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 白神のニホンザル、ここにも混血ザルの危機が迫るのだろうか・・・

 1955年、和歌山県にあった私設の動物園が経営の悪化で閉園。飼育されていた30匹ほどのタイワンザルが野山に放たれた。野生化したサルたちは、山中に住みつき生息域を広げていった。やがて特産のミカンや柿などの果物を食い荒らし、民家の屋根や窓ガラスを壊したりするなど次第に被害が深刻化した。
 タイワンザルとニホンザルは、同じマカカ属。体形や体色は似ているが、タイワンザルの尾の長さは約40センチで、ニホンザルの約10センチに比べて長い。

 タイワンザルとニホンザルは、顔つきも体型も非常に似ているが、最大の違いは尾の長さ。タイワンザルは、太くて長い尾があるが、ニホンザルは、よく見ないとわからないほど短い。1998年、両者の混血ザルがDNA鑑定などで初めて科学的に証明された。「サルもついに国際化したか」と楽観する人もいるが、ことはそれほど単純ではない。このまま交雑が進めば、純粋なニホンザルという種が絶滅されかねないのだ。現在、混血ザルの群れは、2群で約200匹、分布範囲は約14平方キロと推定されている。

 サル族のほとんどが、熱帯から亜熱帯に住んでいるが、世界の北限に住むサルが青森県の下北半島だ。学術的な価値も高く、国の特別天然記念物に指定されている。そんな貴重な下北半島のサルにも交雑の危険が迫っている。和歌山県内で放たれたタイワンザルは、東北へと北上しながら生息圏を拡大、すでに下北半島で野生化しているという。今のところ混血種は発見されていないが、その危険はすぐそこまで迫っているのだ。

 これに危機感を抱いた日本霊長類学会は、タイワンザルを全頭捕獲し安楽死させる計画の早期着手を木村知事に手渡した。これを受けた県は「このままでは全国に広がり、ニホンザルの種が危うい」として、群れの捕獲と安楽死計画をまとめた。しかし、全国から「殺すのは人間の身勝手だ」などと苦情が殺到した。

 和歌山県は、県民1000人に対してアンケート調査を実施、その結果は64%の人が「麻酔薬を使った安楽死」を選択した。これを受けて県では「安楽死もやむなし」として、混血ザル安楽死計画を決定した。現在、餌づけを開始しているという。サルがえさ場に出没し、人間に対する警戒心を薄める時期を見計らって、えさ場を取り囲む大型のおりを建設。最後に扉を閉めて群れごと捕獲、薬殺する計画だ。

 タイワンザルは、外国から持ち込まれた移入種問題であり、混血ザルという遺伝子かく乱の危機は、世界のサルの北限にあたる下北半島まで及んでいる。この危機的状況を考えれば、手段はともかく排除はやむを得ないだろう。

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