一厘の仕組(地域編)

国有地囲い込み事件経過報告その5

森本 優(2003/07/10)

 


平成14年(ワ)第××号 妨害排除・原状回復並びに損害賠償請求事件

 

原告 森本優

被告 I・K1・K2

 

準 備 書 面

 

平成15年7月7日

××地方裁判所民事部イ係 御中

原告 森本 優

 

 請求の趣旨を以下の通りに整理し直す。

 本件において問題となっているのは地役権侵害である。

 

請求の趣旨

 (1)「被告Iは別紙図面(妨害排除・原状回復対象特定範囲詳細図1.及び2.)において赤線で特定された範囲内の、泥揚げ部分にかかる自動販売機及び工作物を撤去せよ」、更に(2)「同被告は、高く塗り固められたコンクリートを、上記別紙図面において赤線で特定された範囲内約3平方メートル分撤去せよ」、との判決を求める。

「被告Iは80万円を、同K1は10万円を、同K2は10万円を、それぞれ原告に対して支払え」との判決を求める。

「訴訟費用は被告の負担とする」との判決を求める。

 

以上

 


平成14年(ワ)第××号 妨害排除・原状回復並びに損害賠償請求事件

原告 森本優

被告 I・K1・K2

 

甲 2 2 陳 述 書

 

平成15年7月7日

××地方裁判所民事部イ係 御中

原告 森本 優

 

一、要役地(××809から825)の利用状況

 昭和40年代の前半までは、水稲・麦。

 昭和40年の半ばから昭和59年頃までは、水稲・養蚕の桑。

 昭和60年以降は、水稲・トウモロコシ。

 

二、承役地に関する事実関係

 昭和50年代の初め頃、地方病対策として河川をコンクリートにする工事がなされ、従来水面であった部分も埋め立てられたため、昭和56年マイラー図面(甲1)に見られる森本の取水口部分は、橋の根元にまで移動させられることになった(甲9の図参照)。

 それにともなって、コンクリートの河川側壁から測った取水口がある岸側の泥揚げ部分の幅は、従来の部分と新しく埋め立てられた部分とを足すと、道路に面した所では約1.8メートル前後にまで達し、当時相当に幅の広い泥揚げ部分となっていた。

 昭和50年代の終わり頃から60年代の初めにかけて地籍調査がなされたが、その時に公共用地としての泥揚げ部分は河川側壁から約60センチメートル強にまで狭められ(現公図参照)、残りの公共用地としての泥揚げ部分は、正規の手続きを経たのかどうかは知らないが(国有地払い下げがなされたのなら、その部分に新たな地番が付くはずなのであるが)、被告Iの所有地として編入されてしまったようである。

 しかるに、被告Iの主張によれば、地籍調査の時に、その1.8メートル幅の泥揚げ部分を、河川の側壁ギリギリまで全部被告I自身が購入しているので、現公図に反映されているその60センチ幅の公共用地としての泥揚げ部分さえ、被告I側(取水口がある岸側)には存在しないらしい。

 確かに、座標地(甲17)や現公図(甲9の図参照)を見るかぎり、被告I側には泥揚げ部分が全くなく、対岸に泥揚げ部分が全部押しやられている。

 しかし、原告自身地籍調査の時に、両岸にほぼ同じ幅をとって、T1側には頭部が赤い杭が打たれ、被告I側にはコンクリート面に赤のスプレーで印が付けられていたのを目撃している。

 また、当時の地籍調査に中心人物として関与したT2氏も、「川の中心線を基準に測量がなされたのだから、被告I側の岸にもほぼ同じ幅の泥揚げ部分があるはずだ」との証言をしている。(甲2の1)

