまた事実なんじゃあありませんかい。

夢酔  確かにね。でも、現在のような事態に至っては、今までのようなことが果たして通用するだろうか。政府そのものが農家を見捨て、安楽死させようとしているんだからね。もはや政府のいいなりになっている必要はないんじゃあないのかい。いくら自民党政権がアメリカに対して忠犬ポチ公だからって、それじゃあ農民も忠犬ポチ公として自民党農政の下で安らかに死を迎えなさいなんてこと、どうしてそうやすやす受け入れることができるんだい。

又夢  確かに。主人はオイラたち百姓を見捨て、その上「死にな」って迫ってきたんだな。それでも尾を振って従うとしたら、それは忠犬の性と言うしかないんだろうな。

夢酔  でもね、農民全てが忠犬ポチ公ってわけじゃあないと思うよ。中にはキバを隠し持っているオオカミもいるだろうし。きっと主人の喉笛噛み切ろうとして、機至るのを待っている農民も、少なからずいるにちがいないよ。

又夢  オイラも忠犬ポチ公で終わるのは御免ですぜ。といってもオオカミほどの胆力は持ち合わせておりゃしませんから、まあ、ネズミってえところだ。「窮鼠ねこ(主人)を噛む」ってえやつだよ。

夢酔  いや、大地に根をおろしている百姓だからこそ、窮地において鬼となり、国の一つや二つぐらいひっくり返すことができるんじゃあないのかな。時代が変わる時、そこに巨大なエネルギーが加わることになるんだけど、その時こそチャンスなんだ。歴史は世界再編成へと動き始めた。この不安と混沌の時期こそ、社会を作り直すのに適した時期ということが出来るんじゃないのかい。この過渡期の間隙を縫って、新しい経済システムを備えた新しい自治社会連合体を、この日本に実現することが出来るなら、第三諸国は「自然発生的」にこの動きに連動してくるかもしれないね。まず日本がやらなければ一体どこが、常寂光土をこの地球上に花開かせられるってんだい。

又夢  その「新しい自治社会」てえのは、とっつぁんに言わせると、高度な技術を駆使した農工一体のコミューンで、万物と共生し、強固な自給自足体制を取りながら、天変地異や大戦などの来るべき非常事態にも備えられるようなしろもの、つまり、「ノアの方舟」ってえわけなんでしょう。でもね、そんなことおっぱじめようとしたら、アメ公ともろに正面衝突しちゃいますぜ。

 

“梁山泊”の結成、そして更なる長征へ

夢酔  思うんだけれど、アメリカの戦略で唯一見落としているものがあるんだよ。つまりね、彼等は人間の合理性・経済の効率性のみを前提にしていて、非合理的な要素を充分には考慮してはいないんだね。彼等は合理的に考え行動するから、その基準を相手にあてはめてしまうんだ。でも日本民族は、ことのほか、この「非合理的」な要素を豊かに持っているんだ。確かに戦後欧米化の波が日本を覆い、その「非合理的」なものを罪悪視してしまっている今の日本の状態では、九分九厘その戦略の中で踊らされてしまっているといえるでしょう。でもね、今でも一厘のまつろわぬ要素が陰の部分で息づいていますよ。日本の豊かな伝統精神を受け継いでいる者たちが、全国各地で密かに出番がくるのを待っているんじゃあないんですか。その一厘を活動させることによって、どんでん返しが始まります。そうなると、アメリカの戦略にも破綻が生じ出すことでしょうね。

又夢  オイラ江戸っ子じゃあねえが、心意気だけは負けねえよ。一銭にもならねえことでも、命をも賭してやることも人間さまにゃああるんだい。この野郎、賊と化した志操ほど手に負えねえってこと思いしらせてやろう。とっつぁん、百姓だろうが経済難民だろうが、はたまた単なる脳天気だろうが、なんでもかまわねえ、賊と化した鬼どもを国の内外を問わず集結させ、オイラたちの桃源郷をこの全地球上に花開かせるための“梁山泊”を、まずは作りあげましょうぜ。

司会  それじゃあ是非、「地球百姓ネットワーク」にご参加の程を(笑)。ところでですね、コメに代表されるように、自由化の波は既に立ち始めて、まさに日本を洗い尽くそうとしています。単に反対運動をしているだけではもう押し切られるだけ、ということは目に見えてきました。その自由化の強大な波を消し去ることが出来ないのであってみれば、一体どの様にして活路を切り開いてゆけるのでしょうか。その点をお願いいたします。

夢酔  エネルギー保存の法則からいったらだね、現に存在するその波を、全くの無に帰することは不可能だ。少なくともこの宇宙の中ではね。で、あって見るならばだ、その膨大な力を利用せにゃならんということです。その力を利用して、新しい自治社会建設のための改造エネルギーに変換してしまうことです。つまり、相手の破壊的なエネルギーを創造的エネルギーに変換せしむる神法返し技ってえわけですな。大きな危機こそ裏返すなら、大きな好機と言うことができるんじゃあないんですか。

