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サワモダシ(ナラタケ)、ウスヒラタケ、ムササビタケ、スギタケ、ブナハリタケ・・・不思議な出会い
 9月中旬、マイタケ豊作のニュースを聞き、単独で西目屋村大川に向かう。車止めに着いたのは、午前7時30分。遅い出勤とはいえ、車止め駐車場は既に満杯。数えてみると、11台もの車が止まっていた。やむなく、やや広い林道脇に車を止め、身支度をする。こうなったら、難儀なマイタケ採りは諦め、台風一過の沢を歩き、ポピュラーなサワモダシでも採れれば・・・と思い、出発。
 9月の沢歩きで、最も出会う確率の高いキノコ・・・と言えば、サワモダシ(ナラタケ)。至る所に生え、収穫量が多く、美味い。この三拍子がそろったキノコの代表だけに、古くから多くの人々に食べられてきた。キノコ狩り入門には、最適のキノコだ。汁物に入れれば、ヌメリを生じ、よい出汁が出る。キノコ図鑑によると、「食べ過ぎると腹痛を起こしたり、下痢をすることがある」と書かれているが、今だそんな経験はありません。
 トチの実・・・9月になると、実は三つに割れて、赤褐色の光沢のある種子が渓にたくさん落ちる。古くからトチ餅などに利用されているが、しぶみが強く、アクを抜くのが大変だ。トチの実のアク抜きは、灰汁を使う。そんな面倒なことをしてまで、なぜ餅にトチの実を使うのだろうか・・・その答えは、味もさることながら、餅が冷めても硬くならないからだ。
 ブナの風倒木に生えていたウスヒラタケ・・・ヒラタケより明らかに肉厚が薄く、白っぽい。非常に香りがよく、クセがない。洋風の煮込みや和風の鍋に合う。もちろん味噌汁も美味い。
 チャウロコタケ・・・広葉樹に生え、下から見ると表面が透けて見える。  ナメアシタケ・・・広葉樹林内の苔の間に群生する。
 サワモダシ(ナラタケ)の幼菌。小沢を上ると、至るところに生えていたが、成菌はことごとく腐っていた。それだけに、こうした幼菌に出会うと心が躍った。
 ムササビタケ・・・湿っぽい小沢の苔生した倒木に群生する。その造形美は、なかなか。「ムササビ」といった獣の名前が付いたキノコは、一般的に不味い。イタチタケ、ムジナタケ・・・ただし、トンビマイタケだけは別格。
 朽ち果てたマタギ小屋跡を辿り、大滝又沢の本流に降りていくと、真下に重いザックを背負い、赤いヘルメットを被った沢登り師が見えた。私を見るなり、駆け寄ってきた。「インターネットをいつも見てますよ」と、赤いヘルメットをわざわざとって丁寧なあいさつをされてしまった。一瞬、キョトンとしたが、初対面なのにどうして分かったのだろうか。

 聞けば、地元の人で、白神山地の魅力にとりつかれて7〜8年になるという。いつも、独りで歩いているとのこと。昨日、タカヘグリを通り、大川のヨドメの滝まで行って来たと言う。その前は、滝川にも行ってきたと嬉しそうに話してくれた。山釣り紀行のHPは、白神山地の情報が多いだけに、全て見ているという。「いつか、白神の谷で会えるのでは、と期待していたが、会えて本当に嬉しい」・・・こちらまで嬉しくなる不思議な縁を感じた。
 秋の陽射しがまぶしい渓をゆく。足の筋を痛めたらしく、大滝又沢をしばし散策したら、帰るという。「夏の赤石川源流行は、5泊もしたんでしょう。凄いね。そんな人はほとんどいませんよ」「今度よかったら、一緒に白神を歩いてみないか」「いや、なかなか長い休みはとれませんから・・・」「とにかくメールをください」といって、青鹿沢出合で分かれた。このページを見たら、ぜひメールください。待ってます。
 ダイモンジソウが咲き乱れる青鹿沢。
 ヌメリスギタケ・・・全て腐っていたが、傘にも柄にもヌメリがある。ヒタは初め黄色で、後に褐色となる。りん片は脱落しやすい。柔らかく、口当たりのいい食用キノコで、今では、人工栽培もされている。