 そのため、測量し杭等で表示した地籍調査の初期の段階では、両岸にはほぼ同じ幅の泥揚げ部分が存在していたはずである。

 そこで、平成13年の夏の終わり頃、対岸地権者であるT1氏に、その件につき問い合わせた。

 T1氏の話では、原公図を確認しながら市役所若しくは公民館で調査票に署名・捺印をする地籍調査の最終段階において、T1氏の場合には、市の職員が調査票のみをT1宅に持ってきて署名・捺印を求めてきたので、原公図を確認することなく市を信用してT1氏は盲判を押してしまったとのことであった。

 その結果として、全く無自覚の内に両岸にあるはずの泥揚げ部分を、T1氏は全て引き受ける形になってしまったようである。(甲17)

 しかし、そのことが事実であるなら、原公図が示されず、また市役所若しくは公民館で署名・捺印が求められなかった点につき、手続き上明らかな瑕疵があり、その同意は無効である。

 それどころか、適正な手続きによらずに署名・捺印を求めてきた市の担当職員側と、村の地籍調査で中心的な役割を果たしていた者との、通謀による意図的、更には用意周到に準備された犯罪的行為が強く疑われるのである。

そして、被告I自身が、地籍調査の時に河川側壁ギリギリまで土地を購入した旨主張している事実も合わせて考えるならば、現公図の線引き前に既に被告Iとの間においても、泥揚げ部分を対岸のT1氏側に全部押しやり、河川側壁ギリギリまで公共用地を自らの所有地として囲い込もうといった内容の謀議が、隣接地権者であるT2氏との間でなされていたと考えるのが自然である。

 何故なら、T2氏は被告Iに840−2の土地を二十数年前に売却しており、被告Iと強い人間関係・利害関係を結んでいたし、また地籍調査に中心的人物として関与していたため、事実上現公図に影響を与え得る地位にあったからである。

 そのような謀議の内容を裏付ける事実として、地籍調査後すぐT2氏は、被告I宅に隣接する土地(840−1)において、河川に沿って河川側壁ギリギリにブロックを積んで測量時点では存在していたはずの泥揚げ部分を全部囲い込んでいる。

 過去の経験から、既成事実を作ってしまえばどうにでもなると考え、また万が一の場合にも時効取得の抗弁が出せるようにしておく必要もあったのだろう。(このような主張及び抗弁は、原告森本が今回の被告Iによる囲い込みに対して異を唱え出して以降、自治会の役員複数人から何度となく聞かされている。)

 ところで、本来公共用地としてあるはずの泥揚げ部分が地籍調査後囲い込まれ始めていることに危機感を抱いた母春代が、ブロックを河川側壁ギリギリに積んで泥揚げ部分を囲い込んだことに対して直ちにT2氏に苦情を入れたが、全く相手にされなかった。

 しかし、森本が苦情を出してきた事実は将来への不安材料となり、そのためT2氏は、自身の不正行為が暴露しないように、また暴露されても押え込めるように、それ以降人的囲い込みに意を尽くすようになったと推測される。

 森本が苦情を出してから、被告K2の妻××は、原告が畑の横で作業していたところ、畑で除草していた母春代に向かって、後継者がいないこと(それまで原告は一年の大半を東京で過ごしていたので回りではそのように受け止めていたのだろう)を揶揄した言葉を投げかけていたことを記憶している。

 また、被告K1の妻××は、同じ時期に、田で苗を補植している原告に向かって、農業で有名人になるつもりか(当地は市街化区域であり、早く農業を止めてしまえとの意味だろう)といった内容の言葉を投げかけ、原告をからかったことを記憶している。

 それらの言葉自体はどうでも良いことなのだが、時期的にT2氏を擁護するものとしていまだ原告の脳裏に記憶として定着している。

 因に、被告Iと同K1とは、若い頃より仲が良く、今では家族ぐるみでの付き合いをしていることは周知の事実である。

 

 その後、母春代は被告Iに対しても、森本が使用している取水口付近については、岸に立ち入ることができるよう、必要最小限度公共用地分は泥揚げ部分として立入可能なスペースを残して置いて頂きたい旨お願いしている。

