な ぜ 自 給 組 合 な の か

自給組合準備室・森本

96.1.15

 


 

▼歴史的背景

全世界での東西冷戦構造の崩壊、そして国内では55年体制の終焉を迎え、今や巨大化し独占化した資本力のもとで、政治・経済・文化等全般にわたって「新世界秩序」の土台が、国連・IMF・WTOなどの様々な国際機関等によって構築されつつあります。

 すなわち、その世界統治機構は、巨大な資本力を持ち、国連組織等を使って、食糧・エネルギー・情報等を管理し、各国の政治家や企業、知識人、宗教家、そしてその帰結として軍隊さえも操るようになってきています。

 その「新世界秩序」構築の強力な推進力が、今全世界を覆っている国境のない「自由」な市場経済です。

 日本でも、コメの自由化を初めとした貿易の自由化、そして金融の自由化、規制緩和措置等が進められ、経済面でも大きく「新世界秩序」に組み込まれつつあります。国際分業が前提となっているその「新世界秩序」の下では、国際競争に勝てない国内の非能率的・不経済的産業、特に地域の基本産業である農林漁業は切り捨てられて、地域の経済・自治・文化・環境などは、ますます自立性を失い荒廃していきます。

 ところでこのような状況下で国内では、自由化後の生き残り策として有機農業が驚くほど注目を浴び出してきていますが、しかしそのことを喜んでばかりはいられそうにもありません。何故なら将来、生産・加工・保存・輸送技術の進歩とその海外移転により、国内産のものより高品質で安価な、その上ポストハーベストの心配のいらない安全な「商品」が、海外から怒濤のように押し寄せてくることも考えられるからです。

 経済効率最優先の経済システムの中で踊らされ続け、円高操作の後に経済大恐慌ともなれば、気がついた時にはペーパーマネーという紙屑の山と廃れた産業技術、そして全国には担い手のいない荒廃した故郷の田・畑・山河のみ・・・、ということにもなり、そうなれば、人口増、耕作地面積の減少と単位面積あたりの生産量の頭打ち、冷害・旱魃等の天変地異、地域紛争の激化、等々が加われば、近い将来かならずや国内の大多数の人々は、飢えに苦しむことになるはずです。

 そのようなことになる恐れの中で、何故いま農(農林漁業)なのか、そしてその基本的な第一次産業を土台として、今後どの様なシステムを新しく地域社会の中で持とうとするのか、現代日本に生きる私たちにとって、差し迫った重要な問題として鋭く問われているのです。

 

▼革命の諸実相

 一般的にカクメイとは、既成の秩序、既存のシステムの急激な変革という意味で使われていますが、如何に国家や社会秩序を新しいシステムのもとで創出しても、本来の革命の主体であるべきいのち(具体的には人間、動植物、大地、河川・海等々の魂)そのものが汚され抑圧されていては、その「革命」は反革命というべきです。

 カクメイとは、表意されている通り、いのちを革めることであり、いのち(魂)の真正な発現を意味します。従って、そのような場を私たちの地域社会の中に確保できるよう、新しい秩序とシステムを準備していかねばならず、そのことが押えられていなければ、制度をもって制度に替え、権力をもって権力に替える式の「革命」が続いてしまうことになります。以上のことを踏まえて、カクメイの諸実相を展開してみようと思います。

 まず「存在」レベルでは、存在そのものが否定されようとしている魂にとっては、存在しようとする意志そのものが革命です。従って私たちは、人間の生死のみでなく、自然破壊・環境汚染等によって存在そのものが危ぶまれている山・川・海・植物・動物の場合においても、彼ら自身のあるがままに存在しようとする意志に依拠せねばなりません。

