2A3以外の直熱三極管について
真空管アンプについての雑感のページで直熱三極管2A3について触れましたが、2A3以外では、UX12AとUX71Aをいずれもシングルとプッシュプルで試してみました。211については1本しかなかったのでシングルで試してみました。何でこれがあったか不明ですが、多分送信機のジャンクから出てきたものでしょう。
UX12Aは昔の並三ラジオに使われていた扱いやすい球ですが、小出力なので実験器を作って試して終わりましたが、物理資源はUX71Aが引き継いでいます。
UX71Aはかなり昔のラジオの1W未満の出力管です。特性を見ると、プレート損失が小さくて、電圧増幅率が低くバイアスが深いのでドライブが難しそうな球であることが判ります。バイアスや増幅率が2A3と同じくらいなので、前段の設計は2A3とほぼ同じになってしまいます。シングルでの直線性は12Aより良いようです。音質は2A3に類似しているように思います。
211の場合、増幅率が2A3より大きいのでA級で5W程度の出力なら良いと思いますが、ヒータ電力と1000V級のB電圧は身の危険を感じ、いじり回す気にはなりませんでした。その後、211は請われて知人のところで余生を送ってます。
300Bは2A3より211に近い感じもしますが、2A3が手元にあることと高価であることのため新規に購入して試す気にはなっていません。でも2A3が死んだらいじってみるかもしれません。
いずれにしろ、2A3のような低増幅率で大きなバイアスを必要とする三極管は、ドライバ段も出力を目一杯振らないといけないので、ドライバの直線性も重要となり、回路構成が重くなるのでシングルよりPPとなってしまいます。NFBを安定にかけることが出来ればドライバトランスを使う方が楽かもしれません。
球の個性に依存はしますが、シングル構成(パラも同じ)の出力部は、三極管、五極管を問わず利用可能なパワーバンド一杯に直線性を維持することはなかなか難しいと思います。直線性は、測定したいアンプのNFBを外して、入力に三角波を与えてレベルを上げながら出力をオシロで見てみるとカットオフ側と飽和側で出力波形が違ってくることで良く判ります。
また、前述の球をPP構成にすると、カットオフ側を補い合い直線性が改善されることが三角波を観察することで良く判ります。もちろん、球自身の直線性や、動作点が不適当であること、電源のレギュレーションが十分でないことも判りますので三角波が出せるファンクションジェネレータをお持ちの方は方形波だけではなく三角波もお試しください。
シングル構成では、出力トランスに直流が流れるので実効インダクタンスが小さくなり低周波域が伸びなくなりますが、PPは直流分を打ち消し合うので低域が残るようです。
色々試した結果、私のところでは三極管アンプはプッシュプルとし、増幅率の高い五極管やビーム管のアンプはドライバが軽くなるのでシングルで作ることが多くなってしまったようです。
以上、表題から外れて、どちらかというとシングルとプッシュプル談義となってしまいました。
|
|

現在稼働が可能な手持ちの直熱出力管たち。左からUY247A(五極管)、残りは三極管でUX12A、UX71A。以上は昭和10年代前半かそれ以前のもの。次の2本がUX2A3で昭和10年代後期から20年代頃の物でChikaraと言う聞き慣れないロゴがついているが構造はマツダと類似。右端が中国製2A3Cで300B風の1枚プレートでChikaraの2A3が力尽きそうになってきたので最近購入して使い始めたもの。

直熱管12Aのバリエーション。左から、112Aのグリッドを取って整流管にした日本だけの球でマツダのUX112B(4本足)とKX12F(3本足ですが12Aとそっくり)、隣はFTABAのロゴが入ったUX12A、その隣が東芝(Toshibaのロゴ)のUX12Aで昭和40年代製造の一番新しいもの、右側二本が昭和18年4月製造のラベルが貼ってあるマツダのUX12Aでこの4本は同じ構造です。
|