 またT2氏にも、被告Iが泥揚げ部分を途中まで囲い込んできているので、取水口付近の泥揚げ部分は囲い込まないよう間に入って被告Iに話しをつけてもらえるよう再三お願いしている。

 しかし、それらの要請は、全く無視され続けた。

 平成6年、当時の自治会を通して、転落防止用の柵を市の負担で取水口の回りに設置してもらった。そして農事上の必要からその泥揚げ部分に出入りし利用していた森本が、柵の管理を任され扉の鍵を預かった。

 その柵の設置と同時期に、川での洗い等の作業をし易くするために、鉄板製の橋をこちらで設置した。しかしその橋も、2、3年後には何者かによって撤去されてしまった。

 そして4〜5年前(平成9年〜10年頃)、T2氏が久し振りに母春代の所に世間話をしにやって来た時(後に述べる通り、被告Iが取水口付近の泥揚げ部分も全部囲い込みたいと言うので、森本の様子を探りに来たのだろう)、母春代が取水口付近の泥揚げ部分の件につき再度立入可能なスペースを残しておいて欲しい旨話し、その約束を取り付けようとしたが、T2氏はただニヤニヤ笑うだけだったという。

 この時期から被告Iは、当該紛争地である取水口付近の泥揚げ部分にまで物置やブロック等様々な障害物を置き出し、徐々にその幅を狭めていった。その作業は毎年収穫後冬から春にかけて行われていた。

 その経緯を、平成13年6月22日にT2宅でT2氏本人から聞いた言葉から推測するなら、以下の通りとなる。

 すなわち、被告Iは、当該紛争地に駐車場等を設置したいので、約束通り残り取水口付近の泥揚げ部分も全部囲わせろ、との話を4〜5年前にT2氏に持っていったものと思われる。T2自身は自分の土地に接している泥揚げ部分を全部ギリギリまで囲い込んでいるのに、被告Iには森本のために取水口付近の泥揚げ部分は囲わず残しておけというのはおかしいとの主張だろう。

 T2氏自身には農事上の権利の存在が頭にあったようだが、農業従事者ではない被告Iにはそのことの意味が良く分からず、被告Iは自身の土地に接する泥揚げ部分全部の囲い込みを強く主張したようである。それは、甲2の1にある通り、T2氏が「村の慣習上、森本には本来農地に近い側の岸に立ち入る権利があるはずだから、Iが設置した自動販売機等を撤去させる権利がある」と発言したすぐ後で、「これでIさんも農事上の慣習的権利があることがやっと分かるだろう」との言葉が出てきたからである。

 さて、被告Iが当該紛争地の囲い込みを強く主張し、T2氏も地籍調査の時点で泥揚げ部分全部の囲い込みを確約していた手前、その主張を聞き入れざるを得ず、それ以降T2氏を中心にして意を通じ合った者等が共同して、被告Iによる取水口付近の泥揚げ部分の囲い込みを支援していった。

 役員の人事の掌握と利害関係人の結束(「国有地、みんなで囲えばこわくない」とでも言い表せば良いのだろうか、当地においては、河川の泥揚げ部分を囲い込めることは暗黙の了解事項となっていた)。そして森本を孤立させるための芳しからぬ噂。以上のようなやり方によって外堀を埋めていった。

 そして平成13年の春、被告Iは、堅固な工作物を設置して、当該紛争地である森本の取水口付近の泥揚げ部分を完全に囲い込んだ。(甲4の1,2

 ところで、その二か月ほど前の1月11日頃、当時自治会長であり現在は自治会顧問の役職にある被告K2は、原告森本と被告Iが取水口付近で小競り合いを演じた後に、ちょうど現場に通りかかったが、その時に、コンクリートを岸ギリギリまで打ち工作物を設置しようとしていた被告Iの行為に対して原告森本が苦情を入れたところ、原告森本及び被告Iの面前で被告K2は、当該紛争地は被告Iの所有地であるから、T2がやっている通り、被告Iも岸ギリギリまで工作物を設置してよい旨発言し、囲い込みを当然なものとして勧めている。

