電波の廻り込み

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YAESU FT DX 3000とスタンドマイクMD-100を用いて無線局の運用を開始して以来、自局音声モニターにはヘッドフォン(YAESU YH-77sta)を用いて来た。
使用後半年ほどの間、モニター音に何の異常も感じなかったが、半年後、PTT SWを押して声を出した時、音が歪む事に気付いた。変調音の歪みを感じないかと何局かの交信相手に訊いてみたところ、音が途切れる様に聞こえると言われた。

原因を探る試みとして下記を行った。
1.マイクの不具合かと、付属のハンドマイクに替えて見たが改善しない。
2.無線機自体を、予備機の積もりで免許を得ていたFT991Aに替えた。ヘッドフォンは同一品を使い、マイクも付属品とMD-100を用いた。この場合には変調音の歪みは感じなかった。
3.FT DX-3000のアンテナを50Ωのダミー抵抗に替えた。音声歪みは全く感じない。
この段階で、原因は無線機、マイク、ヘッドフォン、或いは接触不良などのハードウエアやアンテナではないだろうと考えた。
所謂、”廻り込み”かも知れない。それにしても何もしていないのに何故突然発生したのか、分からない。コモンモード成分が一つの原因になるとは知っていた。
4.電波障害対策に使うべく、大小のパッチン・コアをAmazonで購入して持っていたので、Rigとアンテナ・チューナー(Comet CAT-300)の間や、アンテナ・チューナーから出た同軸線に3ヶ〜5ヶのパッチン・コアを嵌めて見たが、効果無し。
5.コモンモード・チョークをRigとアンテナ・チューナー間、及び/又はアンテナチューナーの出力端子とアンテナへの同軸線の間へ入れた。効果無し。

ここで、メーカー八重洲無線のカストマー・センターへメールを送って相談した。

回答は
1.ダミーロードの結果から、無線機やマイクの問題ではないであろう。
2.無線機の種類によって廻り込み障害は異なる。(何がどう作用するかは無記載)
3.複数同軸線の取り回しや機器の配置。(具体的記述なし)。
4.同軸線の外被編み線とM型接線との半田付けの不具合(外被の”浮き”)
5.ヘッドフォンには”注意”とあった。(注意の具体的指示はない)。

3と4については注意深く点検したが問題は無い様であった。
ヘッドフォンのコードとマイクのコードにパッチン・コアを2ヶ挟んでみたが、効果は無かった。
これらの点検中には、夜間のバンド空き時間を狙って、時々試験電波を発射して、モニター音を聴いた。
点検を繰り返している内に、PTTを押して声を出した瞬間、大きく激しい「ガリガリ」音が聞こえた。
とうとう、試験電波を出すのも怖くなって、全くのお手上げ状態になった

ここで、偶然、モニターにヘッド・フォンでなく、Rigの内部スピーカーを使った。何と、変調音の歪みや「ガリガリ」音などが一切ない!!

・ヘッド・フォンのコードが受信アンテナとなって、自局発射電波を捉えるのか?
・モニター信号をRig後部のLine端子から引き出して、ヘッド・フォン・アンプを通したらどうなるか?
ヘッドフォン・アンプの自作を考え、ジャンク箱を漁ったが、ジャックのソケットがなく、アルミのケースも無かった。コロナ禍では秋葉原へ買いにも行けない。Amazonで捜したら、オーディオ・テクニカの既製品が3000円程で買える。態々自作するより買った方が安い(秋葉原までの往復電車賃と同程度)。早速ポチったら1週間で納品された。 結果は、ヘッドフォン・アンプの効果無し。
Rig後方のLine端子からヘッドフォン・アンプまでの信号線(単線のシールド線)は2m程度あり、この線が電波を拾う事もあろう。

