うま 投稿者:UMA 投稿日:10月1日(日)00時51分
「祐くん、祐くん。あのね…」
そういって沙織は祐介の耳元に顔を近づける。

「あのね…。えっと…。『なむみょーほーれんげーきょー…』」
「ええっ!?」
祐介が驚くのも無理もない。いきなり沙織は祐介の耳元で念仏を唱え始めたの
だ。

「ちょ、ちょっと待ってよ沙織ちゃん!いきなり呪文唱えたりして、どうした
んだよ」
「呪文じゃないよ、念仏だよ。長瀬先生がさっきの授業で言ってたでしょ?」
「D組の授業のこと僕に言われても分からないって」
誰も覚えていないかもしれないが、祐介がB組。そして沙織がD組に在籍して
いるのだ。

「あ、そうか。えっとね今日の現国の時にことわざの話しになったのよ。そし
たら、クラスの男子が長瀬先生に『馬の耳に念仏って、先生にも当てはまるん
ですか』って質問したのよ」
「ふーん」
「でね、先生は笑いながら『そんなわけあるかい!』って」
沙織はクラスメートや先生の物まねを交えつつ、祐介に話した。

「…で、沙織ちゃんは僕でそのことわざと試してみたかったってことかい?」
「うん!でも、やっぱりことわざは本当だね。祐くんに念仏唱えてもありがた
みが全然分からなかったもんね」
「う…。確かに念仏のありがたみは分からなかったけど…」
かなり顔を引きつらせながら祐介は言った。

「でしょでしょ?」
沙織は心底嬉しそうだ。

「でも、僕って馬かなー」
「だって祐くんってあの馬面の長瀬先生の親戚でしょ?ってことは祐くんもい
ずれ馬面になるってことじゃない?」
「ぐっ…!!」
祐介は日頃忘れよう、忘れようとしていた動かしがたい事実を沙織から告げら
れる。

「そーかぁ、僕って馬だったのかぁ…ははっ。そうだよね…。長瀬一族の一員
だもんね…」
「あ…。だ、大丈夫!今の祐くんは立派な人間だから!ね!!」
言いながら祐介の腕に抱きつく沙織だった。
だが、あまりフォローになっていない気もするが気のせいだろう。



<おしまい>
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どうも『UMAの耳に念仏(をい)』のUMAです。

今回は2000年10月のイベントSSのお題である
『ことわざ』
で書いてみました。

『UMA(読み仮名は”うま”)』ていうハンドルなんだし、せっかくだから
『馬』にまつわることわざにしちゃえってことで(笑)

#ハンドルの由来は馬好きだから、とかじゃないけど

ぢゃ、そういうこって。でわでわ〜(^_^)/~