追加

 四季のたたずまいを表す二十四節気が1カ月も移動する旧暦が、なぜ種まきや収穫の基準になる「農暦」なのでしょうか。現代の感覚では不合理に感じて当然ですよね。
 ところが、当時は比較する新暦は存在しないわけですから、前年の暦(旧暦)と比べて「大雪」の訪れが早いか遅いかで、その年の傾向を判断していたのです。
「旧暦どっぷり」2008.12.7
 「当時は新暦は存在しないから、前年と比べて『大雪』が早いか遅いかで、その年の傾向を判断し」たというのは、まさに大雪(節気)が季節の目安だということだろう。季節が旧暦で推移するのなら、節気が早かろうが遅かろうが、関係はないわけだ。「旧暦十月一日からが冬」なのだから。この下りはご自身の主張と全く矛盾していることに気付いてないのだろうか?

 都会の街路樹のイチョウ。そのギンナンの落ち始めた日を旧暦カレンダーに付けておきます。近所の山で、タラの芽を見つけた日も旧暦カレンダーに付けておきます。不思議なことに、次の年の旧暦の、ほぼ同じころに、同じ自然の姿やギンナンやタラの芽が見られるのです。
「旧暦どっぷり」2008.12.7
 ご自分でやってみたのだろうか?やった上で、人にモノを言うべきだろう。
 広島の旧暦五月上半期の平均気温が年によって4.5℃も違うことは既に述べた。それでも「季節は旧暦で推移する」というのなら、確たる証拠を示していただきたい。


 小林氏の旧暦勉強会のファンである衣料品卸会社の社長は、「ゴールデンウィークが旧暦の三月(春)に入るか四月(夏)に入るかで品揃えが変わる。旧暦を知らないと商機を失う」と言っておられます。「連休が旧暦三月の年は寒さが残るので、夏物のTシャツやタンクトップに、ベストなどの羽織物をそろえると売上が伸びる」
・・・
 旧暦カレンダーを愛用して十数年になる京都・宇治茶の生産農家のTさんも「八十八夜が新茶のシーズンという先入観があるため、本当の旬のお茶が消費者に渡らない。本当の旬は旧暦四月一日前後だ」。
 「二十四節気が旧暦のどこに来るかで天候予測ができる」という話は、繊維業界でも自然栽培の農家でも実証されているようです。
「旧暦どっぷり」2008.12.14

 匿名の二人ばかりの「証言」だけで何が「実証」なのか?
 「夏物にベストなどをそろえると売上が伸び」たとして、それは「寒さが残」ったためと何故言い切れるのか?他の要因については検討していないのだったら、ただの思い込みだろう。
 「連休が旧暦三月の年は寒さが残る」かどうかは、データで検証できることである。この程度のことは小一時間もあればできる。何故それをやらないのか、全く不思議である。

 ここまで来ると、これはもう一種の宗教である。カルトである。こういう人達には何を言っても無駄だろう。客観的な事実は無視して、自分達の教義だけに従っているのだから。
 しかし、大新聞がカルトに加担しているとなると、事は重大である。毎日新聞よ、真剣に考えて頂きたい。

Dec. 15, 2008

ゴールデンウィーク中(4月29日〜5月5日)の平均気温 大阪
20012002200320042005200620072008
気温℃17.119.819.818.920.918.018.920.6
旧暦四月一日4/245/125/15/195/84/285/175/5
 赤字は旧暦三月中
 青字は旧暦四月中

 ゴールデンウィーク中(4月29日〜5月5日)が旧暦三月に完全に含まれる2002,2004,2005,2007年の気温は特に低くない。むしろやや高めである。皮肉なことに、この期間が旧暦四月に完全に含まれる2001,2006年は、この8年間で低いほうから1,2番目である。これはたんなる偶然としても、「連休が旧暦三月の年は寒さが残る」という主張が大嘘であることははっきりした。
Dec. 19, 2008

 いずれにしても、月が地球に及ぼす力は巨大なものです。その力は海だけでなく陸にも作用します。北米大陸上に満月が来ると、大陸は15センチ持ち上がるといいます。
 地球の表面の70%は海で、人体も70%が水分ですから、月の引力は動植物のバイオリズムに大きな影響を及ぼすことが推測できますね。農暦が月と太陽の暦として創作されたのも、海や川の水の動きから気づいたことでしょうか。
「旧暦どっぷり」2009.1.18

 さて、どのように「巨大」なのか、さっぱりわからない。北米大陸が15cm持ち上がるからといって、それが巨大さの証拠になるのだろうか?何cmなら巨大じゃないのだろうか?
 「巨大」というからには具体的に数値で示していただきたい。月の引力なら、地球の引力と比較するのが分かり易いだろう。それはg(=9.8m/s2)という加速度に等しいことはよく知られている。
 月の引力はgより大きいだろうか?そんなはずはない。もしそうなら、地球上の物体は月に引かれて、地球に残れなくなるはずだから。
 それでは月の引力はgの何分の一だろうか?たとえば100分の1だったら「巨大」と言えるだろうか?それはわからないが、その場合についてちょっと考えてみよう。
 100グラム1万円の高級牛肉があるとする。月の引力(といっても実は潮汐力のこと)がgの100分の1だったら、満潮の時に秤に乗せたら99グラムと測定される。だから1万円のところを9900円で買える。牛肉なら少々高くても100円くらいの問題だが、これが貴金属だったらどうか?金を満潮時に買って干潮時に売れば簡単に利ざやを稼げてしまう。動植物のバイオリズム以前に、何故このことを考えないのか?いや、「旧暦を知らないと商機を失う」とおっしゃる人達だから、こんなことはとっくにおやりになっているのか?
 残念ながらそうではないはずだ。というのも実は、月の引力はgの100分の1なんていう「巨大な」ものではなくて、わずか30万分の1にすぎないからだ。これは「万有引力の法則」と、月の質量、月〜地球の距離を(理科年表などで)調べれば、あとは電卓でも計算できることである。しかもこれは満潮時にも干潮時にも同じように働く力なので実際には意味は無い。意味があるのは潮汐を起こす力、起潮力であるが、これはその引力のうち、地球上の場所によってわずかに異なる成分(偏差)である。これはその引力の30分の1、つまりgの900万分の1でしかないのだ。だから金の目方は満潮時でも干潮時でも変わらない。
 そんな小さな力で何故北米大陸が「15cmも持ち上がる」のかと疑問に思うかもしれない。しかし、地球の大きさを考えていただきたい。地球の半径は6400kmもある。gが900万分の1変化したら、地球半径もそのくらい変わるのが道理である。それは約70cmである。だからむしろ北米大陸は「たった15cmしか持ち上がらない」と言うべきなのである。岩盤はそんなに簡単に動かないということだろう。
 それでも、「北米大陸が15cmも持ち上がるのだから(それだけを根拠として)」、月の引力は巨大だと言うのなら、これは「巨大」の定義が違うのだから議論にならない。そうおっしゃるのはご自由。ただし、こんな小さな力では金の目方が変わらないのと同様に、70%が水分という人体に何らかの影響を及ぼすこともあり得ない。

Jan. 23, 2009
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