そもそも、廻り込み現象による、変調音の歪みや異常雑音は、技術的には何と説明すればよいのか?廻り込みの発生メカニズムを知りたい。

疑問に答えるためには、せめて”廻り込み”症状が起こっている時に、その音声歪みや異常雑音を録音し、或いはオーディオ・スペクトルを観測することが必要だろう。

いや、ヘッドフォンだけではなかった!!
先日、14MHzで呼びかけた瞬間、モニターの内部スピーカーから廻り込みの歪み音が聞こえ、相手局からも指摘された。何かを意識的に変えたわけではなく突然に生じた。ただ、これで廻り込み問題において、ヘッドフォンが付随的な一契機ではあっても、本質的原因とは無関係であると分かり、ある意味で問題が単純になった。

パッチン・コアによるコモンモード フィルターの再検討

廻り込みの原因が分からないから、電波を出せないでは困ってしまう。これまで、パッチン・コアを同軸とマイクコードに挟んだことはあるが、廻り込み防止の効果はなかった。しかし、コアの特性やインピーダンスについてはろくに調べもせず、使うコアの数も精々3ヶであった。その後、Amazonで買った無銘コアの比透磁率やインピーダンス、或いは減衰量の測定を試み、またTDKのカタログを参照して、大凡の特性を知り、これらのコアを2,3ヶ使っても効果はないであろうと知った。
そこで、RigとMTUの間及びMTUからアンテナ迄の同軸線、更に、マイクロフォン・コードに手持ちで有るだけのコアを挟んでみた。同軸線には総計11ヶ、マイクコードには6ヶのパッチン・コアを使った。
結果は、内部スピーカーモニターの場合、今の処廻り込みは無くなった様だ。
パッチン・コアで廻り込みを抑えられたとすれば、コモン・モード電流が主因となるが、そのメカニズムが依然分からない。アンテナから発射された電波のコモン・モード分が、アンテナエレメントから数m下に置かれたマイクに達したのであろうが、SSB変調された高周波がどの様にして変調音を歪ませたり、強烈なガリガリ雑音を発生させるのか。それが分からない。


廻り込みによる変調音歪みの発生メカニズム(推察)

SSB電波の電圧波高値(Vm)は、キャリアーの周波数(fc)と振幅(Vc)、音声信号の周波数(fs)と振幅(Vs)、変調度(m=Vs/Vc)によって以下の如く書かれる。

Vm=1/2*m*Vc*cos(2π*(fc±fs)t)
複合±はLSBでは(-)、USBでは(+)をとる。

アンテナから発射されたこの高周波信号は、fの波長と同程度以下の距離に置かれた、送/受信機、マイクロフォン等に降って来る。この近距離の電波には、differential modeもcommon modeもあるだろう。何れにせよ、マイクロフォンを含む音声信号系には、高周波信号をバイパスするための何らかのフィルター(コンデンサーand/orコイル)が存在する。高周波信号Vmの殆ど全てはこれらのフィルターによって、入力信号系から徐去される。しかし、極く低いレベルのVm又は音声信号が徐去されずに、入力回路や高周波回路に入り込むかも知れない。極微弱な自局のSSB信号が仮に高周波出力段にまで行き着いたとしたら、正帰還となるだろう。或いは音声信号成分が音声増幅回路に入り込むかも知れない。(SSB信号の復調回路をもたないマイク入力系について、この推論の具体的根拠は乏しいが、オーディオ装置やインターフォンに対する電波障害と同質ではないだろうか?)。もし、この極微弱な音声声信号成分の位相が、マイクに入力された原音声信号と同位相であったとしたら、入力系の増幅回路の中で、正帰還となるだろう。さすれば、音声信号は繰り返し増幅されて、時に発振に至るレベルに達することもあるだろう。この場合はVs>Vc(即ち変調度m>1)の過変調となり、音声の歪が発症する。能動素子を持つあらゆる電子回路の入出力関係は大信号に対しては多かれ少なかれ非線形であるから、高調波歪みの発生は避けられない。発信するレベルに達していれば、出力段のクリップを引き起こし、猛烈な雑音とスプラッタに満ちた汚い電波ともなり得よう。・・・何れにせよ、無線機の回路を幅広く、かつ詳しく理解していないので、概念的・抽象的な推察に止まる。

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