問1. スバリ、毛針の色は釣果に関係あるか。
瀬畑翁からいただいた毛針
 全く関係ないね。

 白、黒、黄、茶などさまざまあるけれども、自分で見やすいものであれば何でもいいんですよ。100人いれば100種類の毛針を巻いているでしょ。それでもみんな釣れてるんだから、結局何でもいいってことですよ。

好きな毛針を好きに巻く、自信を持つことに尽きるね。

問2. 早合わせしないと釣れない、とよく耳にするが。

 それは馬鹿げた神話だよ。ナメ床を洗い流すように滑り落ちるナメ滝
 釣りをことさら難しくしているだけですよ。

 早あわせをしようと思ったら、いつもラインを張った状態にしてなきゃいけないでしょ。これじゃ魚が毛針をくわえた瞬間、変だなと感じてすぐに逃げられますよ。だいたい人間がコンマ何秒なんて速さでアワセられるわけがないでしょ。これじゃ難しくて釣れない。

 要は、ラインをタップリたるませて流せばいいだけですよ。何も難しい技術なんて必要ないんです。ラインをたるませた分だけ、魚は毛針をくわえたまま走るから、合わせも簡単ですよ。

問3. 瀬畑流テンカラの竿、テーパーラインの長さは
瀬畑翁からいただいた長くて太いテーパーライン
 できるだけ遠くへ投げることだけを考えてきたんだ。遠くへ投げれば、それだけ魚は安心してゆっくり毛針をくわえるから、合わせも楽になるんですよ。

 竿は4m〜4.5mの長い竿、テーパーラインは4.5m〜5.5m,仕掛けの全長は7mほどだね。

 私のテーパーラインは、長いだけでなく、水中でも見やすい色(黄色)であること、重いラインなので楽に遠投できる点だ。遠くへ投げる、タップリたるませるには、長竿に長くて少々重いラインがベストですよ。

問4. 毛針をよく見失うがどうすれば良いか。
底が丸見えの堀内沢中流部
 ラインをちょっと引けば、毛針を確認できますよ。
 たとえ毛針を見失っても、たるませたラインは見える。

 アタリはラインのフケでとらえれば十分ですよ。最近は、たるんだ状態で、よそ見していても手にアタリを感じるんですよ。その時、合わせるとちゃんとイワナが掛かっていますよ。これは不思議なもんですね(これは素人じゃ無理)。

問5. イワナを掛けた瞬間、強く合わせ過ぎて切れる場合もあると思うが。

 合わせ切れを防ぐには、毛針の穴にハリスを通し1cmほどの輪を作ってやれば、毛針は輪の中でフリーに動くんですよ。こうすれば合わせ切れが少なくなるんですよ。ハリスはフロロカーボン1〜1.5号、毛針は自製の8〜9号。

問6. その長い仕掛けを遠くへキャスティングするコツは。
大淵が続くテンカラ釣り場
 肘を支点に手首を曲げずに振るのがコツですよ。
 とにかく練習しかないが難しくはないですよ。

 ウシロ振りは、真上の12時でしっかり止めて、ラインが後ろに延びきる直前でマエへ振り、時計の10時半あたりで止めるんですよ。まめに練習して修行を積むことに尽きるね。

問7. 毛針の流し方は
毛針をくわえたイワナ
 真上から見た場合、ヤマメ、イワナの左右45度ずつ、90度ぐらいの扇形の角度の範囲内に流さないと、毛針には飛びつけない。取り損なったエサは、あっさり諦め、次のエサを待つというのがヤマメ、イワナの習性なんですよ。

 くわえやすいところへ、くわえやすいように流すことが最も大切ですよ。
 これを「食い筋」に流すと呼んでいます。(これはエサ釣りも同じだ)

問8. それじゃ、トロ場の止水状態の場所では、どうか。
トロ場で群れていたイワナたち
 トロ場では、魚の前ではなく後ろに毛針をうつんですよ。

 毛針の着水音で振り向き、毛針に食いつきますよ。

問9. 滝壷の深い底に潜む大イワナを狙うには、どう流すのか。

 滝に直接遠投すれば、毛針は流れに乗って滝壷の深い底へ吸い込まれていきますよ。
 底にいるイワナも簡単に掛けることができる。

問10. テンカラで釣れる時、釣れない時は、どんな場合か。

 どんな場合でも釣れますよ。
 渇水で水が澄んでいる場合は、水面を流せばいい。
 雨で増水、濁った場合は、沈めて流せばいいだけですよ。

 ただし、ゴミが流れりゃ駄目だな。イワナは、最初ゴミをエサと思い食べるんですが、そのうちゴミに気付いて追わなくなっちゃう。そんな時、毛針を流してもゴミと思って、全く釣れないんだな。

問11.どんな川で練習したらよいか。
オイの沢が合流する堀内沢上流部
 そりゃイワナやヤマメの魚影が濃くて、スレていない源流が一番ですよ。釣れれば上達も早いでしょ。

 5匹も釣ろうものなら、テンカラがオモシロクてやめられなくなっちゃうよ。ぜひ皆さんも挑戦してほしい。仕掛けは、エサ釣りに比べたら、いたってシンプル、決して難しい釣りじゃないんだから。

 こんな問答をしていると、完全に瀬畑流日光テンカラの門下生と化していた。そして、釣ってもいないのに、頭の中には、尺イワナが毛針をくわえる瞬間が次々に蘇り、しまいには50cmを超える大イワナまで釣れてしまう。どこかで聞いた「妄想フィッシング」状態。ルアーの魅力にハマッタ一年生が、今度は「渓語りの翁」の不思議な魅力に、まんまとハマッテっていた。でもこれは心底嬉しい誤算だった。