無線事始め
1.ラジオ少年の頃
2.一アマ受験
3.一陸技受験
ラジオ少年の頃
70数年昔の中学生時代の事だ。当時並3型とか並4型と言われるラジオがあった。3本か4本のST型真空管と、U字型磁石のマグネチックスピーカーから成っていた。
故障で鳴らなくなったそれらのラジオを近所から貰って来て、修理して受信できる様にした。
半田付を覚えたのもこの時だったが、当時、ヤニ入り半田は少なく、ペーストという酸化糊を使った。鋳掛け屋と呼ばれた職人がトタンの屋根や壁を作る時には、半田付けする部分に先ず薄めた塩酸を塗り、そこへSn-Pb合金半田を焼き鏝で溶かして流し込んだ。流石にラジオの部品付けには焼き鏝や塩酸を使う事はなく、代わりに60Wの電気半田鏝とペーストを使った。
中2〜3年にかけて、ST型真空管と手巻きコイル、羽根抜きバリコンなどを用いて短波受信機を組立て、アマ局の交信傍受に勤んだ。JA0〜JA8までAA、AB、AC等、開局の早い局を狙って傍受に励んだ。
同調コイル(ST管から外したべークライト脚部にエナメル線を巻きつけた)を差し替えてバーニアダイアルを少しずつ回し、7、14、28MHz(当時はMc)を渉猟した。受信に成功するとSWLカードを送って貰ったが、中に数枚のAA局があった。
しかし、JA4局のSWLは有ったかかどうか記憶が怪しい。これらのカードは大学生になった時、親戚の小学生に遣ってしまい、今は既にゴミとして焼き捨てられているだろう。今考えると惜しい事をした。日本のアマ無線黎明期の局が発行したQSL(SWL)カードは貴重であっただろう。
電気雑音の少なかった当時は、手作りの高1受信機(6D6+6C6+6ZP1)と逆Lアンテナで、日本全国のアマ無線局のCQコールや交信を傍受できた。CWのCQ、CQ de・・・とかSOSとかJJY(日本標準時)などは今でも容易に聴き取ることができる。
ジュラルミン製下敷きやアルマイト弁当箱をシャシーに利用した短波受信機を製作し、埼玉県中学生理科工作発表会で最優秀賞を貰った。50Mcを受信したくて、超再生回路による受信機を作ったが、使った玉が低周波用3極管で電極間容量が大きく、動作しなかった。
中学2年、物象斑長をしていたが、学校の文化祭で、2台のワイアレス・マイクを作って長い校舎の端同志で通信を試みた。マイクは無いので、U型磁石のマグネチック・スピーカーをマイクとスピーカーの兼用とし、送信と受信で切り替えて使った。電波が弱かったので、送信コイルの後ろに、1段増幅器を加えた。だが、逆に電波は弱くなってしまった。当時の私は高周波増幅器と低周波増幅器の違いを理解しておらず、低周波用の3極管をCR結合で繋いだのであった。これでは出力電波が増幅できる筈はなかった。理科の先生も、電子回路など詳しく知らないので、結局高周波増幅は諦めた。
この後、ミニチュア菅を使って5球スーパー式の全波受信機を作り短波を聴いていたが、昭和29年10月洞爺丸台風の通過によって、アンテナが倒されてしまったのを機に無線からは距離を置き始めた。
高校1年の昭和31年頃、同級生の1人が第2級アマ無線局を運用していたので、時に彼に替わって無線機(UZ-42 PP変調機とUY-807送信管を用いた彼の自作機。タバコのピースの空き缶で807を囲ってシールドしていた)を操作し、彼のコールサインで電波を出した。無線従事者免許を持たない者が無線機の操作をしたり、他人にのコールサインを用いたりしてはならない。電波法違反であった。アマ無線局の開局は憧れであったが、経済的理由と大学受験勉強のため諦めた。
高2の秋、NHKがFM放送の試験放送を始めたので、学校の部活費用を使って、秋葉原まで部品を買いに行き、チューナーを組み立てた。モノラルだったが、FM放送の音質が、それまでのAMラジオと比較にならない程良いのに驚いた。
当時「トリオ」は春日無線(株)であり、「パイオニア」は福音電気(株)であった。
高校の3年先輩にも、第2級アマ無線局を開局運用している人が居た。近所に住んでいたので、彼の家を訪ねて自作送信機やアンテナを見せて貰ったが、ある日、竹竿に括り付けた50Mcの自作ダイポールアンテナ(3エレの八木アンテナだったかも知れない)を、手動で回して指向性を上げる作業を手伝わされた。
私が大学に入学した当初、学校の学生寮の空きが無く、電車通学していたのだが、高校を出て直ぐに社会人になっていた彼と、同じ電車に乗り合わせると、服の上から指で、英文モールス符号を叩き合って短い話をした。その後、互いに住む所が変わったので、付き合いは途切れたままだ。数年前、たまたま妻の実家の菩提寺で彼が既に永遠の眠りについている事を知った。
一アマ受験
4月期の受験で、朝早く出るのは辛かったので、前夜は試験会場近くのホテルに泊まった。