 次に「生存」レベルでは、人間及び動植物は、それぞれ個々の有機体を維持し成長させようとしますが、そのための必要な自然環境・社会環境・食糧・住居・エネルギー等を求めることそれ自体が革命であり、私たちはその正当な意欲に依拠せねばなりません。すなわち、動植物にあっては、生きのびながら次の世代を守り育てられるのに充分な自然環境が必要です。人間においても同様ですが、高度な文明を持つようになると、それなりの社会環境・技術・エネルギーが必要になってきます。

 「性的」レベルでは、種の保存がテーマとなっていて、子孫を残すことが革命につながると言えます。しかしながら人間の場合、血統や持ち物ではなく、それぞれ自身の神格にふさわしいパートナーと結ばれようとすること自体が革命となり、私たちはその意欲に依拠せねばなりません。

 「知的」レベルでは、人間界において精神活動を発達させようとする意欲が強く発現されてきます。それは生存のためのみに使われていた知性が、芸術的創作行為にも仕える程発達してくるからです。そのような条件の中で、地域の歴史が語り継がれ、精神風土となる伝統芸能・文化が次代に受け継がれていきます。すなわちそのような地域文化・芸能の開花・充実そのものが革命といえます。

 最後に「霊的」レベルでは、「見えざる世界」との交流がテーマとなります。神性を付与されて、この世に生まれてきた人間にとって、「見えざる世界」はもうひとつの実在する世界です。万物に魂を認め、精霊と会話し、祖先の霊を祀る、といった行為は、たとえ唯物論的な生命観・宇宙観が強要されようとも、人間が存在する限り必ず続きます。

 ところで、その「見えざる世界」の中にもさまざまな世界があり、革命の本当の意味である「魂の真正な発現」という観点から論ずるなら、それぞれの魂に持たされているイデア的神格(親神様)からの声ならざる声を聞き取り、親神様に導かれて、己の星に従いこの世における己自身の使命を全うすることが、革命の成就ということになります。

 

▼地域協働社会[地域自給圏]

 以上の革命の諸実相に照らし合わせながら、次に私たち人間自身が希求する地域社会のイメージを描いてみたいと思います。

 まず、この生命宇宙の中で生成しつつある魂は、それぞれお互いに支え合って生きているのであってみれば、自他を区別し、己自身のためだけにそれぞれのレベルの革命をなし遂げようとしても、それは適切ではありません。人間が存在していられるのは、それを支える太陽・大地・空気・水・動植物が有るからで、それらの自然環境を破壊しながら、己の欲のみを助長させているのは革命ではなく反革命です。

 山・川・草・木を含め、一切の魂がそれぞれの自性に従い「真正な発現」ができるよう、人間は己のライフスタイルを改めて無闇な物欲を抑え、そのエネルギーをそれぞれの神格の発現に向けなければなりません。そのことによって初めて人間は、再び万有の魂や精霊たちと感応し話し合うことができるようになるでしょう。

 その次元に立てるなら、人間が希求する社会とは、すべての魂と共生できる社会であり、すべてのいのちを活かしあえる場でなくてはなりません。それは宇宙の理法(生命原理)に則った社会であり、地域の自立と自給を土台とした農・工一体の地域協働社会、すなわち地域自給圏(ローカル・ガバメント)になるはずです。

 具体的には、生存に必要な基本的な食べ物・資材・機械等は、できるだけ地域内で生産・加工・流通・消費するようにし、余ったものや特産物等をお互いに他の地域自給圏と融通し合います。そして必要な研究・教育施設、医療・福祉施設、情報網、エネルギー等々も地域にふさわしい形で「自給」できるよう準備し、特に地域社会が受け継がれていくためにも、若者たちが出会え、生きがいとなれるような場(研究・教育センター、情報・文化センター、福祉・ボランティアセンター、研修施設、交流会等々)を、地域内に幾つも作り出し充実させていかなくてはなりません。また、新しい生命観の下での共同作業の機会(ボランティアも含む)を、多くの若者たちに与えてあげる必要があります。

