一厘の仕組(圃場編)

クローバー草生米作り2002

森本 優(02/08/15)

 


2001年10月6日〜9日

 米(コシヒカリ)収穫後、小麦の種(10kg/10a)を撒き、ロータリー機で軽く攪拌し除草。その後で、赤クローバーの種(500g/10a)を播種。その上から稲藁を振り、地表を被う。上田10a、下田12a。

10月14日〜15日

 10日から大雨が降り続き、下田では2〜3日間水が引かず、小麦・クローバーの種が腐り始めている。上田では排水が良かったので、小麦・クローバーとも芽を出す。仕方がないので、下田に関しては、排水用の溝を切り直し、小麦・クローバーのそれぞれの種を稲藁の上から播種し直す。

10月17日〜18日

 台風の影響で雨が降り続き、上・下田に水溜まりが出来ている。

10月20日

 下田で、後から撒いた小麦・クローバーの種が充分発根・発芽してくる。

 

2002年5月13日〜14日

 上田・下田に小麦・クローバーの上から籾種(コシヒカリ)を10a当たり7〜8kg程播種。その後で、ロータリー機を入れ軽く攪拌。

5月15日〜19日

 曇り・雨の日が続く。

5月21日

 発根し出している。

5月24日

 藁の上の籾種は発芽せず。また直接地面に落ち適度な湿り気を受けて発根・発芽してきたものでも、ケラ・ナメクジ等の虫の食害に遭っているものが目に付く。

5月25日

 上田が乾燥してきているので、川から水を引き、全体的に水が行き渡った時点で、即、水を切り落とす。

5月29日

 上田で、クローバーが生えていない所に生えてきた籾苗が、スズメに抜かれているのを発見する。5メートル四方程やられる。クローバーが生えていないのは、秋に芽を出したクローバーが、冬期に隣の倉庫の影の中に入り、凍結死したため。上田・下田とも、本葉一枚目が出始めている。

5月30日〜31日

 風通しを良くするため、造林鎌でクローバーの葉を刈り払う。上田には、20〜30cm四方に1本、下田には15〜30cm四方に1本、苗が立っている。播種後、適度な湿り気を受けて発根・発芽してきたものが2〜3割、その内、鳥や特に虫の食害に遭っているものが過半数。特に畦道や畑の近くでは、虫の出入り口になっており、苗の本数は極端に少なくなっている。また弱い苗は、発芽しても途中で病気になって枯れていく。最終的に、ものになるのは全播種量の1割前後か・・・。

造林鎌でクローバーの葉を刈り払う(写真右中央には本葉を伸ばした苗が立つ)

6月4日

 一週間以上晴天で乾いているため、上田・下田に走り水。ヨコバイ・バッタ等の幼虫が籾苗の葉を食害し出している。籾種の発芽・成育にバラツキあり。

6月5日

 鶏糞を上田に60kg、下田に100kg程入れる。

6月7日

 上田・下田のクローバーを、籾苗の葉を刈らない高さから刈り払う。籾苗は本葉が2枚目を出し始めるころ。

6月8日

 上田・下田に水を入れ、湛水状態にする。一日に2〜3回水を補給し、常時、上・下田とも一定の水深に保つようにする。酸素供給をできるだけしないよう水漏れに注意する。

6月11日

 連日30度前後の暑さが続いているので、クローバーの腐食が進み、一部枯れ出している。籾苗の葉が目立ち始める。

根腐れをおこし、姿勢を崩す赤クローバー

6月12日

 クローバーがかなり弱ってきている。上田のクローバーより下田のものの方が弱り方が大きい。下田の方が少しばかり水深が深いため。

6月13日

 下田は早朝に、上田は深夜に、それぞれ給水を停止し、その後は、自然に水が引くのを待つ。

6月14日

 下田では夕方頃地面が露出。上田ではまだ低い土地は水面下。籾苗は、生き残っているとしても、か細くひ弱なものが多い。こういうものだとは知りつつも、やはり心臓には良くない。また、苗の葉に対する虫の食害が目に付く。更に、鳥が虫を捕食するために田に降り立ち苗を倒している。この農法は、あまりにも悲惨な場面を目の前にしなければならないので、簡単には普通の農業従事者には受け入れられないだろう。根腐れをおこしたクローバーは徐々に姿勢を崩して枯れていく。

落水後の様子(写真右は葉・茎の食害の様子)

6月17日

 苗が日増しに大きくなってくるが、バッタ・ヨコバイ等による葉の食害が去年より酷くなっている。連日30度以上の日が続いているためか。全く食べられていないものはごく少数。葉を切られる程度ならまた新しい葉が出てくるから心配ないが、茎を食われてしまうと枯れてしまうのではないかと心配する。

