ここで前置きしておきますがキックオフ後の試合内容は事細かに覚えてい
ません。とりあえずイランのシュートがぎりぎりで外れまくってひやっとし
ていたのと、ゴール場面ぐらいしかはっきりとは覚えておりません、なので
その場面を。
 中山にグラウンダーでパスが出る、出したのは誰だ。イラン守備陣一人後
ろに残っているのでオフサイドではない(真横で見ていたので間違いな
い)。中山らしくなく落ち着いて決める。ぎゃああああああああ、先制
だー。
 相馬さん喜びすぎでめがねを落としてレンズの片方を割ってしまう。かな
り度がきついようだが片目だけで大丈夫か。
 しかしまだまだである。イランの攻撃陣を考えたら、追加点がほしい、一
点差で逃げ切れるような相手ではない。だがイラン攻撃陣もしぶとい。ダエ
イでボールをキープし後ろからの攻め上がりがある。ゴール付近でのしぶと
さは日本以上だ。相手GK、ゴールキックに時間をかけている。日本の攻撃
のリズムを外そうとしているのが見え見えである。遅延行為だ、ブーイン
グ。開始早々のグラブの付け直しなどルール違反だ。絶対にイエローカード
が出るはずだ。今回はアジアのレフリーでなく、主審・副審ともスペイン人
なのでしっかり見てくれると思っている。
 1−0で前半終了である。ハーフタイム中にメインスタンドまで行き奥田
さんを捜そうかと思ったが通路は大混雑しているし、休憩したかったのでや
めた。ホテルで会うことにしよう。日本から水筒を持ってきて、こっちでミ
ネラルウォーターを買っていたが、かなり減ってきた。少しずつ水分補給を
行う。まだ前半終了なのに体力の消耗が激しい。
 後半開始が近くなると、体に寒気がしてくる。こんなに暑いのに寒気がす
るのはなぜだろう。今日の服装はTシャツとレプリカの2枚重ねなので寒い
どころか、暑いはずなのに。試合が始まってもまだ止まらない。開始早々か
らイランが攻め込んでくる、井原クリアボールをスルー(空振り?)。目が
点になる。ぎゃー、クリアしてくれ。何とも声にならない叫びもむなしく、
日本のミスを逃さず、ダエイシュート、川口うまくはじくも、あじじにつめ
られる。まだまだだ。
 だが日本の攻撃陣うまくフィニッシュまでつながらない。イラン右サイド
単純にスピードで相馬を振りきる。ふわっと上がったセンタリングをダエイ
に決められ2点目。
 ほんのちょっとだけだめかと思ったが、首を振って否定する。絶対に追い
ついて逆転してくれるはずだ。イラン側、ダエイも守備に入り、守り固めに
はいる。しかし動きはよくない。日本のベンチ動く。FWカズ、ゴンの二人
を代えて、城、ロペスを入れる。カズの途中交代など始めてみた。岡田監督
も思い切りがよい。これは正解だと思う。この采配があたりであることを祈
る。城、ロペスお互いに動き回ってチャンスを作る。DFちょっと反応が遅
い。ヘディングでも十分に競り勝っている。いけそうだ。相手の運動量が落
ちたこともあり、相馬、名良橋もオーバーラップする。日本攻めているもの
の、なかなか決まらない。イランも時々カウンターで攻めてくる。前線で
キープして時間も稼ごうとしてる。DFも落ち着いて処理。
 後半30分、イランクリアボールからカウンターにはいるところを山口
カット。中田に渡り、そのままセンタリングで城のヘッド。決まっ
たっーーー!!!。追いついてくれた。信じていたぞ。勢いは完全に日本
だ。相手はへばっているぞ。そのままもう一点だ。城のゴールにサポーター
の勢いも復活する。あきらめかけていた目が元に戻っている。
 寒気がしていたのもいつの間にか治まっている。
 しかし、同点のまま終了。ゴールデンゴール(Vゴール)方式の延長戦で
ある。PK戦まで持ち込むのは勢いが日本にあるので得策ではない。イラン
はこのままPK戦ねらいかもしれないので、絶対にここで決めるべきであ
る。戦い方は日本の方が知っているはずだ。Jリーグのリーグ戦でのVゴー
ル方式で決着をつけるやり方はあまり賛成ではないのだが、今となってはあ
りがたい。ハーフタイムは短い、岡野がピッチ内でダッシュを始めている。
おおっと、ここで出すのか。今まではこのために温存していたのか。?サ
ポーターも盛り上がる、同ツアーのレッズサポーター佐藤さんも盛り上が
る。そういえば代表の岡野をスタジアムで見るのは初めてだ。今までもベン
チに入っていたがなかなか出場しなかったからなあ(まあ私が監督でも出す