 以上のように地域の生活者が主体となれば、それぞれの村を核とした産土協働体にふさわしい地域独特の文化や芸能を育むことができます。また自然と感応し、それらの魂と会話することができるようになれば、それぞれが地域の霊峰や聖域をご神体として祀って地域の精神的支柱となし、自分たちの地域協働社会の安全と弥栄を祈るようにもなるでしょう。

 全国各地、そして更には全世界各地に、そのような自立した地域協働社会が生まれ、様々な土地の神々のイワサカが築かれるなら、全世界にそれらの光のバリヤーをカナギ・スガソに結びめぐらせることにより、新しい地球社会が現れて来るでしょう。すなわち、既存の国家連合体である国連ではなく、自立した地域自給圏を単位として、それらが緩やかに連合し合ったグローバルな連合(地球連合)となります。

 その地球連合においては、各地域自給圏の主権的自治権や自給経済システム(食料・エネルギー・教育・医療等々の自給システム)、そして独自な芸能・文化・宗教等が保証され、相互に尊重され合うことになります。

 そのような地球社会が現れるなら、それぞれの産土協働社会では、土地の神に守られ育まれながら、それぞれの魂は己の神格に従って最大限活かされ自己実現できるようあらゆる機会において配慮されます。特に教育においては、己の神格(親神様)に注意が向けられるよう配慮され、それぞれの絶対我に至るよう導かれます。

 そこでは、生成界に唯一絶対なる最高神を捏造し、その偶像を礼拝するようなことはありません。また、山川草木・動物・人間などの一切の魂は、それぞれが各々異なったイデア的神格を持った神性な存在であり、分かつことのできない大きな生命宇宙体の一部分であることが通念となっているでしょう。そして信仰といえば、命を育む大地の神々が、それぞれのイワサカに祀られて各協働体の母神となり、その上でミコトモチになった者達が、それぞれの親神様とその属する神界の大親神様を祀ることになるでしょう。

 

▼自給組合の存在意義

 今まで全世界において、地域レベル・全国レベル・地球レベルで、さまざまな運動があったし、現在もあるし、将来においてもあるはずですが、今の激変の時代にこそ、新しい代替社会を希求しているすべての運動体に有機的に回路を繋ぎ得る、トータルな戦略を提示しなくてはならないと思います。

 さまざまな色を持ち、個性を持った運動体・個人が、それぞれの色・個性を打ち消し合うのではなく、活かし合っていくのでなければ、物事は良い方向には進まないでしょう。

 希求すべき代替社会のイメージは、個人的意見ではありますが、食糧・エネルギー・教育・文化・政治等を、自らの力で「自給」していく自立した地域自給圏(地域協働社会)と、それらのグローバルなネットワークという形になります。それには、グローバルな食糧戦略のなかで崩壊しつつある各地域の生産基盤を、いかに立て直していくかが当面の最重要な課題となります。

 この点に関しては、消費者団体や流通業者の方が意識的に動いているようですが、各地域の生産基盤に深く根差していないため、地域(村)をどうしていくかという視点は希薄で、「国内自給」を唱えながらも、心は事業拡大にあるものが大多数ではないでしょうか。

 地域に根差した生産者と消費者、即ち生活者自らが自覚的につながり合って、地域的な基盤を再構築していかねばなりません。

 そのような意識を持った団体やグループ・個人が全国各地に現れて、それぞれの活動を進めていますし、将来その数も飛躍的に増大していくものと思われます。そこで、ある程度の交通整理とネットワーク化が必要になってきています。

 生産者同士が、消費者の獲得をめぐって競争し合うのはある程度やむを得ないでしょうが、それぞれの「地域自給圏」構築のためにいかなる面で競争し、またいかなる面で協同し合っていけるか、まず理念を立て戦略を練った上で交通整理していくことが必要でしょう。そして次に、理念を共有するそれぞれの団体・グループ・個人が、その戦略の中で何らかの形(情報や物の流通、人の交流等)で協同し共闘し合えるよう準備していくことが必要です。

