Ueberm Sternen Zelt Muss der lieber Vater wohnen |
銀座・由美ママ 男の粋は心意気 自己中心的な“天動説人間”は無粋 文 伊藤由美 朝日新聞デジタル 2016年1月7日 |
天動説と地動説をご存じかと思います。地球は宇宙の中心にあって、太陽や月、星が、地球の周りを回っているというのが、古代アレクサンドリアの地理学者クラウディオス・プトレマイオスが唱えた天動説。それに対して、ポーランドの天文学者ニコラウス・コペルニクスが唱えた考え方が、太陽を中心に、その周りを地球やほかの星が回っているという地動説ですね。 さて――。口を開けば自分の話ばかり。自分が興味のない話題になると、我関せずと黙り込む。自分以外の皆が盛り上がっていると不機嫌になる。自分が評価されれば喜ぶけれど、他人が評価されると嫉妬して喜べない。自分が中心にいないとおもしろくない。常に自分の考えが正しいと思い込み、押し付けようとする。そんなお山の大将のような自分勝手で自己中心的な人がいます。私は、そういうタイプの人のことを、自分を中心に世の中が回っていると考える“天動説人間”と名付けています。そういう人に限って、自分が他人から何か批判じみたことを言われると、すぐ激昂(げきこう)してケンカ腰になり、ものごとが自分の思い通りにならないと、相手や周囲、社会に問題があると考え出すから始末が悪いのですね。 例えば、聞いてほしい話があったとき、相手の都合も状況も考えず「聞いて、聞いて」とまくしたてるように一方的に話し続ける人がいます。その結果、相手が「?」となったり、相手に自分の話を否定されたりすると「あの人は私のことをわかってくれない」と思い込み、さらには「あの人は他人の話を聞かない」などと、話が通じない原因が、自分ではなく相手にあると考えてしまう。「自分に問題があるのかも」という発想にならないのもこのタイプにありがちな傾向と言えるでしょう。 なかには、聞き手のことなどお構いなしで、一方的に話して自分だけ満足するという困った強者もいます。しかし天文学の分野でも、地球中心で周囲が回る天動説が過去のものになっているように、人間社会においても、すべてが自分を中心に動いているという考え方は通用しません。人間同士のコミュニケーションにおいて、何でも「自分、自分」というゴリ押しなど、無粋以外の何ものでもないのです。天動説人間、つまり自分本位の発想が強い人からは、次第に人が離れていきます。ふと気が付けば、集団から孤立していたということにもなりかねません。 人間同士の付き合いの基本は、第一に相手のことを考える。会話ひとつを取ってみても、一歩引いて自分が聞き役に回ると、相手が気持ちよく話せるようになります。自分が脇役に徹することで、相手が気分よく主役になれるのです。 誰だって「この人といると気分がいい」と思える人と付き合いたいもの。そして、そう思わせてくれる人のことを知りたくなるものです。そうやって興味や関心を持ってもらえれば、自然に相手はこちらの話を聞きたくなるはず。そのときこそ、自分が堂々と主役になればいいのです。“自分が”を後にして、あえて脇役に徹する。それはつまり、自分本位ではなく“相手本位になる”ということ。周囲を思いやって、自分は脇役、引き立て役になるくらいの気持ちで人と接していれば、いつか周囲があなたを主役の座に押し上げてくれるはずです。 |