タイミングは難しいと思っている)。どうやら北澤と代えるようだ。変則的
な3トップか。岡田監督の采配は驚かされることが多い(秋田をFWにした
り、相馬を下げて名波をサイドバックにしたり(これははずれだが)、FW
を二人いっぺんに代えたり)。相手も攻めてこないんだったらがんがん強気
に行くべきだ。 延長戦である。イラン側岡野の情報がないのか、疲れて動
けないのか、スピードに対して無警戒である。しかし岡野も簡単には決めて
くれない(決定力があれば今までに出場している)。相手GKも時間稼ぎな
のか、本当にいたいのかわからないがすぐに倒れ込む。さっさと代えろーと
ヤジを飛ばす(この時点で既に3人交代していたことは知らなかった)。当
然イエローカードも出される。
 イランもカウンターで攻撃を仕掛けてくる。ダエイ、アジジしつこくキー
プしフォローを待つ。イランCK、日本がクリアし、中田にわたる、岡野が
走り込んでくる。日本のカウンターだ。いけー岡野、それがおまえの生きる
道だ!。中田オフサイドぎりぎりのタイミングで岡野にパス。(セリエAで
みた、ルイコスタがバティに出したパスをなぜかその時思い出した)岡野
センターサークルから独走である。ぶっちぎれー!DFをかわし、GKと一
対一である。(この時は見ているスタンドから反対側のゴールだったので、
岡野のシュートがはじかれてDFにクリアされているように見えたが、後で
ビデオを見てみると、なにしとんじゃ、撃て、この野郎!ということにな
る。中田が頭を抱えたのと、スタンドのあきれたようなため息の意味がよう
やく分かった。)
 日本側ほとんどのボールを支配するも決定打が出ない。イランも数少ない
チャンスを使ってゴールに結びつけようとする。その時何度”外れろー!”
と叫び、冷や汗をかいたことか。
 城、GKと一緒にゴールポストに激突。脳しんとうを起こしたのか、なか
なか立てず、立ってもふらふらしている。本当に死闘である。GKも左腕を
痛そうにしている。ゴールキックも蹴れない。
 延長後半も残り少なくなった。イラン右サイドからセンタリング、DFと
GKの間に落ちる、ダエイが詰めている。ぎゃあああああ、危ないいい、外
れろおおお。声にならない叫びと、気を失いそうになりながら、ボールは
バーを越える。よしまだついている、行ける。大丈夫だ、しっかりせい。電
光掲示板の時計を見る。13分過ぎである、ロスタイムもかなりあるはずで
ある。
 日本の攻撃である。ロペスにパスがわたり、スルー。しかしDFカット。
ロペスもボールを追う追う。ボールを取り返し中田にわたる。(注意:試合
中のこんな細かいところは覚えていません。念のため。)中田内側に切れ込
みながらドリブル、シュート。DFにあたりコースが変わる。GKはじく。
しかし突然左側から誰かが詰めている。ゴールに入った。だれだ、ベンチに
向かう走り方は岡野か、ほんとにゴールか、オフサイドはないのかと、副審
を見る。旗は上がっていない。主審も見る、何もない。周りがみんな騒いで
いる。大騒ぎである。誰彼かまわず抱きついてくる。終わったのか?決まっ
たのか?勝ったのか?!ワンテンポどころか、かなり遅れて叫び出す。(か
なり間があったように感じたが、実際は3秒くらいかもしれない)狂ったよ
うに叫び回る。涙があふれてくる。みんな泣いている。全然止まる感じはし
ない。アトランタ五輪出場が決まったときも、涙が出たが、その時以上にあ
ふれてくる。俺はここに泣きに来たんだーと思っていた。
 ひとしきり騒いだところで、立ち眩みがしてしまい、座って休む。こんな
にふらふらになり、心臓に悪い試合は初めてである。
 みんなが記念撮影を始めている。私もお願いして撮ってもらう。その場に
いた人も集まる。私ははしゃぎすぎてその場でジャンプしているところで
シャッターが切られる。やばい、ものすごい写真になっているかもしれない
(実際にそうなってしまっている)とその時だけ思う。
 選手がビクトリーランを始めている。投げ込まれた旗を振っている。フィ
ルムは数枚残っているので写真を撮る。さっき投げ損なった紙テープも投げ
入れる。やはりVゴールだと投げ入れるタイミングが難しい。選手もスタン
ドのフェンスぎりぎりまで近づいている。名良橋、秋田、ピッチ上に入った
紙テープを投げ返しながら、訳の分からない踊りをしている。監督、コーチ
