旧暦で季節がわかるかどうか検証のため、広島の「15日間平均気温」を求めてみた。田植えの期間はどれくらいか不明であるが、とりあえず15日間程度が妥当と考えたものである。統計期間は「旧暦五月一日から」と「芒種から」の2種類として比較してみた。

広島ヒロシマの15日間ニチカン平均ヘイキン気温キオン
  2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008
キュウレキ五月5ガツ一日1ニチから 25.9 23.1 22.5 25.7 24.4 21.4 24.8 22.7
芒種ボウシュから 22.8 24.3 23.0 23.3 23.8 23.0 22.6 22.8

 「旧暦五月一日から」は、2001年の25.9℃から2006年の21.4℃まで4.5℃の開きがあるが、「芒種から」は、2002年の24.3℃から2007年の22.6℃まで1.7℃の範囲に収まり、大部分が23℃前後できわめて安定している。どちらが田植えの目安として適切かは一目瞭然だろう。
 「まだ旧の五月にもなっとらんけえ、田植えは早すぎる」などと言っていたら、2001年には気温が25.9℃、2004年も25.7℃になるまで田植えはできない。一方、2006年にはまだ21.4℃というかなりの低温のうちから田植えを始めることになる。そんなことで順調に稲が育つのか、他人事ながら心配になる。「広島の古老」は、何かよほどの特殊な米作りのノウハウでもお持ちなのか?
 芒種を目安にするなら、2002年の24.3℃はやや高いものの、他の年は大きな違いはない。稲の生育も大きく違わないだろう。

 旧暦では、19年に7回つまり3年に1回強の割合で閏月が入る。閏月の直後では旧暦の日付は太陽暦に対して遅くなる。その後毎年10日ほどずつ早くなり、3年目くらいにまた閏月が入って遅くなるというサイクルを繰り返すわけである。そして、上述の旧暦五月上半期の気温は、単にこのサイクルを示しているのにすぎない。気温の高い2001年、2004年、2007年は実際旧暦五月が遅かったのであり、その翌年、翌々年と旧暦五月が早くなるに従って気温は下がっている。
 一方、芒種から半月の気温は毎年いくらも違わない。紛れもなく、気候は太陽暦に従っているのである。

20012002200320042005200620072008
旧暦五月一日6/216/115/316/186/75/276/156/4
芒種6/56/66/66/56/56/66/66/5

 この程度のことはデータを見るまでもなく容易に想像できることである。が、「旧暦どっぷり」の信奉者はそれでは納得しそうもないから、敢えて示したまでである。