博士の愛さない方程式

 小川洋子『博士の愛した数式』で語られているのは「オイラーの公式」である。
  eπ@+1=0
 同じことだがこれは
  eπ@=−1
とも書ける。これの両辺の√を取ると、
  eπ@/2=@
こうすると、両辺に@が現れる。さらにこれを拡張して、両辺の@をzに置き換えると、
  eπz/2=±z   (1)
 これは未知数zに関する方程式と考えることができる。その場合、「オイラーの公式」は、この方程式のz=@という一つの解ということになる。つまり、「博士の愛した数式」にルート(√)が絡むと「博士の愛さない方程式」になるのである。
 この方程式(1)について考えてみる。未知数zは一般に複素数である。
  z=x+@y, (x,y)は実数
 また±zは符号の違いだけなので、以下では+の場合だけ考える。
  eπz/2=z
 これは
 これらの2乗を加え合わせると、
  eπx=x2+y2
 これをyについて解けば
  y=√πx−x2__________  (ここでも±を省略)
 これは複素空間における方程式(1)の解曲線である。そしてz=@(x=0,y=1)はそれの一つの純虚数解である(もう一つはz=−@)。
 y=0 のときの解をxRとする。これは(1)の唯一の実数解である。
  eπxR−xR2=0  or eπxR/2−xR=0
  xR〜-0.47454 (数値的に求めた近似解)
 x<xRには解はない。


図1 y=√πx−x2__________


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