『アルマゲスト』と授時暦
Abstarct
 貞享暦は授時暦を基にしているが、 。ところで、そのオリジナルの授時暦日行盈縮は、プトレマイオス『アルマゲスト』の離心率から得られるものと非常に近い。さらに、宣明暦「入気定日加減数」もこれらとほとんど同じと言える。

  は春分から夏至までの日數が94 1/2日,夏至から秋分までが921/2日であることを示した後,これだけの事柄だけから,これらの中心間の直線は離心円のほぼ であること,夏至からそれに先立つ遠地點へは約24 1/2度であることを示した。
プトレマイオス『アルマゲスト』(藪内清訳pp132)

 また、
 ヒッパルコスの離心距離
  e=0.0413
(山本義隆『世界の見方の転換1』pp32,および同書『付記A−1』pp28)

授時暦
 中国元代の太陰太陽暦(1281年施行)。 なお、渋川春海によるわが国初の国産暦『貞享暦』も授時暦を基としている。

 いま円周上の任意点Sに太陽があるとし,
 ∠SEP=w,∠SOP=gとし,EO/PO=eとして,中心差Δは,
  Δ=w−g=esing+e2/2 sin2g
となる。楕円運動との比較により,eは楕円軌道の離心率(太陽では0.01693)の2倍となり,従ってe=0.03346である。Δが極値をとるのはg=88°.2ほどとなり、そのときのΔは1°.95ほどとなる。授時暦議の日行盈縮では としているが,かなり大きい。
藪内清/中山茂共著『授時暦−訳注と研究−』pp11

授時暦離心率

 アルマゲストに倣って


貞享暦

 ケプラーの離心率
  eK≒0.0167
  e≒2eK≒0.0334
なので、授時暦の0.0413 よりかなり正確。



 これからeを求めてみる。
*授時暦、アルマゲストとほとんど同じ。


 これからeを求めてみる。
*授時暦、アルマゲストとほとんど同じ。

入気定日加減数(=近点角15°ごとの日数)を授時暦、 について求めてみる




 ただし、xは近地点通過からの日数。




 ただし、xは遠地点通過からの日数。


・最小値は宣明暦、授時暦では0°〜15°の約14.5日、貞享暦では0°〜15°の約14.6日。
・最大値は宣明暦、授時暦では165°〜180°の約15.9日、貞享暦では165°〜180°の約15.8日。
・実際の値は14.7〜15.7日なので、貞享暦の精度はたしかに上がっている。
・日行盈縮に関する限り、授時暦と宣明暦に大きな差はない。さらにそれらはアルマゲストのモデルとも近い。それらに比べて貞享暦はたしかに進歩している。