陣も一緒に回っている。マリオGKコーチ、いつもと同じように全身を使っ
て喜びを表している。監督も控えめながら手を振っている。(しかし、岡野
のゴールが決まった後、真っ先に飛び出していったのが監督であったのには
ちょっとびっくり)
 このままスタジアムを去りたくない心境であったが、照明が半分消え、多
少我に返る。バスの出発時間である。試合終了の1時間後に出発である。終
わったのは何時だったかな。観客も半分くらい帰っている。こちらも準備す
る。掃除をする。この時に青いビニール袋は元のゴミ袋となる。一通り片づ
け終わったが、まだまだ散らかっているところもある。しかし時間もないの
でそのままにする。(またセントラル開催になったとき、マレーシアでやれ
なくなったらどうしよう)などと思いながら、スタジアムを後にする。この
時既に0時15分(日本時間1時15分)。
 バスに到着するがまだ、駐車場はいっぱいである。しばらくは動くことは
なさそうだ。バスの中はエアコンが効いていて、汗をかいたシャツにはたま
らなく寒い。タオルマフラーも汗を拭き続けていたので、湿っている。
 少しずつみんながバスへ帰ってくる。ハイタッチでお出迎え。ソウルでも
やった光景である。まだすぐに帰れる気配はない。右隣のバスは高校生風で
ある。何か垂れ幕を広げている。「渋谷幕張高校シンガポール校」と書いて
ある。シンガポールは漢字で書いてあったのですぐには読めなかった。鹿児
島以外にも現地の高校生が来ていたようだ。渋谷幕張高校といえば、我が
フィアスチーム初期の頃、初めて鹿島方面まで合宿などに出かけたとき、
我々が暑さでへばってだらだらやっていた隣のグランドで、南米系コーチの
指導の元がんばっていたのが、渋谷幕張高校だったかな。
 なかなか興奮が冷めやらない中、ツアーのみなさんも少しずつバスへ戻っ
てくる。駐車場内のバスも少しずつ動き出している。最後の二人がなかなか
戻ってこない。前のパスポートお騒がせ組である。探しに行ったが既にスタ
ジアムの門は閉じているため、かまわず出発する。タクシーで帰ってしまっ
たのだろう。(実際にホテルに着いたらシャワーを浴びていた)
 バスは出発したが、渋滞はなく、スムーズに流れる。途中道を歩いている
日本人には、バスの中から手を振ったり、親指を立てたり、腕を上げてガッ
ツポーズをする。みんなしっかり応えてくれる。すれ違うツアーバスも同じ
である。
 10分ほどでホテルに到着。もう1時半近いがロビーは日本人の宴会場と
化している。普段は閉まっている時間なのに、レストランもまだ開いてい
る。稼ぎ時なのだろう。こちらはとりあえず昨日行った屋台に行くことにす
る。この時間では奥田氏も明日仕事だろうから帰っているだろう。
 いったん部屋に戻り、荷物を置いて、金庫に入れていたお金を取りだす。
今宮さんの話では無茶苦茶安いので20リンギット(約800円)ほど持っ
ていく。服は分かりやすいように着替えないでいく。
 部屋を出て、エレベーターに乗っていると、途中の階からなんとイラン代
表ビエイラ監督が乗り込んできた。意外と小柄な人である。こちらがさすが
に何も言えずに黙っていると、監督が流暢な英語で
「おめでとう。今日の勝利は2万2千の君たちの応援があったからだろ
う。」
という感じの言葉をかけられた。こちらはそんな言葉が出るとは思っていな
かったのと、感激してしまって、「サンキュー」としか言えなかった。同乗
していた今宮さん
「I think so too」などといってしまうが、その返事で良
かったのか。
こちらは1階で降りたが、監督は地下2階のレストランに降りていった。
たった一人で降りていく姿は寂しく見えた。
 ロビーに降りると会長と加藤さん(写真家)がエレベーターでダエイに
あったと話している。ひどく落ち込んでいたらしい。昨日の余裕をかまして
いた姿とは大違いらしい。そこへ英語の達者な加藤さん「Next cha
nce,next chance」といったらしいが、それでも落ち込みは
かわらなかったらしい。日本に負けるとは思っていなかったのだろうが、私
はイランが勝つとは思っていなかった。
 しばらくロビーでみんなが集まるのを待っていると、左腕を吊った大男が
現れる。190cmはある。イランの選手のようだが、腕を吊るほどのけが
をした人が出たかな?(後でわかったのだが、さんざんブーイングをくらっ
