「…なぁ…そ、それって…マジな話なのかよ?」


 唖然とジュンの顔を眺めるレグルス
 信じられない、と彼の表情は語っていた

 歩く超常現象を恋人に持つ彼にここまで驚かれるジュンって一体…


「…それは人体に影響は無いのか?
 何と惨い事を…我には到底信じられぬ…」

 カイザルまでもが呆然としている
 時期魔王に〝惨い〟とまで言わせるほど酷い事をされているらしい

 ジュンは改めてゴールドへの恨みを膨らませた



「…何か、自分で言ってて悲しくなってきたな…」

 ふっ…と、ジュンは何処か遠くへ視線を向ける
 何で自分だけが驚愕のプレイに苛まれているのだろう

「だってよぉ…そんな行為、普通に考えて有り得ねぇよ」

 お前の恋人は行動そのものが有り得ない
 ジュンはそう言ってやりたい衝動を必死に抑える


「…尋常じゃない事も繰り返しているうちに、これが日常になって行く」

 …って、ついに自分で〝尋常じゃない〟って認めてしまった…

 ジュンに茜色の哀愁が漂う
 何処からか〝ご~ん〟という鐘の音が聞こえてきそうだ

 カイザルは無言でジュンの頭を撫ぜた
 レグルスも話題の転換を試みる



「でもよぉ…体格差ってのはマジで深刻だよな
 レンの野郎、身体も太いけどモノもでけぇんだ
 ったく…一歩間違うと凶器だぜ、あれはよ…」

「間違えなくても凶器そのもの
 俺は実際に何度か怪我してる」

 実際は怪我しない方が珍しい―――…あえて言わないけど


「…あ、オレも裂けた事あるぜ
 初めて見た時、そのまま逃げようかと思ったしよ」

 いや、逃げちゃ流石にマズいだろ
 それはそれでレンが気の毒だ

「まぁ…俺も思わず〝医者を呼べ〟って叫びたくなったが…」

 呼んでどうする


「ゴールドのデカさは城内では有名な噂であったぞ
 我は実物を見た事がないのだが―――…初めて見た感想は?」

 そこまで聞くんじゃねぇ
 レグルスは心の中でカイザルに突っ込んだ

 しかしジュンは顔色ひとつ使えずに答える


「そうですね…コーラが飲みたくなりました

 何で!?


 レグルスは裏拳と共に突っ込む
 苦笑いをしながらジュンは頭を掻いた

「…ちょっと…似てるんだ」

色が?


 色言うな!!

 レグルスはカイザルの頭に手刀を落とす
 年上だろうが王子だろうが突っ込み入れずにはいられない

「いや、いくら奴が腹黒くてもモノはそこまで黒く無い
 俺は学校でいつもペットボトルのコーラ飲んでたんだ
 容器を握った感じの太さや長さが似てると思って――…あ、500mlの奴な?」

 誰も1リットルだなんて思わねぇよ!!


「―――…って、それでも充分でけぇ!!」

 ペットボトルのコーラって、どの位の大きさだったっけ!?
 レグルスは今度買いに行った時には定規で測ってみようと思った

「そうか…ゴールドは馬並みなのだな…」

 しみじみと言うセリフじゃない

「そういう、リノライさんはどうなんですか?」

 ジュンが仕返しとばかりに切り返す
 するとカイザルは胸を張って答えた


「リノは―――…ちょろい


 ちょろい!?


 いや…〝ちょろい〟って…あんた…
 それは自信満々に言って良いものなのか…?

「ちょろいって、それはどういう意味で…」

「うむ、細い大した事ないから簡単だ」

 言われちゃってるよリノライ――――……っ!!(涙)
 ジュンとレグルスは心の中でリノライに向かって泣いた


「で、でも男は大きさだけじゃねぇよなっ!?
 一番重要なのはテクがあるかどうか――…」

「…テク…テクニックか…
 リノの場合はそれ以前の問題だな
 体力が無くて最後まで持たない…いつも途中で力尽きる

 まず体力作りから始めよう

「…今度、リノライも一緒にトレーニングしようぜ
 軽いウオーキングでも基礎体力は付くからよ…」

「そうだな…そう言っておこう
 せめて2分は持って欲しいし」

 2分!?


「…レンは2時間で3回くらいだぜ…
 オレとしては、もう少し早ぇ方が腰も楽なんだけどよ」

「ゴールドは前戯だけで1時間くらい費やすな…
 それだけで疲れて、最後は疲労困憊になってる」

 …それに比べて…2分って……
 いや、比べちゃ悪いとは思うけれど…

「欲求不満にならねぇか?」

「はっきり言って、最悪な気持ちだな
 気持ちよくなる前にダウンされるし…困ったものだ
 疲れ切ったリノはそれ以上何も出来ずに寝てしまう事もあるのだ」


 うわ、最悪


「…本気で魔法実験より体鍛えさせた方が良いんじゃねぇの?」

「運動不足は病気の原因にもなるから、健康の為にも鍛えた方が良いと思う」

 ジュンとレグルスは思った
 根本的に鍛えてやろう、と――…


 その時だった
 コン、コン、とドアがノックされる

「お楽しみの所失礼致します」

 聞こえてきたのはリノライの声
 ジュンがドアを開けると案の定そこには彼がいた


「…どうしたのだ?」

「予想していたよりも遥かに捗りまして…
 時間に余裕が出来たので一時休憩というわけでございます」

「じゃあ、今はヒマなんだな?」

「はい、仰るとおりでございますが―――…」




 ジュンとレグルスは素早くリノライの背後に回った
 そして彼の身体を左右からしっかり押さえつける

「カイザルさん、ジャージ貸して下さい
 あと、髪の毛を縛るゴム紐なんかも」

「うむ、了解した」

 魔法で瞬間移動するカイザル
 こういう時のチームワークは抜群らしい

「お待ち下さい、一体何事なのでございましょう?
 どうして私が―――…あぁっレグルス殿、脱がせないで下さいませ!!」

 が、ジュンとレグルスは聞く耳持たない
 使命感に燃える彼らはスポ魂の世界へと旅立っていた


「こんな革靴じゃ何もできねぇぜ」

「じゃあ裸足で良い
 土踏まずの形成にも役立つ

「あ、あの…お二人とも…!!」


「この杖どうすんだ?」

「その辺に転がしておいても邪魔
 傘立てにでも突っ込んでおけば良い」

「ご、後生でございますから…」


「あーもう、この服複雑な構造になってやがる
 どっから解けばいいんだ…全然剥けやしねぇ

「じゃあ両手万歳させてくれ
 上から全部引っこ抜く

「ひいぃぃぃ―――…」


 10分後…



「…も、もう動けません…お許しを…」

「まだまだ!!
 あと腕立て伏せ20回!!」

「その後は腹筋50回ですから」

「…な、何故…私がこのような目に…」


 泣きながらトレーニングをさせられるリノライ
 そんな彼を傍目から眺めながらカイザルは満足そうに笑っていた


 ラヴァーに物申す―――…

〝もっと鍛えろ〟


 ― END ―



 これまた元ネタは同人誌にござります
 …が、これはコメディアレンジされております

 ちなみに原作の同人誌では〝テク〟の話でした(笑)