英文モールス符号はすっかり忘れていたが、2014年、74歳での第1級アマ無線技士の試験前に、改めて一夜漬けで覚えた。従来は1アマの試験には、モールス符号の実技が科されていたが、数年前に実技試験は廃止され、単にペーパー試験だけになった。私が1アマの資格を取る気になったのは、この実技試験が廃止されたからで、筆記だけなら、容易に合格できると思った。予想通り、電波法規も無線工学もそれぞれ1問を誤っただけで合格した。欧文モールスの試験は法規に含まれ、アルファベットと数字の組み合わせや、Q符号などが出題され、得点配分は25/150であった。モールス試験も紙の上なら毎分何字という制限はないから、容易だった。とは言え一夜漬けは使い物にならない、直ぐにに忘れてしまった。
この試験の時、東京の試験会場、晴海の日本無線協会では、第2級からの昇級を狙う者と、新規に第1級を狙う者とは部屋が別だったらしい。私が受けた部屋はガラガラで受験者数は20名程度であった思うが、昇級を目指す組の部屋は満室に見えた。私と同室の受験者の中に、余り若くはなさそうなご夫婦らしい一組が居たが、2人は合格しただろうか?午前中に課された法規試験を終えて、廊下で昼飯の握り飯を食べていたら、昇級狙いのある受験者が、「全然分からなかった、いきなり1級ですか?」と声を掛けて来た。「7割の合格ラインは楽勝でしょう。1級でも2級でもペーパー試験だから一緒ですよ」と答えたら、「kW局を運用したくて1アマ昇級を狙ったのだが、ダメかなあ・・・」と溜息をついた。
一アマの資格は取得したものの、直ちに開局には至らなかった。20年に亘って苦しめられたC型肝炎の治療が続いていたばかりか、腰椎の脊柱管狭窄症の手術が待っていた故だ。また、病気が治ったら郷里の生家に転居する予定だったので、開局は転居の後にしたいと考えてもいたからだ。
こうして2019年6月に79歳で転居の後、同年12月末に無線機を買って局免申請を行い、JJ1VWPの呼び出し符号(コールサイン)を貰った。コールは再配布の由であるが、JJのPrefixは私が最後で、2020年以降の再配布コールのPrefixはJKである。
一陸技受験
一アマの免許取得後一年を経て、特段の目的も必要性もあるわけではないが、第一級陸上無線技術士(一陸技)の免許に挑んだ。
試験科目は「無線工学の基礎」、「無線工学A」、「無線工学B」の3技術分野、及び「電波法規」であり、技術3科目の詳細内容は以下の通りである。
「基礎」:電気物理、電磁気、電気回路、電子回路、論理回路、半導体と電子管、電磁気測定。
「工学A」:発振・増幅、変調・復調、デジタル伝送・デジタル変復調、送信機・受信機、システム・通信方式、テレビジョン、電源・雑音、無線設備測定。
「工学B」:アンテナの基礎理論と実例、給電線と整合、電波伝搬、アンテナと給電線の測定。
以上の様に、範囲が非常に広く多岐に亘り、高専か大学の電気工学科もしくは通信工学科における2〜3年分の学習内容に相当するだろう。私は60年程以前の昔、この類の分野を専攻して大学を卆えているので、一定の基礎知識は有してはいるが、「無線」とは殆ど無縁の電気材料の研究・開発を職として来たので、それなりの受験準備が必要だった。古い教科書を見直したり、過去問に当たったりしたのだが、理解力、記憶力共に低下している70代後半での受験勉強は、必ずしも容易ではなく、ある種の酔狂と言えるかもしれない。実際、受験者の数名は制服・制帽(防衛大?)姿であり、年配者と雖もせいぜい40歳代に見え、恐らくは就職か仕事の上で必要に迫られた者であっただろう。
試験は毎年、夏期(8月)と冬期(1月)の2回実施され、4科目が2日間の日程で課される。1日目は「基礎」と「工学A」、2日目は「工学B」と「法規」である。私は2017年夏期に受験したが、この際も試験会場(東京晴海)の近くに宿泊した。
アマ無線の試験と同様、一問毎にマークシート方式で正解を選ぶのだが、合格基準は60/100であり、アマ無線試験の70/100よりも甘い。25%程度と言われる合格率を上げる為でもあろうか?
結果は技術科目は3科目とも80/100以上の得点で合格したが、法規は58/100と2点不足であった。科目合格が許されているので、法規のみ翌年1月に再受験し、2018年2月(77歳時)に資格を取得した。
一陸技はプロの資格であり、放送局、基地局、中継局、災害局など、陸上(船と航空機以外)の無線設備であれば何であれ、操作可能である。ただし、個人無線局としての電波の送信は4級アマ局と同一で、空中線電力10Wを超える無線機を操作することはできない。また、この資格は日本国内でのみ通用し、国際資格であるアマチュア無線技士とは異なる。
本有資格者で実務経験5年を有する者は、無線設備操作の管理監督者たる主任無線従事者の候補となり得るが、選任された場合には、選任の日から6ヶ月以内に総務大臣の行う講習を受ける必要がある。
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