![]() | 写真も載っている。「米航空宇宙局(NASA)の探査車オポチュニティーが撮影した画像を解析し」たものという。「ビクトリアクレーターの壁」と称する崖があって、その上に湖のようなものが見える。なお、「写真は疑似カラー」という断り書きが目を引く。そして「湖」の上に描かれている空の色が「ペール・オレンジ」(昔のクレパスでは「はだ色」と称した。人種差別的ということで近頃はこう呼ぶらしい)なのである。「壁」や「湖」の色は地球と似たりよったりである(それも疑似カラーなのだろうが)。何故空の色だけが全く違うのか? |
・・火星の表面で撮った最初のカラー写真は一九七六年七月、はじめてこの赤い惑星に軟着陸したアメリカの探査機バイキング1号の着陸によってもたらされた。・・・報道陣に公開された最初の写真に写った火星の空が、見慣れた青い色をしていたので、科学者は一様に驚いた。大気がきわめて乏しい惑星で、そんなはずはない。どこかで間違いが起きたに違いなかった。 ・・・コンピュータ解析者にはときに、とてつもなく大きな裁量の幅がある。惑星科学の専門家ではないバイキングの解析者は、火星から送られてきた最初の写真を、「正しい」色になるよう、調整したのだった。私たちは、あまりにもこの地上での暮しに慣れているため、「正しい」のはもちろん、青い空だと思ってしまう。写真の色はすぐに、探査機にこの目的のために積まれていた、色見本に従って修正された。その結果、空は青などではなかった。むしろ、黄土色とピンクの中間のような色だった。・・・ これこそが、火星の空の正しい色である。火星の表面の大部分は砂漠で、砂がさびているために赤い色をしている。激しい嵐が時折、表面の微粒子を大気圏高くに巻き上げる。その微粒子が落ちてくるには長い時間がかかり、・・・こうしたさびた粒子が常に空中に漂っているため、火星で生まれ育つ将来の世代は、私たちにとっては青がそうであるように、サーモンのようなピンク色を、自然で懐かしいと感じるようになるだろう。 |
一九六一年四月一二日、ウォストーク1号で人類史上初の宇宙飛行をしたユーリ・ガガーリンは、彼が目にしたものを、こう書き記している。 空は全くの暗黒である。そしてこの真っ暗な空を背景にして、星がいくぶん明るく、そしてずっとくっきりと見える。地球は、実に特徴的な美しい青色のかさ(ハロー)をかぶっており、それは、地平線を見るとよく分かる。空の色は淡い青から青、濃い青、そして紫、完全な黒へと、徐々に変わっている。実に美しい色の変化である。 |
私たちが雲一つない日に空を見上げ、青空に感嘆するとき、それは実は、太陽光のなかの短波長の光の選択的散乱を見ているのだ。最初にこのことに筋の通った説明を与えたイギリスの物理学者の名を冠して、これはレイリー散乱と呼ばれる。 |
火星になると、話はまったく異なる。火星は地球よりも小さく、大気もずっと薄い。火星表面の気圧は、サイモンズが昇った地球の成層圏のあたりとほぼ等しい。よって、火星の空の色は黒か、紫がかった黒であろう、と思われた。 |