 スギタケ・・・ナメコと近縁でスギタケモドキやヌメリスギタケ、ヌメリスギタケモドキと似ているが、ヌメリが全くないのが特徴。食用とされるが、腹痛や下痢を起こすことが多いキノコで、手を出さいない方が無難だろう。
 清流が木漏れ日を浴びて、キラキラと輝いた。
 ほとんど腐っていたが、やっと旬のサワモダシ(ナラタケ)を発見。この倒木は、流れからかなり高い位置にあった。腐っていたのは、低い位置の倒木に生えていたもの。辺りを見回すと、草木がなぎ倒され、洪水にやられのは確か。水に浸かったサワモダシが腐っている理由は、どうも度重なる台風豪雨のせいだろう。斜面の遥か高い位置に生えるマイタケは、腐らず豊作なのもうなづける。夏が猛暑で、森が湿っぽい年は、キノコが豊作と言われる。今年は、まさにそんな当たり年なのだ。
 倒木の両側面だけでなく、下面にも群生していたサワモダシ(ナラタケ)。夢中でデジカメのシャッターを押す。コントラストが強く、うまく撮れなかったのが残念。
 サワモダシ(ナラタケ)は、年のフィナーレを飾る渓流釣りでよく出会うキノコの筆頭。地方名は、何と200種近くに及ぶというから驚きだ。これほど昔から、馴染み深いキノコもないのでは。表面は淡い黄色〜褐色。ナラタケモドキに似ているが、傘の表面に粉片、柄にツバがあるのが特徴。
 一つの倒木から採取したサワモダシ(ナラタケ)。これだけで、食べきれないほど。料理は、鍋物や佃煮、煮染め、おろし和え、酢の物、味噌汁など。保存は塩蔵が一般的だが、最近は、さっと湯がいてから、汁ごと冷凍するのが簡単で美味い。
 チャツムタケ・・・まんじゅう形から、最後はほぼ平になる。ヒダは黄色からさび色。やや苦味があるという。ブナの森では、もっと美味いキノコが山ほどあるだけに、こういうキノコには手を出さない方が無難だろう。
 台風でなぎ倒された巨木。ブナの森の斜面、谷の至る所に、新しい風倒木が数多く散在していた。数年経てば、キノコの山になるに違いない。こうした自然のかく乱は、森を活性化させるように思う。
 ブナの森を見上げると、青空に無数のクラゲが漂っているような不思議な雲がゆったりと流れていく。ここは竜宮城なのたろうか・・・。
 ふと、落ち込みの淀みに尺クラスの岩魚が見えた。ここまで岩魚を撮ろうと、何度も試みたが、ことごとく走られてしまった。近づけば逃げられる。遠くからズームアップして撮影したが、暗くブレてしまった。シャッター速度は、確か1/4秒だった。完全な失敗写真だが、黒い影・岩魚が、どこに写っているか、何となく分かると思う。
 鹿沢源流部二股。左右からナメ滝となって合流している。左の本流を進む。
 まもなく右手斜面にミズナラの巨木が目にとまった。急斜面を四つ足状態で登り、根元を360度見回す。何人かが歩いた痕跡もはっきり残っていた。それにしても老かいな巨木で、マイタケを期待できそうな気がする。
 枯れたブナに群生するツキヨタケ。毒キノコだが、自然の造形美として鑑賞すれば値千金の価値があるように思う。
 サルノコシカケ・・・その名のとおり、まるでサルが座る椅子のように見える。天然のサルノコシカケは漢方薬としてかなり高価な額(1グラム当たり8〜15円)で取引されているようだ。そのままでは食べられないが、小さく刻み、それを煎じて服用する。ガン、糖尿病、高血圧、心臓病、肝臓病によいと言われている。
 ブナハリタケ・・・ブナの森を流れる渓流で大量に採取できるキノコの一つ。
 青鹿沢の清冽な流れ・・・急な斜面、藪をかき分けながらマイタケを探すのも楽しいだろうが、私にとっては、清冽な流れを蹴って、ポピュラーなキノコを探す方が性に合っているように思う。9月の連休は、白神山地追良瀬川五郎三郎の沢ルートを4泊5日の日程で歩く予定。キノコも期待できそうなので、今からワクワクしている。

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