「うふふ…」 初音は、右手の指輪を見つめて微笑む。 「嬉しいかい、初音ちゃん」 「うん、お兄ちゃん!」 言いながら初音は耕一の腕に抱きつく。 今日二人はクリスマスということもあって神戸のルミナリエに行ったのだが、 その帰りに通りで売っていた指輪を耕一は初音に買ってあげたのだ。 「良かったね。…ん?」 「うわぁ?どうしたの、お兄ちゃん」 耕一は急に立ち止まってキョロキョロと辺りを見渡す。耕一が止まったことで 後ろに引っ張られる形になった初音が耕一に聞く。 「いや…。今、み〜ちゃんの声が聞こえた気がしたんだが…」 「気のせいじゃないかなぁ。近くにゲーセンあるけど、最近のゲームには出て ないでしょ?」 「うーん…、そうかなぁ…」 と、耕一が腕組みをしようとした、まさにその瞬間。 『どれにする?ちょこれーと?』 「このっ、声はぁぁぁっ!!」 耕一は声の発生源を探す。さっきは分からなかったが、今度は台詞も長いこと もあって探しやすいらしい。すると、近くの同人ショップが目に入る。 元々耕一は同人系には疎いせいもあって、同人ゲームはまったくチェックして なかったのだ。 しかしさすがはミユリスト・イヤーの持ち主の耕一。ただ歩いているだけでも 一瞬声を聞けば聞き分けできるようだ。 「初音ちゃん!済まないが、先にゲーム屋に行っていてくれ!買うソフトは分 かってるだろ?」 「ええっ!?お兄ちゃんは?」 「俺か?俺は美優里ちゃんを保護してくるっ!!」 言うが早いか、耕一は同人ショップへと入っていった。 「お、お兄ちゃん!?…ん、もう…」 ぷーっと頬を膨らませる初音だったが、耕一の言いつけ通りゲームショップへ と向かった。 『美優里ちゃんをくださいっ!!』 という、耕一のいつもの台詞を遠くに聞きながら。 ・ ・ ・ 「えっと…。すいませーん。『ふぁんたしーすたーおんらいん』予約してたん ですけど…」 初音はカウンターにつくと、ポシェットからゲームの予約証を取り出す。 「へい、らっしゃい。あれ、お嬢ちゃん。今日は一人かい?偉いねぇ、お使い なんだ」 「ううん違うの。お兄ちゃんと一緒だよ」 「あれ、でもお兄さんはどこにもいないみたいだけど?」 「うん…っと…。ちょっとお兄ちゃんは近くのお店に用があるとかで…」 「ふぅん?あ、ソフトの予約だったっけ。ちょっと待っててね」 訝しんだまま店員はソフト棚の裏に回る。 ・ ・ ・ 「お待たせ、初音ちゃん」 暫くすると同人ショップへと向かった耕一がやってきた。 「お兄ちゃん、早かったね。ゲームは今、出して貰ってるところだよ。美優里 ちゃんの方は?」 「ばっちりだよ。ほら」 と言ってCD−ROMが入っているとおぼしき紙袋を見せる。ゲームのジャン ルはいわゆる落ちモノアクションパズルゲーム。反射神経もさることながら、 いかに連鎖を仕掛けられるかというテクニックも要求されるジャンルだ。 その後、無事ソフトを買えた二人はパーティの準備の整った我が家へと帰って いった。 <おしまい> ---------------------------------------------------------------------- どうも『不意打ちを喰らいました。マジで』のUMAです。 今回は2000年12月のイベントSSのお題である 『クリスマス』 で書いてみました。 先日、とある同人CDを探しに同人ショップに行ったのですが、目的のCDが 無かったので諦めて帰ろうとした丁度そのとき、偶然耳に入ってきたのが『う さぎ倶楽部』ってサークルの『対戦パズルアクション!ぷるぷるまじっく』の デモシーンのみ〜ちゃんの声(笑) 儂って同人って明るい方じゃない(QOHやカノソといったリーフ・key系ゲ ームは知ってるけど)ので、無警戒だっただけにマジでビビりましたわ。 その直後にはそのソフトを持ってカウンターへと向かったのは言うまでもない ことです(をい ぢゃ、そういうこって。 でわでわ〜(^_^)/~