 以上のような観点から、そのような体勢を形成する土台として『自給組合』を呼びかけ、具体的な動きを始めています。(この『自給組合』は、そのネットワーク化の導入部、旗振りとして機能させ、全国各地の理念を共有する同じような動きに関しては、それぞれ各地域の主体性と責任のもとで、別々に立ち上げていって頂く。また差し当たって、それぞれの活動の名称も統一する必要はない。)

 

▼『自給組合』とは

 全国レベルで同時進行的にそれぞれの地域自給圏を築き上げ、食糧危機の時代に備えて自前の食糧安全保障体制を準備しながら、地域社会を私たち自身の手で主体的に立て直すために、この『自給組合』を提案します。

『自給組合』の趣旨 この組合は、生産者・消費者が何らかの形で共同して生産・加工・流通に参加し、共に生産物・加工品・資材等に対して責任を負いながら、それぞれの地域自給圏を準備していくことを目的として結成する。

組合員の範囲 生産・加工・流通・消費にわたる全ての分野において、『自給組合』の趣旨に賛同して頂ける個人・グループ・組織・団体・企業を組合員とする。個人・グループだけでなく、農協・漁協・森林組合・生協・学校・小売店・量販店・企業等々にも呼びかける。自覚経済システムに一挙に移行させるのは無理な話なので、現在の経済効率最優先の市場経済システムから徐々に移行させる必要があるが、それには、それぞれの組織・団体内に「産直クラブ」や「自給生産者・消費者部会」等々の自給を進める部門を設置し、徐々に拡張させて、それぞれの地域の『自給組合』を準備して頂くようにする。

取り扱う品物の範囲 情報誌及び組合員の農産物・加工品・資材・機械等。自給組合では、農薬や化学肥料も使用を認めるが、より安全なものを指定し、その量も徐々に減らすよう努力してもらう。また、それらの使用の有無・程度に従ってランクづけし、表示するようにする。次に、円高や産業の空洞化の波に翻弄されている企業の方々にも、この自給組合に参加して頂き、組合の趣旨に合った我々の生活に必要な機械・生産資材・生活物資等も取り扱うことにする。

『自給組合』の商標 自給組合員の農産物・加工品・資材・機械等であることを明確にさせるために独自の商標を作り、組合員にその使用を認める。商標の使用を認める代わりに、自給組合ルートで流通した金額の数パーセントを『自給組合』に入れて頂く。その資金を事務・宣伝・ルート開拓等々の費用に充て、更にはそれぞれの地域自給圏創出に必要な、啓蒙・文化・社会・自治活動等を補助するようにする。

 

▼『自給組合』南関東甲信越の場合

 まず、南関東甲信越を一つの大きな自給圏とし、生産地から余剰生産物を東京などの大消費地に流す。勿論、首都圏の消費量を関東甲信越だけで賄うことはできないので、北関東・東海・東北・北海道等、全国の経済圏からもそれぞれのルートを作って頂き、生産・加工物を流す必要がある。

 このようなシステムをとりあえず採るのは、現実問題として食料生産地(村)と大消費地(都市)とが歴然として存在し、また生産物の偏りもあるので、小さな地域単位内だけでは、生産・消費のバランスのとれた自給システムを整えることは難しいからです。しかしながら、基本的にはそれぞれの地域内で、食料を初めとして教育・文化や医療そして政治などを「自給」していく方向で準備していかなければならないと思います。そのような小さな地域内自給経済圏を全国各地にたくさん準備していく一つの切り口として、ひとまず大都市をも巻き込んだ広範囲な地域自給圏を設定し、自前の食料安全保障体制を作っていくべきだと思います。またそうすることで、都市崩壊が訪れる時、それぞれの経済圏の物流のパイプそして人的回路によって、都市住民の緊急時の食料保全と避難先等が保証されるようになるはずです。)

