ベゾス氏の“宇宙旅行”なんて大袈裟なバンジージャンプでしかない。

 2021年7月20日、ジェフ・ベゾス氏は初の民間の宇宙旅行を達成した。その宇宙船は地上105kmに達し、無重力を体験した。しかしこんなのは大袈裟なバンジージャンプでしかない。

無重力?
 バンジージャンプは重力によって落ちる。しかしその間、落ちてる本人には重力は感じられない。重力に対して抵抗が働かないからである。宇宙船も全く同じことである。
 いや、バンジージャンプは落ちて地球にぶつかるけど、宇宙船は落ちないじゃないか、と言うかもしれない。ところが宇宙船も落ちてるのだ。ただし、横にも飛んでいる。だからカーブを描いて落ちるんだが、そのカーブが地球の表面と同じだから、落ちても地球にぶつからない。それだけのことである。こんなことはニュートン力学を知っていれば簡単なことである。
 これはまた、見方を変えれば「地球を回る宇宙船では重力と遠心力が釣り合っている」とも言える。しかしこれは、地表スレスレでも秒速8km(時速28800km)で突っ走れば同じことが起こってやはり「無重力」と感じられる。もっとも地表ではすぐ障害物にぶつかるし空気抵抗も大きいので現実にはまず無理だが、それでもこの「無重力」が宇宙とは何の関係もないことはわかるだろう。
 そもそも宇宙に無重力の場所なんてない。地球から大きく離れれば(地上100kmなんてすぐそばではなく、何万km、何十万km、・・)地球の重力は弱くなるが、今度は太陽の重力が働く。太陽系から遠ざかっても他の恒星の重力がある。・・以下同様。

「空は黒く地球は青かった」
 1961年、初の宇宙飛行を行ったユーリ・ガガーリンはこう語ったとされ、これが宇宙から見た光景と思われている。ところが、普通の旅客機で地上1万メートル(10km)付近を飛んでも、同じとは言わないが似たような景色は見られるのである。
 そもそも、空は何故青いのか?実は、 。地上10kmまで行くと、空気の80%ほどは自分より下にあるから、それが青っぽく光って見え、自分より上には空気が20%しかないから黒くなる。ガガーリンが見たのはまさにこれなのである。
 それでも、地上10kmと100kmとでは随分違うだろう。それを見てみたいと思うのはわからないでもない。しかし旅客機なら10万円も払えば乗れる。10倍の地上100kmまで行くのに100万円くらいならまあリーズナブルかもしれない。しかし1000万円となると、これはもう金持ちの道楽でしかないだろう。

 それでも、60年前には歴史的偉業だったものが金持ちの道楽にまでは降りてきたとも言える。そして道楽で金を落とすことによって科学技術が発達するなら歓迎すべきことかもしれない。文明はそうやって進歩するんだろう。ただ、我々が一喜一憂するほどのことでもあるまい。

Jul. 2021
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