 更に同年6月30日の夜、河川の泥揚げ部分は自ら囲い込み堅固な工作物等を設置した者の方が優位するという当地××の「常識」の存在を強調し、その場で、当該紛争地は地籍調査の時にT2が被告Iに売ってしまったので、もはや泥揚げ部分はない旨の発言をしている。

 また、××農事組合長である被告K1は、同年6月27日に原告の依頼で調査に来た××市役所担当職員に対して、当該紛争地は被告Iの所有地であり、何ら不法占拠の事実はないとして、被告Iの囲い込みを積極的に擁護している。

 同年6月末日頃、取水口の回りに設置され森本が管理していた柵が河川に沿って3メートル程消失。22日の夜、T2宅に被告Iによる今回の囲い込みの件で相談しにいった際(甲2の1)、原告森本がT2氏に「柵の存在が泥揚げ部分の存在を証明している」との発言をしてから間もなくのことである。

 

以上


第三自治会会長 ×× 殿

平成15年7月10日

森本 優

 

 大変な御役目ご苦労様です。

 今回の訴訟諸費用の自治会負担決議の件につき以下の通り考えますので、一般住人に対する負担金を特別に徴収されるようなことがありませんよう、何卒再度ご検討頂けますよう御願い申し上げます。

 以下、訴状の様式に従って法律構成します。

 

自治会総会決議無効確認請求事件

訴訟物の価格 95万円

貼用の印紙額 8200円

 

請求の趣旨

 「平成15年4月5日のN第三自治会通常総会において決議された、平成14年(ワ)第××号妨害排除・原状回復並びに損害賠償請求事件の被告である元自治会長T2に関係する訴訟費用・弁護士費用等の負担は当自治会の負担とする、との部分は、これを無効とし、当自治会会員には本件負担金の支払義務はない」との判決を求める。

 

請求の原因

 上記の妨害排除・原状回復並びに損害賠償請求事件において、平成13年1月11日頃上記事件の被告T2は、同じく上記事件の被告であるIが、上記事件の原告である森本の地役権が存続している泥揚げ部分を完璧に囲い込むこと容認し、その後上記事件の被告Iは、二か月程かけて堅固な工作物を設置して、当該泥揚げ部分を完璧に囲い込んだ。(上記第496号事件の訴状、請求の原因3参照)

 この上記事件被告Iの行為は、不動産侵奪罪(刑法第235条の2)に該当し、自治会長の立場でそれを積極的に容認した上記事件被告T2の発言は、同罪の幇助に該当するものである。

 ところで自治会は、規約に定める目的の範囲内において権利を有し、義務を負うものと考えられるから(地方自治法第260条の2参照)、その目的の範囲内にはない自治会長の行為によって他人が損害を被った場合には、自治会長個人がその責任を負うべきであって、自治会自体(自治会の各会員)には、何らその責任を負うべき義務はない。

 まして、その他人がその自治会長の犯罪行為に対して訴えを起こし、その自治会長個人の責任を問うている場面において、行為の正当性を一般会員に弁明することなく、また弁護士の依頼等についても自治会に諮ることなく個人的に応訴し、その後になって訴訟費用や弁護士費用等の諸費用を自治会に負担させようとするのは、正に自治会の私物化にほかならない。

 さて以上の通り、上記事件の被告T2の行為は犯罪行為に該当するのであるから、その行為は自治会の目的の範囲外のものであり、その行為に関する訴訟費用や弁護士費用等の諸費用は、上記事件の被告T2個人が負担すべき性質のものである。

 従って、その諸費用を自治会自体(各会員)に強引に負担させる内容の本件総会決議は公序良俗に反し(民法90条)無効であり、よって、当自治会の会員には本件負担金の支払義務は初めから存在してはいないものと言わねばならない。

 

以上


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