◎情報の流通生産物・加工品には、生産方法・農薬等の使用状況等についての説明と生産者(団体)を記載するようにします。(生産者が個人的に消費者向けメッセージを付けても構いません)また、『自給組合』の理念や活動状況を、生産者・消費者双方に浸透させていくために、情報誌を出すようにします。

 この情報誌は価格を300 〜500 円に抑えて月刊とし、年間購読会員を募ります。そして書店ルートには回さず、『自給組合』の生産物・加工品と同じルートに載せ、農産物と同じ感覚で一般の方々にも買って頂けるようにします。この情報誌は、南関東甲信越ブロックの情報だけではなく、行く行くは全国各地での『自給組合』活動の様子なども扱うようにします。内容の特徴としては、特別企画以外は、地域内自給を進めるため、全国各地からの生産・加工・流通・消費活動の様子と、それらから派生する啓蒙・文化・社会・自治活動等の様子を取り上げます。その場合、生産者同士のネットワークをはかると同時に、消費者同士のネットワークも広げられるように工夫します。更に大事なことは、消費者が『自給組合』の生産・加工品及び情報誌を通して、直接生産者と交流・提携の機会を持てるように配慮することです。(生産者は年に一回ぐらいは援農や収穫祭などで交流の機会を作るようにします。)そのような交流・提携を通して、都市部の消費者が命の洗濯をしたり、第二の故郷として就農地を探したり、非常時でも安心して食糧を確保できる生産地を見いだせるようになれたらと思います。

 

▼自給組合をいかにして準備していくか

1.学校給食を核にして

 地域内の教育施設と直接提携し、それらを核として、地域の一般家庭の消費者を開拓すると同時に、生産者も掘り起こして、自給組合を充実させていきます。

 今後、輸入農産物の増加・経済性の追求にしたがって、子供たちの給食が農薬や添加物等で汚染された質の悪いものになっていくことを心配します。将来の地域協働社会そして日本を担っていく子供たちに、できるだけ安全で信頼のおける食材を供給することは、地域の大人の義務ではないでしょうか。まして子や孫がいる家庭では、重大な関心事です。また、医療の現場にあっても、対症療法的な治療方法に対して、日常食べる食べ物そのものから正して、病気を予防し治していこうとする動きも出てきています。

 以上のような現場では、食べ物を単なる人間の「燃料」、もしくは利潤追求の手段としての「商品」としてとらえている現在の社会の潮流とは、少しばかり違った場を準備できるかもしれませんし、また、準備しなくてはならないと思います。

 そのような場を準備するにあたって、以下の通りのことをトータルに把握しながら進めていくことにします。

教育施設等提携先の開拓と生産者の発掘

 地域自給経済圏内の教育施設を対象とする。(東京・神奈川・大阪等の大都市は全国各地の生産者団体と提携する必要がある。)更にそのような施設を核として、生徒の家庭・地域の一般家庭を組織する。また自給生産者組合員として、村や地域の生産者の方々にこの自給運動に参加してもらう。そして流通業者でなく、地域の生産者・消費者(生活者)が主体となって、流通を整備し、地域の協働社会を準備していく。

農法・技術開発

 生産者の方々には、極力不必要な農薬や化学肥料は避けてもらう。そのためにも、生産者グループで研究会を設ける。また、消費者グループの方々にもその技術や農法を知ってもらうため、参加する機会を設ける。

◎残飯処理と堆肥自給システム

 教育施設及びその近辺の一般家庭で出た残飯を堆肥化し、提携生産者グループの圃場に戻すようにする。

適正な価格設定

 生産者・消費者両者の話し合いで適正な価格設定をする。広告・包装等の省略、そして規格外品の取扱等で、無駄な費用は削除でき、また流通コスト・事務費等は極力低く抑えることができるので、安全で高品質のものが十分安く提供できるものと思われる。次に輸入農産物による価格破壊については、生産者(村)・学校・生徒の親達・地域(町)との話し合いで、行政機関に何らかの補助政策をお願いする。それが無理な場合でも、それぞれ負担を分担し合って提携を続けられるようにする。そのために、当事者の意識の啓蒙を進めておく。

