モンサントの対日戦略と今後の運動方針

 

 

森本 優(01/9/29)


 先日、甲府市の小瀬スポーツ公園武道館で「遺伝子組み換えイネを考える講演会」がありましたので出席してきました。講師の方は(遺伝子組み換え食品いらないキャンペーン代表)の天笠啓祐さんでした。

 

 講演のなかで、遺伝子組み換えイネを開発しているモンサントが、既に日本国内で愛知県農業試験所と協力して、除草剤(ラウンドアップ)耐性イネを試作中であるとの話を聞き、いよいよ来るべき時が来たかという思いでいっぱいでした。

 愛知県では乾田直播きでイネを作っているとのことで、水に弱いラウントアップを有効に使える条件が整っていたようです。

 私も乾田直播きで15年近くイネを作り続けてきましたから良く分かるのですが、乾田直播きでも一番難しいのが除草対策です。それが苗の段階でラウンドアップ等の除草剤によって、他の草を根絶せしめることができ、除草剤耐性のイネのみが残るのであれば、これほど楽なことはなく、徹底した省力化と大規模化が可能となるはずです。

 このことに関して、生産者及び消費者の方々はあまり危機意識を持ってはいないようです。日本は水田がほとんどなんだから、ラウンドアップなど使われるはずがないと・・。しかし、乾田直播きの場合も、ほとんどの場合はイネの成育に合わせて水田に移行しているはずです。要するにポイントは、除草剤を使う時に乾田状態でありさえすれば良いということです。

 確かに、今の日本では水田に田植えをするという稲作体系が主流で、ラウンドアップ等の畑作用除草剤の登場の余地はないようにも思えます。しかし、苗作り、耕耘、代掻き、田植え等、といった作業の手間、そして担い手の高齢化・減少といった条件下では、今後は「乾田直播き・ラウンドアップ一発」が時代の要請にあった稲作体系の主流とならざるを得ないでしょう。特に大規模化が図れる穀倉地帯では、生産主体が企業に移行するようになれば、効率化・省力化・大規模化の要請から、必然的にその要請に合った稲作体系が追求されるはずです。もちろん、乾田地帯ではの話ですが・・。

 しかし、そのような除草剤耐性イネが全国各地に作られるようになると、そのイネの花粉と通常のイネの花粉とが交配し、生態系に計り知れない影響を及ぼしかねません。また、そのような米を食べ続けることによって、どのような影響が人間に現れてくるかに関しても、なんら確かなことは分かっていません。

 このような懸念がありながら、厚生労働省では耐性イネの試作を認めており、2〜3年後には耐性イネを食糧としても認可するだろうとの話も聞きます。

 モンサントとしては、除草剤と種子をタイアップして売り込もうとしているのでしょうが、地域の生態系が破壊され、私たちの生命・身体に危害が及ぶようであってはならないはずです。

 

 話は飛びますが、ニューヨーク・ワシントン同時多発テロの報復ということで、ブッシュ大統領は世界の「自由」のために、世界主要国と歩調を揃え、アフガン侵攻を準備しているようですが、彼らの言う「自由」・「民主」とはいったい何なのでしょうか。

 私には、アメリカの権益そして世界主要国を主導者とした世界政治・経済支配システムをうまくカムフラージュするためのイデオロギーにしか過ぎないと思えてなりません。自らの権益・利益のために、第三世界の人々をその伝統・価値・宗教・慣習・生活等々から「解放」して「自由」を与え、再度、新世界支配システムの中に囲い込もうとして用いられているイデオロギーとして。しかも第三世界や絶対的少数者の真の自由を封殺する「自由」として・・。

 この世に絶対的な「悪」もなく、また絶対的な「善」もありません。アメリカが絶対的な「善」であり得ようはずはなく、またテロ組織が絶対的な「悪」であるとは言い切れないはずです。この新世界支配システムの巨大な力の前で、第三世界や絶対的少数者の人々が、守ろうとする伝統・価値・宗教のために、自ら自爆テロに走ったとしても、それは、不条理に押しつけられた「自由」に対して、自らの自由を求めた結果であるとさえ言えるのです。

 このような新世界支配システムによって、絶対的な「善」なり「自由」なりが押しつけられる限り、そして第三世界や絶対的少数者の自由になろうとする自由が封殺されない限り、テロを根絶することなどできないはずです。テロを根絶するためには、新世界支配システムそのものに終止符を打たねばなりません。それぞれの地域の多様性を認め合う万物斉同の世の中にしていかねばならないのです。

 

 話を戻しますと、モンサントもこの新世界支配システムの一つの現れですが、利潤追求のために世界各地域の生態系を乱し、人々の生活・生命を軽んじるようであれば、各地域の生活者は自らを守るために反抗するのは当然です。

 ただ、残念ながら国家レベルでは、大半が既にその新世界支配システムの中に組み込まれてしまっていますので、各生活者自らが知恵と力を出し合って対策を講じるしかありません。

 ところで、テロでは問題そのものの解決には至りません。私たちは新たな創造の種をこの混沌とした時代に蒔いておかねばならないのです。共産主義体制の崩壊後、資本主義体制が勝利したと一時言われていましたが、内部的な矛盾と世界的なテロ活動(世界戦争)により今の資本主義体制も徐々に崩壊してゆくはずです。

 しかし、その後に来る社会が、人々の自由になろうとする自由さえも封殺した、すなわち「テロを根絶した」徹底した管理・支配社会なのか、それとも別の新しい次元に至った社会なのかは、この時代の大転換期に如何に準備をしたかによると言えます。

 

 そこで、その一環として、モンサントの対日戦略を封じ、全国各地域に新たな創造の種を蒔くための策を提案します。

 モンサントの「乾田直播き・ラウンドアップ一発」による省力化・大規模化を、普通のイネでしかも完全無農薬でできるよう全国各地に数か所実験圃場を設け、そこで得られた技術を無料で公開するようにします。地域差というものがありますが、地域の特色を活かしながらも原理的な共通点を煮詰めるようにします。その過程の中で、自覚的な生産者及び消費者の育成とネットワークの構築を図り、更には地域協働社会の核作りを進めていきます。

 以上の構想につき、同一地域の農業者団体、農業協同組合、生活者共同組合等の団体が複数協力して取り組むことができれば効果的です。

 以上提案します。

 私が15年追求してきた農法も、乾田直播きによる省力化・大規模化を目的としたものなので、何らかの参考にして頂けたら幸いです。

 

 以上で終わります。

 

 

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