6月20日

 バッタ・ヨコバイ・夜盗虫等の葉・茎の食害が進み、残った苗が次々と姿を消す。葉は食い落とされ、茎も至る所に食害の跡があり、悲惨な状態となってしまった。腸が捩れる思いをする。特に下田でクローバーが残ってしまった所が酷い。温暖化傾向が進み、バッタ・ヨコバイ等の孵化の時期が早まったためか、今年の被害は異常である。部分的に2時間ほど補植する。

6月22日

 上・下田に4〜5時間補植して回る。

6月27日

 葉・茎の食害にあった苗が、新たな葉を出してきている。強い生命力である。

茎から葉を出している苗

6月下旬、分ケツし始めの頃

7月14日

 分ケツ数、平均8本前後。上田に雑草が目立つ。土が露出した上、水深が浅いため。一方、下田では、ほぼ完璧に近く雑草を抑えている。

7月中旬、穂数が充分とれる

8月1日

 分ケツが、多いものでは30本前後にまで達している。30cm四方程に1本苗が立っていた部分が一番成績が良い。反対に、苗が過密状態に立っていた所では、充分分ケツが取れず、茎も細くて、明らかに収量が下がることが推測される。

8月14日

 穂が出始める。赤米の穂や稗を根から除く。特に赤米は脱粒性が高く、一度種を田に落とすと、手に負えないくらい繁殖力が旺盛なので、いつも手を焼いている。

 


 

一厘の仕組

 

 すべての魂には仏性が備わっている。しかしそれとは別に、立て替え立て直しのための一厘の種は、いつの時代においてもこの世に下されている。そしてその内のあるものは、道に落ちて鳥に食べられ、あるものは岩地に落ちて発芽せず、またあるものはイバラの上に落ちて虫がそれを食べてしまう。そして、ごく一部のもののみが良い地に落ち、適度な湿り気を受けて芽を出すことができる。

 しかし、芽を出すことができたとしても、その後、鳥や虫の食害に遭うものも相当数に上るので、最終的にまともに成育するものは、そのごくごく一部に止まることになる。

 しかも、そのような様々な誘惑や危険を乗り越えて生き残ったとしても、立て替え立て直しが必要となる時期に巡り合わなければ、魔草・醜草に埋もれたままの状態で、不遇な一生を終わることになってしまう。

 だが、一度、立て替え立て直しの時期が到来するなら、適度な湿り気を受け発芽し、本葉を伸ばし始めているものは、己に課された役割を果たすために、根腐れを起こし始めている魔草・醜草の間から姿を現し、急速に活動し出すことになる。

 ところで、一厘の種として蒔かれたものであったとしても、発芽したてであれば、その激動期に耐えられず、枯死してしまう。また、たとえ生きのびたとしても、根を傷めてしまうため、充分な活動はできない。

 従って、立て替え立て直しの時期において、本葉を充分伸ばしているものたちのみが、その神劇の役割を担うことができ、その数は、本当に限られたものとならざるを得ない。(全世界で数千人程度の規模か・・)

 

 30cm四方程に苗が1本立つ場所が一番成績が良いのは、過密状態では健全な成育・発展ができないからである。人間界においても、健全な成育を促し全人間的な幅を持って生を全うさせるには、自然との共生の中で、身体的にも精神的にも糧となる一定のゆとりが必要である。過密状態の大都市は解体されるべきであり、地方都市を核とした地域協働社会の構築が求められる。IT技術の発達により、そのことは充分可能であると言える。

 

 葉・茎が虫の食害に遭ったとしても、根さえしっかりしていれば、やがて茎から葉を出し、成長していける。大切なのは、個人的にも社会的にも、急激な環境の変化にも充分対応できる強い根を持つことである。利潤追求が至上命題となっている現在の日本社会では、それを支える根も、物欲に囚われた柔軟性を欠くものとなっており、物欲が満たされないと、すぐ根腐れを起こしてしまう弱い性質のものになっている。

 しかし、それぞれの魂を支える根は、決して物欲を満たすためにのみあるわけではない。健全に成育し、花を開き、そして実を結ぶために、即ち、いのちの革命のためにこそある。私たちも、本来あるべき姿に戻るためにも、根を大地にしっかりと張る必要がある。

 

 赤米の種が圃場に落ちて困るのは、赤米が混入したり繁茂したりするからだけではなく、赤米の遺伝子が育成種の遺伝子に入り込んでしまうという点にもある。もし目先の利益のみによって遺伝子操作がなされ、毒性を持たされた籾種が蒔かれ育てられるなら、やがて在来種の遺伝子も汚染されてしまうことになりかねない。そのようなことを防ぐためにも適切な規制は必要である。

 ところで、一厘の種・因縁の身魂といっても所詮人間であり、物欲の奴隷となることもある。そしてある者は、自身が付けた物欲によって毒された籾種を回りの土地に落とすこともあるだろう。そのため、そのような種を除く必要が生じてくることにもなるのである。

 

おわり

  

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