手放したくないショルテス

2004.2.14

10日程まえから、どうもガズレンジの調子がおかしい。我が家のガスレンジは設置してから、すでに25年もたっている。今まで殆ど故障はなかったが、数年に一度はバーナーの部品を取り替えて来た。

ところが、何年か前、フランスの会社がつぶれて、それ以来、部品の供給が途絶えてしまった。

我が家のガスレンジは、このフランス製のショルテス(Scholtes)で3代目になる。最初にオーブンレンジを買ったのは、アメリカ製のマジックシェフ、ところがこのマジックシェフは、私の不注意で、クッキーを焼いているときに、クッキーが燃えだして壊してしまった。

残念だったけれども、火災保険からお金が出たので、今度は、日本製の某社のオーブン付きのレンジを買った。これが又、会社は有名にも関わらず、大変お粗末な商品だった。

どういうふうに、お粗末かと言うと、ある時、オーブンを使っていたら、となりの戸棚の中まで熱が伝わって来て、熱いとまではいかないが、温かくなっていた。驚いて、これは、他のものと交換して、引き取ってもらった。その後に、購入したのが、このショルテス(Scholtes)なのである。

当時は大変人気もあり、インテリア雑誌のキッチンの写真でよく見かけた。勿論、私もそのあか抜けた美しさに引かれてショルテスを使うことにした。
丁度、フランス語を習いたての頃で、器具に書いてある内容が大体読めたのも嬉しかった。

例えば、温度表示は1〜10までの、番号になっている。
番号ごとにそれぞれに適した料理がフランス語で書いてある。
3.4 :quatre-quarts、これは4等分とでもいうのだろうか、
つまり、小麦粉、砂糖、バター、たまごが同量と言う意味で、
ケーキの基本みたいなもの。マドレーヌの生地がこれにあたる。

その他、6.7:お魚だとか、お肉だとかフランス語で書いてあった。それを見ながら、お料理するのも楽しかったし、子供も小さい時分で、ケーキなども随分作ったものだ。

勿論、最近は老夫婦二人の生活だから、オーブンでケーキを焼くなんて事は、間違ってもないのだが、火の口が4つあるのを、時として、全部、使う事だってある。大と小が対角線上に並べてあって大変使い易いのと、手入れが楽なのである。
それでも、長年の生活の垢がたまってご覧のとおりに染み付いてとれない油汚れもあるが、日本製に較べたら、はるかにましだと思う。

そもそも、ショルテスの売り込みの口上は「親子二代で使える」だった。
それなのに、あろう事か、会社の方が先に死んでしまったのである。輸入元のクラリオンも手を引かざるを得ない事になった。これからは、部品がありませんと最後に言われたのが、何年前だったのか、覚えていない。それでも、我が家のショルテスは黙って働き続けた。
ついに最近になって、炎が赤く大きくなり、どうみても不完全燃焼の様相を呈してきた。

私はクラリオンへ電話をかけようとは思わず、とにかく静岡ガスへ電話をして、ガス器具の点検を依頼した。しかし、やって来たのはガス会社ではなく、地元のガス工事店だった。

器具を見るなり、これはメーカーでないと直せないと言った。
結局、ねじ回しでバーナーをトントンたたいているうちに、さびが落ちて、多少良い状態になり
「奥さん、もう新しいのを買った方が良いでしょう。今度の週末にガス器具の展示会がありますから、見に来て下さい」と、招待券を置いて、出張料と技術料を払って終わりだった。

2,3日して、夫とガス展に行ってみる。この前に家に来てくれた彼も勿論、大歓迎でお土産をどっさりくれた。

展示場には、電磁調理器も並んでおいてあり、電磁調理器と比較実演があった。
ガスに較べて電磁調理器の弱点は、これこれだと説明されて、すっかり気持ちはガスの方に傾いた。
とにかく仮予約をしてきたが、どうも、あとから考えると、おかしいこともいくつかあった。

実験は、冷凍のチャーハンを二つのフライパンにいれて炒めた。ガスの方は会社の人が炒め、私は電気器具の方で炒めたが、ガスの方が出来上がっても、電気は焦げるだけで中まで火が通らなかった。
ご飯は焦げても、まだ具のえびが冷たいのだ。

ああ、やっぱりガスの方が良いのだな。お料理はやっぱりガスが良いと思った。

でも、あとから考えれば、堅いもの、大きいものは先に炒めるのが常識、一緒に入れたら、当然、小さいお米は焦げますよ。これが商いのマジックである。

それにしても、今のままではサイズが合わず、当然、調理台も作り直すことになりそうだし。
気持ちは揺れる。あれやこれやで、やっぱり、ショルテスを何とかしようと、私は急に買い換えが嫌になった。きれいに磨いて眺めては、別れ難くなっていった。どうしよう!手放したくない!

