パッチン・コアの高周波特性(3)
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(3-1)コア内径φ5mm、長さ20mmのパッチン・コアを4ヶ挟み込んだ、長さ140mmのビニル被覆銅線の場合
上記被覆銅線(外径:φ3.4mm、7本撚り、公称断面積:3.5mm2)の減衰量を手の平サイズのスペアナ(TinySA)を用いて測定した。
TinySAの操作と結果表示は専用ソフトウエアを通じてパソコンで行った。
信号発生器の出力インピーダンスとスペアナの入力インピーダンスは共に50Ωと等しいので、負荷を挟んで直結した。

先ず負荷を短絡して信号発生器の出力をスペアナに接続し、周波数を変えてスペアナの減衰量(dBm)をExcelに記録する。次いで負荷を接続して、同様の操作と記録を行う。

スペアナの測定画面の例
負荷の挿入損失(減衰量)は、負荷短絡時と接続時の減衰量の差である。

減衰量の周波数特性
40MHz以上で特性が暴れているが、信号発生器の出力電圧が周波数が上がるにつれて減少しているばかりか、出力インピーダンスも常に50Ω一定ではない事の他、バラック配線の好い加減な測定系に由るのかも知れない。
これらの減衰量から逆算でインピーダンスを求めることができる。計算式は下記の通り。
dBm=20*log(abs(2r/(2r+jX))
=20log(t)=y
t=10^(y/20)
t=2r/√(4r2+X2)
t2=4r2/(4r2+X2)
X=2r*√(1/t^2-1)

計算で求めたインピーダンス
周波数が40MHzまでは、Zはほぼ周波数に比例して増加しており、誘導性である。コアが一定の透磁率を有することを証していよう。40MHz以上では実験の信頼性に問題があり、周波数に依存しない成分が主になるか否か分からない。
コア1ヶ当たりのインピーダンスは、単に1/4とすれば、40Ω(10MHz)、110Ω(30MHz)であり、TDKの製品には相当品がない。この大きな周波数依存性は、4ヶのコアが隣同士で磁気的に結合して相互インダクタンスを持つ可能性を示すとは言えないだろうか?
(3-2)コア内径φ12、長さ27mmのパッチン・コアに外径φ4のアース用電線を3回巻きの場合
電線の公称断面積は3.5mm2、芯線はφ0.1mmであるが撚り線数は数えられない。全長250mmの線を上記コアに3回巻きした。測定法は(1)と同一の信号発生器とスペアナを用いた。
挿入損失と計算インピーダンスは下図の通りである。

減衰量の周波数特性(2)

計算で求めたインピーダンス(2)
このコアの場合、インピーダンスの周波数特性は正比例する領域が15MHz迄であり。これはLC共振法で求めたμr一定の周波数領域が15MHz程度であるとの結果を補強する。TDK製品ではZCAT2017-0930(-BK)が比較的近い。しかし、このページの(1)のコアを挟んだ電線のケースと異なる。電線材質の相違なのか、それともコアを線に挟むケースと、線をコアに巻き付けるケースの相違ななのかは、これまでの測定では分からない。一つの理由として、比較的大きな誘電率を持つビニール被覆線を3ターン巻いた為に生じた浮遊容量が考えられる。
40MHz以上における特性の暴れは、(1)のケースと同様の原因によるであろう。
(3-3)同軸線及び平行ビニル線のdifferential mode 電流に対するコアの無効性の確認
同軸線や平行線のDifferential mode電流については、互いに向きが逆で発生する磁界を打ち消し漏れ磁界はないから、パッチンコアを使う必要はなく無効であるとは知っている。しかし、自らの実験で確かめておくのは良い事だろう。
信号発生器の出力とTinySAとをBNC接栓付き同軸線で直接接続し、その同軸へφ5パッチン・コア5ヶを数珠繋ぎに挟み込み、信号発生器の出力は1.0Vp-pとした。平行ビニル線は屋内配線用電線で、信号発生器出力線及びTinySA入力線はみのむしクリップ付き同軸線を使った。コアの有無におけるスペアナ測定値の差を取ればよい。
結果は下図の通りで、平均値と標準偏差は、同軸線で-0.21dBm、0.35dBm、平行ビニル線で-0.1dBm、0.24dBmであり、実験誤差の範囲で減衰はなく、理論が実証された。

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