ていたGKでした)
 みんなそろったので屋台に向けて出発。格好はみんなスタジアムから直行
という感じである。屋台に行く途中で、タクシーでシンガポールへ帰る人
が、こちらの団体を見つけ、日の丸を振ったり、手を振ったり、ガッツポー
ズ。こちらは日本コールで返す。屋台に行く途中までこういうことを数回繰
り返す。既にナチュラルハイである。
 屋台に着くと、分かりやすく、日本人3〜4名のグループがいくつかあ
る。みんな初めてあった人ばかりであるが、ハイタッチで喜び合う。自然と
日本コールやフランスへ行こうコールが出る。(JBの方々すいません)
 ビールを買って乾杯である。音頭は会長。食い物は各自10リンギット
(約400円)出して、英語の達者な方に頼んできてもらう。飲む前から既
にできあがっているので、あまり飲めないかもしれない。私が買ったビール
は外れてしまったのか、すごくまずい。うーん、黒ビールの濃いやつのよう
な感じだ。話は弾む。川平J「〜いいんですか」「いいんです」コールがな
ぜか続いてしまう。近くにいた日本人Grもハイテンションな10名近くの
この団体に集まってくる。輪がだんだん大きくなってくる。近くのマレーシ
アの人々も、日本人の馬鹿な団体に呆気にとられている。
 料理が運ばれてくる。焼き鳥のようなものと何かわからないもの(あんか
けのようなもの)がくる。どちらもうまい。今日は何を食ってもうまいぞ。
生きているときの姿をしていないものなら何でも食えそうだ。
 「フランスへ行こう」のコールも「フランスで会おう」コールにかわって
いる。何か知らない間にどんどん輪が広がっている。
 残念ながら屋台は午前2時までなので店を閉め始めている。加藤さんが
あっちの中華料理屋さんが5時までやっているそうなので、団体様そのまま
移動。この時で20名くらいになっている。
 屋台に着くと数名の日本人Grがいたので、そのまま合流。店の前を車が
通っていく。道路にいすやテーブルを出しているようだ。そのままそこでは
選手コール。今日出た選手や出ていないが各自がひいきにしている選手コー
ルもでる。店員さんもビールを10個近く積み重ねて運んでくるサービス。
お店のコールまで始まる。この騒ぎを聞きつけた日本人がさらに集まってく
る。既に30人は越えている。ビールがきたところで、やってみたかったと
ビールかけを始める人もでる。今日は無礼講か。
 この大騒ぎにTV局がかけつける。チャンネルはどうやら10チャン(T
V朝日)ということで、川平コール、小宮のえっちゃんコールが始まる。
(こんなお馬鹿な映像が流れるはずはないと思いつつも、翌日にニュースス
テーションの録画を国際電話で頼んでしまう私。淡い期待は砕け散ったが、
ある意味ほっとしている)
 話していた内容はほとんど覚えていない。騒いでいたことだけである。
あっという間に時間は4時近くになっている。そろそろ2次会のお開きとい
うことで加藤さんの音頭で締めくくり。3・3・7拍子がこだまする。と同
時に紙吹雪も舞う。スタジアムの残りをばらまいている。しかしすぐさま
みんなで掃除する。おもしろいところである。
 ビールの残りを飲みながらホテルに帰る。さっき紙吹雪をまいた人たちも
ツアーは違うがホテルは同じようだ。この人たちもJ−NETで見つけたツ
アーできたらしい。スタジアムではJ−NET管理人のKOICHIさんと
もあったようだ。ここにきていたんだ、あってみたかったと思う。
 ホテルではまだまだ日本人の祝勝会が続いている。そのままレストランに
入り3次会である。(といっても静かにだが)
 清水秀彦さん発見。既に奈良漬けのような感じである。ゲーム会社ワープ
の飯野健児さんも発見。意外な人を発見してしまう。握手してもらうがごつ
い手である。水沼貴史さんもスタッフの方たちと飲んでいる。みんな遅くま
で眠りたくないという感じである。
 しばらく話していたが、冷房が効きすぎていて体が冷えてきたので部屋に
戻る。するとドアの足元にメッセージが落ちている。奥田氏からのメッセー
ジのようだ。スタジアムから帰ったときは気づかなかったが、いつ届いたの
だろう。時間は書いてない。走り書きで読みとりにくいアルファベットを何
とか解読すると、シャワーを浴びて眠る。気分的には目がさえて眠れない感
じであるが、やはり疲れでしばらくすると寝てしまう。

第4部終わり