ショルテスには、私の歴史が刻まれている。私の汗も、涙だってしみ込んでいる。でも、私が捨てたら、ゴミの山で転がっているだけだろう。だんだん気持ちが大袈裟に感傷的になって来た。

そして、とうとう、クラリオンへ電話をして、事の次第を話した。
クラリオンへ電話をかけた日が、また不思議なことに会社が分れて引っ越しの日だと言う。最後の日だった訳だ。ラッキー!

あらためて連絡して、昨日来てもらった。どうか、生き返って・・・

昔一度、来てくれたサービスマンだった。

さすが専門だけあって、簡単に蓋をあけ、器具を調べていたが、長い間の油と煮こぼれがこびりついて、にっちもさっちも動こうとしない。

とうとう着ていた上着も脱いでの奮闘となった。

さびを溶かす油(CRC)を注入し、なんとか動かしてみようとした。

それは、空気調節の穴を少しばかり狭めればすむ事なのに、なんとしてもリングが動かない。

奥さん、これはもう駄目ですね。今は良いけれど、このまま使えば危険ですよ。実は僕もショルテスを2年前にあきらめて、オール電化にしましたよ。電気は良いです。換気扇も汚れないし、掃除も楽です。いやあ、別に電気会社の回し者じゃあありませんけどね」

何とかして生き返ってほしいという私の願いもむなしく、とうとう現状維持のまま、ふたたび蓋はしめられてしまった。

たかがガスレンジ一台、買えない訳ではない。別れたくないだけなのだ。いわば、私の同志だから。
最後にコーヒーを飲みながら彼に言った。

「私、どうしても、捨てたくないの」
「僕たちだって車の買い換えの時は、そう思いますよ。でも、危険だから我慢して買い替えます」

「忘れられないでしょう?」

「だから写真に撮っておきます。後から買った車が気にいれば良いけど、そうでない時は恋しくなる」

「私も、この間、ガスやさんに言われたわ。

<奥さん、写真に撮って額に入れて飾っておけば良いよ>だって」

でもやっぱり、朝一番に立つキッチンに、あれが消えてしまったら、どんなに淋しいだろう!

毎回毎回、心を込めてお料理を作ってきたと、胸をはっては言えないけれども、私が家にいる限り、一日とてその前に立たない日はなかった。火には細心の注意を払って来た。

何故、もっと早く調整してあげなかったのか?つらくなってくる。

強いて言い訳をするなら、クラリオンから「もう部品は入ってきません」の一言の宣告だったかもしれない。サービスマンの人が言うには、「サービスだけはやっていました」

あ〜早くそれを知っていたら?私の愛器と別れないですんだものを!さあ、この先どうする???
IIH電磁器にするか?ガスの進化型か?はたまた危険を承知でこのまま、ショルテスにこだわるのか?

これからが私の研究になりそうだ。

ショルテスのその後

2007.10.9

捨てがたいショルテスへの思いを、つたない表現ながらここに載せて3年くらい経ちました。

その間に、ほぼ7,8人のショルテス愛用者の方からメールを頂きました。

その方がたも、全く私と同じようにショルテスへの強い愛着があればこそ、ネットを検索し、私の所へたどりついたと申されております。部品の補充が出来ない方が大部分でした。

私も結局悩んだ末に、IHに変えました。

ところが、もしやと思いフランスのヤフーでショルテスを検索してみると、立派なHPに出会ったのです。残念!

悔しいけれども仕方ありません。かりに輸入することができても、メンテナンスの問題もあるし、とても無理な話です。
日本のものも当然進歩しているでしょうが、デザイン、丈夫さなど、今一つだと私は思います。どこかで再び日本でも買える様に取り扱ってくれると良いですね。

http://www.scholtes.fr/scholtes/productlinepage.do?productLineCode=15

デザインはあまり変わっていないようですが、チャイルドロックや自動で庫内を綺麗にしてくれたり、オーブンの扉が熱くならないような工夫がしてあるようです。その他、ナノスチームのような蒸気のでるものもあるようでした。

メールの質問その他では、IHに変えてみて、使い勝手はどうなのかという質問。


私は個人的にはあまり使い勝手は良くないと思いました。まあ、これは人それぞれですから。
でも、HPに書く事でいろいろな方とお話できたことは、本当に嬉しかったと思います。昔だったら考えられないことですから。これから、もし、何か質問がありましたら、メールを待っています。