う、嘘… 投稿者:UMA 投稿日:4月1日(日)00時28分
「んー、今日はいい天気だなー。絶好の旅行日和ってやつだな」
そういって耕一は大きく伸びをする。

「そうだねー、お兄ちゃん」
初音も耕一にならって深呼吸した。

ぽかぽかと暖かいある日、耕一と初音は仲良く手を繋いで散歩していた。
ちょっと着飾った初音の格好と手に持った旅行カバンが示す通り、二人は旅行
に出かけるところだ。
旅行の行き先は先日オープンしたばかりのUSJ。
二人とも学校が休みということもあり、泊まりがけで行くつもりらしい。

「ところで初音ちゃん」
「なぁに?」
「ああ…。実はな、旅行に行く前に言おうと思っていたことがあるんだ」
耕一は、いつになく真剣な表情で初音を見つめる。

「今日から4月だろ?これを機に俺、ミユリストやめようと思ってるんだ」
「え…。ええっ!!」
真剣にそう言った耕一に、初音はびっくりした。

「だから、今度出る『アイドル雀士 スーチーパイ デスクトップで遊んじゃお
う』も買わないよ!」
「お…お兄ちゃん…。それ、ホント…?」
「…なんていったら、やっぱ驚くね」
「ふえ…?」
初音は驚いたまま聞き返す。

「なーんちゃって。嘘だよーん!だまされた、だまされた」
「え…。ええっ!!」
思い切りおちゃらけて言う耕一に初音はまた、びっくりした。

「今日はエイプリルフールだろ?びっくりした?」
「び…びっくりしたよー。お兄ちゃんが急にそんな話しするんだもん…」
今の話しが本当だったら…と少しは期待していた初音は残念そうで、語尾がだ
んだん弱くなっていく。

「ははっ、ゴメンゴメン。驚かせたお詫びに、旅行の間はずーっと初音ちゃん
の命令をなんだって聞いちゃうよ」
「本当?また『エイプリルフールだよーん』ってことは無いわよね」
「本当だよ。じゃあ早速お姫様、なんなりとご命令を」
耕一は恭しく初音の右手をとる。

「うんと…。じゃあ初音『ゆーえすじぇい』に行きたい!お兄ちゃん『ゆーえ
すじぇい』行こうよぉ」
「了解でござる。『USJ』でございますな。…って、これから俺たちが行く
所じゃん」
「だぁってー。初音、お兄ちゃんに命令なんてできないもん…」
初音はもじもじとしながら、そういった。

「ははっ。こぉいつー」
つん。
耕一は初音のおでこを指で突いた。

「あう…。もー、お兄ちゃんったらぁ…!」
「あははは」
「くすくす」
そういって二人は笑いながら駅舎の方へ消えていった。

・
・
・

「…そーいや、今日はエイプリルフールだったっけ」
その、耕一達をぼーっと眺めていた男が居た。浩之だった。
彼はあかりとデートの待ち合わせに駅前に来ているのだが、少し早くつきすぎ
たので往来の人々を眺めて暇を潰していたのだ。耕一達を眺めていたのは、単
なる偶然だろう。

「エイプリルフールってことは、たいていの嘘は許されるって事だもんな。う
ん、俺もあかりをだましてみようっと」
「お待たせ浩之ちゃん。待った?」
「うぉ!?あ、あかりか」
「ん?どうしたの?」
と、浩之が心に決めた頃、あかりが現れた。駅前の時計を見ると待ち合わせの
時間ジャストだった。

「いや…。俺も今さっきついたところさ」
「そうなの?ねえ、今日はどこに行こうっか」
いいながら腕を絡めてくるあかり。

「その前にあかり。大事な話があるんだ」
「え?」
あかりは浩之の手を握ったまま浩之の顔を見つめる。

「あのな…」
「何?浩之ちゃん」
「あのな俺、さくらのファンやめるよ!来月出る、『さくらのお道具箱』も買
わないよ!!」
「ひ、浩之ちゃん…」

『やった、あかりは驚いている。俺の勝ちだ!』
と浩之は心の中でガッツポーズを取る。

「ひ…浩之ちゃん、それ本当?」
「ああ、本当だぜ…と言いたい所だが」
「?」
「なぁんてな!今日はエイプリルフールだぜ、あかり。だまされんなよ」
「え…。そうなの…」
浩之は大げさに言うと、あかりは表情を曇らせる。

「…じゃあ、やっぱり嘘…?」
「『さくらのお道具箱』のことかい?買うつもりだよ」
「え?私は『浩之ちゃんがさくらちゃんのファン』の方が嘘だと思ったんだけ
ど?」
「え?…あ」
浩之は忘れていた。あかりをだます、ということに気を取られていて、あかり
の前ではさくらファンじゃない、ってことにしていることを…。

「あ…う…」
「ねえ、どういうことなの?」
ずい、と迫るあかり。ハタから見たら彼女がキスを迫っている仲のいいカップ
ルのように見えるが、実際は彼女の殺気で萎縮している仲のいいカップルだっ
たりする。

「ははっ…、ははっ…。こ、こぉいつぅ…」
浩之は苦し紛れ…というかごまかすため…に、あかりのおでこを指で指で突こ
うとした。だが、

びすっ!
あかりの『こいつカウンター』が先に浩之のおでこにヒット!浩之はのけぞっ
た。
さらにその直後、あかりは片足をあげてスーパーコンボを発動、画面を暗転さ
せる。どうやら、あかりの『こいつカウンター』は瞬獄殺コマンドの一部だっ
たようだ

がしっ。
至近距離にいた浩之は回避するヒマもなく、あかりに捕まれた。

どかかかかっ…。
かかーっ!!

曙フィニッシュとともにあかりの背後に浮かぶ『天』の文字。
あかりの瞬獄殺で浩之はダウンした。

「浩之ちゃん、こんな所で寝てたら風邪引いちゃうよ?」
あかりは浩之を抱き起こしながらクスッと苦笑する。いつもの『しょうがない
なあ、浩之ちゃんは…』という顔だ。

「うふふ…。浩之ちゃん、今日のデートは浩之ちゃんのお家に行こうね。そし
て、ゆーっくりお話しようね」
「…」
浩之は返事がない。ただの屍のようだ。
その後あかりは浩之を抱えたままは浩之の家に向かった。



<おしまい>
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どうも『USO(うそ)とUSJ(ユニバーサルスタジオジャパン)をかけてみま
した』のUMAです。

#アルファベット2文字しかあってないじゃん、てのは無し(笑)

今回は2001年04月のイベントSSのお題である
『エイプリルフール』
で書いてみました。

USJは儂は今んとこと行った事ありませんが、オープンしたばっかりだし、
旬のうちに使っちゃえってことで(汗)



ぢゃ、そういうこって。
でわでわ〜(^_^)/~