又夢  「災い転じて福と成す」ってえわけですかい。

夢酔  まず、更なる自由化の波を受けて賊と化した鬼が続々と現れてくるだろうから、それらと連携を取る必要がありますね。次に、自由化の中で日本が完全に自立性を失ってしまう前に、ある程度新しい理念に基づく理想社会建設のための基礎工事を済ませておかねばならないでしょう。前もって溝を切っておき、いざという時にその強大なエネルギーが、我々の理想社会建設に資する方向に流れるように準備しておくってえわけ。事態はかなり深刻になってるよ。中東情勢も、これからどうなるか分からないしね。もはや自由化阻止だけを射程範囲内に入れているような運動じゃあ先が知れてるね。また、大規模経営か小規模経営か、有農薬か無農薬か、化学肥料か有機肥料か、等の二分の論理で物事を論じあってる場合でもないんだよ。でも、ややもするとその二分の論理で色分けされてしまっているみたいだけどね。やっぱり、照準をそれ以上のものに合わせるんだったら、お互いに相手の立場を尊重し協力しあっていかないとね。色んな個性と技術を持った人達がだね、それぞれの欠点をカバーし利点を活かしあってゆけるなら、これ程強いものはないんじゃあないの。お互いに補強し合えるからね。

又夢  こまけえことあまりにも厳格にやられちゃあ窮屈でいけねえ。地球全体が病んでいるってえ時によ、完全無農薬の自然食かどうかなんてぇ話、場違いもいいところだぜ。所詮は消費者のエゴってえもんだろ。問題は、この病んだ地球をどう立て直すかってことに帰着するんじゃあないのかい。地球を食い潰そうとしている現在の経済システムを、如何に転じて新しい理念を持った桃源郷にしてゆくかってえ。そこんとこで統一戦線をはらなきゃあ。なあ、とっつぁん。長征は始まったばかりだぜ。ところで、「理想社会の基礎工事」っていやぁ、火の国九州の小郡の里で、「クローバー草生米麦栽培法」に成功し、その秘訣を分析しきった人間がいよいよ出できたみたいですぜ。それによって主食である米麦がよ、農薬を使わず安全に省労力でしかも大規模に出来てだね、それに外国産のもののようにポストハーベストの心配もねえってぇことで、自由化に対応する上でも、日本のこれからの米麦栽培の主要技術になろうってぇえしろものですぜ。

夢酔  その農法には、色々な人が取り組んできてね、ほとんど失敗していますよ。もしそれが誰にでも容易に出来るとなると画期的なことだね。

司会  このことと「基礎工事」と、どういう関係があるのかもう少し詳しくお願いします。誰にも出来るとなると、所詮現経済システムの中では、金儲けの為だけの手段となってしまいませんか・・。

又夢  その農法には幾つかのポイントがあるみたいだなあ。それをちゃーんと抑えておかねえと失敗するってえことだから初めの内は誰にでも出来るってえわけじゃあないの。だからこの点を利用してだよ、志操のしっかりした者達のみにこの技術を体得させてゆけるとしたらだよ、少数でも大規模に展開して、徐々にその「基礎工事」を準備してゆけるんじゃあないのかい。御国の政策も少数精鋭の大規模化なんだから、順風満帆ってなわけさ。ただね問題は、如何にその精鋭たちを掘り起こして、全国的なネットワークを作ってゆけるかってえことなんだよ。もしこの技術を核としてだよ、志操のはっきりした者たちが手を取り合うことになるなら、オイラたちが目指している新しい自治社会連合体の「基礎工事」も、必ず一挙に仕上がってくることになるとオイラにらんでいるんだがなあ。

夢酔  さて、話しは変わるようだけど、新システムを打ち立てるには、どうしても旧システムを打ち壊さねばならないのは当然ですよね。その上大抵、打ち壊しの労力ときたら、ちょっとやそっとばかりのものではどうにもなりません、旧システムが正常に働いている状態ではね。ところが、今回の世界再編成の変動の中で日本は、国家レベルでの管理・統制システムを緩め、アメリカの主導の下で超国家的レベルでの管理・統制システムに入ることを余儀なくされています。この過渡期こそ、我々にとって唯一の、しかも最後のチャンスとなるんではないのかな。まあ、我々百姓としては、このように、新しいシステムを準備して待つことぐらいしかできないんだろうがね。

又夢  それにだね、機を制して、如何に世界再編成のエネルギーを誘導し利用できるかってえこともじゃあないのかい。ターニングポイントを其の場其の場で抑えてゆくってえ。

夢酔  それは大変なことだ。人事で出来ることも限界があるだろうし・・・。やはり、「人事を尽くして天命を待つ」しかないんだろうね。我々も霊界から応援することにしよう。

又夢  オイラも霊界の鬼ども引き連れて、霊界版“梁山泊”へと馳せ参じますぜ。

司会  そりゃあどうもごひいきに(笑)。さて、もうそろそろ紙面が尽きましたようです。今回は誠によいお話を両先生より拝聴させていただき、本当に有難うございました。

(「百姓天国」第一集 1990.2.10 掲載)

 

 

つづく

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