◎交流の機会

 生産者グループの村で交流の機会を設ける。順調に進めば村と提携先の町との交流にまで広がるでしょう。交流の形として中心になるのが、親と一緒に生徒が参加する農業体験学習会。生徒の健全な精神を養うのに絶好な機会となるでしょう。親としても、子供の給食の食材となる農産物が、何処で何のような人達が何のような思いを持って何のようなやり方で作っているのか、直接知ることができる良い機会となります。また村の教育施設等にも参加してもらって、合同夏季合宿なんかもいいかも知れません。そのような機会を幾つも踏むことによって、都市部の大規模な災害や戦争から子供たちを疎開させる準備にもなると思われます。

相互扶助関係の構築

 子供たちを核として、村と町が互いに助け合い、全国同時進行的に地域自給圏を充実したものにしていくことにより、万が一の食糧危機の時でも、優先的に提携先の施設・家庭・町に食べ物を供給することができます。一地域の村が不作であっても、全国の自給生産者グループがその分をカバーするよう努力します。

新しい自治社会の創出

 以上の活動を通して結ばれる人的回路を活かして、経済効率至上主義的な社会とは別な、すべてのいのちを活かし合う新しい地域協働社会を全国各地に幾つも作り出し、やがては日本全体を新しい生命観の下で復活させます。

 

2.青空市(朝市・夕市)を核にして

東京・神奈川周辺

 首都圏にも流通のパイプを準備していくため、年に1〜数回程度、都市住民の支援を得て青空市を開くようにします。首都圏での店舗販売は費用がかかりリスクが大きいので、区・市役所主催の市を利用したり、定休日の駐車場・未利用地を借りて市民レベルで青空市を開くようにします。2〜3年目には特定地域に絞って定期的に青空市を開き、その過程で地域の消費者グループを組織していきます。同じようなことを北関東ルート・東海ルート等の生産者達にも呼びかけ、一緒に「自給組合」の土台を東京・神奈川にも築いていきます。そして充分見込があり必要性があれば、倉庫兼事務所兼用の店舗を準備していきます。

山梨県内

 自給組合準備会では、地域協働社会を基盤とした新しい代替社会を準備していこうとしていますが、甲府でもそのファースト・ステップとして、甲府南部(平和通り添いケーヨーホーム北にあるビバゴルフ駐車場一角約100坪)で、青空市(朝市)を週に1〜2回(土・日に)定期的に開いていこうと思っています。軌道に乗れば、同じ場所で駐車場も含め200〜300坪の敷地に、プレハブの常設店舗を設け、農産物・加工品・花・工芸品等の他にも、色々な思いのこもったものを販売する予定です。

 

3.ワーカーズコレクティブへのお誘い

 以上の運営を、ワーカーズ・コレクティブ方式でおこない、自給組合の理念に賛同するできるだけ多くの同志の方々に参加して頂きたいと思います。

 以上のような形で、県内の生産者(一部近県の生産者)と地域の一般消費者を組織し、ある程度軌道に乗れば、県内の学校給食に地場の野菜・米・果実・加工品等を入れられるように運動していきます。そして具体的に物が動き出す段階で、学校給食を担当したい人が中心となって、新しくワーカーズ・コレクティブを組み、事務・集荷・配送等の運営を独立した形でやっていくようにします。

 また、同時に学校や甲府市から出る残飯を微生物処理等して堆肥化し、地域の生産者の圃場に還元するシステムを準備していきます。具体的に動き出す時には、堆肥のリサイクルシステムを担当したい人が中心となって、新しくワーカーズ・コレクティブを組み、独立した事業として成り立たすようにします。

 また、首都圏に一定量の農産物・加工品を定期的に配送するようになる時、配送を担当したい人が中心となってワーカーズ・コレクティブを組み、小規模な事業体として独立します。

 また、情報を受信・発信する部門も準備していきます。チラシ・ニュース・雑誌・単行本の印刷・発行と、パソコンを駆使した情報網の整備とを進めます。ある程度形ができてきたら、担当したい人が中心となって、新しくワーカーズ・コレクティブを組み、独立した事業体として始めても面白いと思います。

 同じように、教育・福祉・医療部門、エネルギー部門、工作機械部門、農業生産・加工部門、そして新規就農者のための教育・研修部門、等々でも、担当希望者が中心となって事業化をはかっていくようにします。

 以上のような形で、地域で本当に必要なものを小規模であっても自前で準備していきながら、それぞれの部門が有機的につながり合い助け合って、地域協働社会(地域自給圏)を築いていきます。そして、全国及び全世界の同志の方々とお互いに協力し合い、地域協働社会連合体を作り、大都市を包囲していくようにします。

 したがって、大都市を前提とした中央集権的な情報や物流システムをとるのではなく、それぞれの地域が主体的に「イキイキと生活できる地域社会をどのように作っていくか」をテーマに、地域の規模にあった経済・自治・文化システムを、それぞれがそれぞれの立場で構築していき、緩やかにつながり合っていくことになります。

(※ワーカーズ・コレクティブとは、同じ志の仲間と共同出資し、やりたい事業を共同運営しながら、自分たち自身労働者としても参加し職場を確保するやり方をいいます。)

 

▼自給組合事務所の性格

 自給組合では、私たちの理念に賛同し協力して頂ける生産者・消費者の方々に、極力負担が少なく気軽に参加して頂けますよう配慮しております。販売拠点と倉庫機能を兼ねた事務所を設置していくのもそのような配慮からです。

 行く行くはその事務所を、パソコン等も使った情報の受発信センターと、簡単な人々の文化的交流の場としても機能させ、そして更にはその中で、各地域の象徴である霊峰や聖域をご神体として祀るようにもしたいと思っています。(既存の宗教や神社・仏閣・教会等のシステムとは違った、そしてそれらとは抵触せず共存できるシステムを準備します。)

 

▼おわりに

 それぞれの土地はそれぞれ異なった「気」を放っています。その特徴的な気が、それぞれの土地上に発生する生物群に影響を与え続けます。特に生まれ育った大地の気の影響は、魂の奥深くに残り表層部分を支えます。

 太古日本でも、原住民はそれぞれの土地の気を嗅ぎ分け、その気を強く受けた場所を神聖な領域として祀り、土地の神即ち産土神にたいする信仰は強かったのです。

 このような「土地の神々」の復権が、現代の天の岩戸開きの焦点となっています。太古神道、縄文神道の復活が急がれます。

 本来人々が生まれ育った土地には、それらが自給自足できる資源・環境が前もって準備されていたはずです。国家もなく王もなく、他を侵し侵されることもなく、平和裡に生活するのが天地自然の法則です。

 その土地に住むということは、その土地特有の気を受けながら、その土地で育まれた食べ物をいただき、地域の伝統的な文化環境の中で生の営みを続けていくということです。そうすることで調和的な営みがもたらされていたのです。

 武力で余所の土地を略奪してその土地の神を無みし、金で余所から食べ物を奪っていては、この地球を混乱させるばかりです。そのようなありさまでは人は、母神の恵みを受け取ることができずにただ滅びゆくだけです。今の経済システムの根本を正さなくてはなりません。

 単なる「国際性」に踊らされていてはなりません。地域に根差した上での国際的連帯でなければならないのです。

 それぞれの土地の神を掘り起こし、それらを祀って核となし、それぞれの「地域自給圏」を皆で築き上げる秋です。そしてそれぞれの地域性・民族性を認め合いながら、緩やかにつながり合って新しい時代を切り開かねばなりません。

 

惟神霊幸倍坐世

 

 

目次

ホームページに戻る