日本フカシ話 シンデレラ第1話 投稿者:UMA 投稿日:8月31日(木)23時15分
「こんばんわー、桜井あさひでーす。今日は、隆山小学校の創立記念ってこと
で、来ています。小学生のみんな、こんばんわー!!」
舞台からあさひが挨拶をして、マイクを観客席にいる小学生達に向ける。する
と、ほぼ全員が元気な声で

『こんばんわー!!』
と返してくる。

「うわぁ、元気だねー。みんな、宿題はやったのかな?もう夏休み終わっちゃ
うぞ。じゃあ今度は、おっきなお友達、こんばんわー!!」
今度は、父兄と称しているもののあさひちゃん目的で来ていることがバレバレ
の連中がいそうな方へマイクを向ける。すると、

「こんばんわー、あさひちゃーん!!」
と少数ながらも元気に返事を返す。

「はい、こんばんわ。みんな、今日は『劇団りーふ』のお芝居、シンデレラを
思いっきり楽しんでね!」
あさひは元気に手を振りながら舞台の袖に消えていった。
今日は緒方英二が新人発掘を目的に興した『劇団りーふ』の公演日だ。
もちろん、劇団員の全員が新人という訳ではないが平均年齢が若いのは確かで
ある。
ちなみに演じる劇のお題目は、会場が小学校ということもあって童話のシンデ
レラだ。

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(幕があがる)
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(ナレーション:桜井あさひ)
 『むかしむかし、あるところにシンデレラという娘が継母と一緒に住んでい
  ました。シンデレラは継母から、いつもいつも虐められていました』

「シンデレラッ!シンデレラッ!!」
「なぁに、お母さん」
継母(LV4スフィー)は怒りながらシンデレラを呼ぶ。
呼ばれて舞台の袖から出てきたみすぼらしい少女がシンデレラ(初音)だ。
手に雑巾を持っているのを見ると、どうやら掃除中だったみたいである。

「『なぁに』じゃないわよ。あたしのホットケーキ、どうしたのよ?」
「え?食べ残しと思って、捨てちゃったわよ」
「食べ残しって…。まだ全然、箸つけてなかったわよ!!」
「あれ?そうだったかし…」
「『まじかるさんだぁぁぁ!!』」
シンデレラが言い終わる前に、継母は電撃魔法を唱えた。
呪文発動と同時に、継母の辺りに煙りが立ちこめる。その直後、煙の中の彼女
の指先から一条の光がシンデレラに延びていく!

「きゃぁっ!!」
びりびりびり…。
雷撃魔法はシンデレラに直撃!
ヒットした瞬間、レントゲン写真のように骨格が見えるのは格ゲー的な演出で
ある。

「Oh!シンデレラ、ここにいましたカ」
「な…なぁに、お姉ちゃん…」
シンデレラが吹き飛ばされた先には、姉(レミィ)が腕組みをして立っていた。
シンデレラは電撃でしびれて、うまく喋れないみたいである。

「ワタシの部屋、掃除した?」
「う、うん。きっ昨日、頼まれてたから…」
「じゃあ、ハンティング用のライフル、どこに片づけたの?」
「あれはね、お姉ちゃん、狩猟の免許とか持ってないでしょ?だから、銃刀法
で捕まらないように、って思って、闇のルートで処分しておい…え?」

『だすっ!』
凍り付いた笑顔のまま、シンデレラが足元を見ると、そこにはたった今突き刺
さったとおぼしき矢が刺さっている。
恐る恐るシンデレラが姉の方へ視線を向けると、『ハンターモード』へ移行し
た姉がロングボウを構えているのが見える。

「おおお、お姉ちゃん。どどど、どうしたの?」
「獲物…」
姉の目は完全に据わっており、次の矢をつがえている。当然、モードチェンジ
した彼女への説得は一切無効だ。

『だすっ!!』
2発目の矢がシンデレラの頭部をかすめて、部屋の奥に飾ってある絵画に突き
刺さった。

「ふえっ、ふえっ…。ふえぇぇぇぇぇぇぇぇん!!」
あまりの恐ろしさに、シンデレラは泣きながらその場から逃げ出し、舞台の袖
へ消えた。

「Hey!獲物は黙って殺されるのを待つアルよ!!」
「お待ちっ!『まじかるさんだぁぁぁ!!』」
姉が怪しい中国人訛りで叫びつつシンデレラを追おうとするが、継母がそれを
無理矢理魔法で制する。

「…Why?」
どうやら姉は今の一撃で姉は正気に戻ったようだ。

「今日はお城の舞踏会の日でしょ。あんなのほっといて、あなたも着ていく衣
装を選びなさい」
「あ…そうだデシタ」
「そうそう、それでいいのよ。それにしても、あたし達を招待するなんてここ
の王子って目が高いわねー」
「Yes!このまま王子に取り入って『玉の輿』ネ!!」
「そのときはお母さんにも、思い切り贅沢させなさいね。応援してるわよ」
継母と姉は舞踏会に着ていくドレスを選んでいると、恐る恐るシンデレラが部
屋に入ってくる。そして、

「あのぉ、私も舞踏会に…」
と、口を開くが

「ダメ!」
「No!」
シンデレラの申し出を二人は速攻で却下する。とりつく島もない、というヤツ
だ。

「あなたみたいな小汚い娘がいたら、この娘の邪魔になるでしょ。それに、着
ていくドレスがあるのかしら、シンデレラさん?」
「んー。確か、mamaが再婚したときにシンデレラの服は処分したハズね」
「そういうこと。さ、どうするのかしら?」
「ふぇ…」
「はいはい、泣いてるヒマがあったらさっさと洗濯する!」
シンデレラが泣き出しそうになると、継母と姉に強引に部屋の外に追い出され
てしまった。

「…ふう。あ、服選んだみたいね?」
「Yes」
「じゃあ、奥の部屋で着替えましょ」
そして、継母たちが部屋から出て暫くするとシンデレラが入ってくる。

「いいなぁ…。私も舞踏会、行きたかったなぁ…。でも、お母さんの言うよう
にお洋服持ってないし…」
と、継母達を見送ったシンデレラがつぶやいていると、

「だいじょうぶ、私が舞踏会に連れていってあげるよ」
するとそこへ、ピンク色の近代的な魔法少女ライクなコスチュームを着た魔法
使い(瑞希)が現れた。

「えっと…どなた様でしょう?」
「私は、森に住む魔女よ。私の魔法であなたをお城の舞踏会に連れていってあ
げるわ」
「え?でも私、綺麗なお洋服とか持って…」
「だいじょうぶ、『チャーム』!!」
「きゃっ!?」
シンデレラが抗議しようとするが、魔法使いは魔法のカードを使う。

『ぶしゅーっ!!』
と、吹き出した煙でシンデレラは足元から包まれていく。

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「え…。これって…?」
そして煙が晴れると彼女が着ていた服はとても綺麗なドレスに替わっていた。
見事な早変わりだ。

「『チャーム』は幻影系の初歩の魔法で『魅力値』を上げる魔法。それで、あ
なたの服が綺麗なドレスに見えるって訳」
「へえええ…」
魔女が使用魔法について簡単に説明すると、生まれて初めて綺麗なドレスを着
たシンデレラはしげしげとドレスを見る。

「でね、その魔法の持続時間は術者のレベルによるんだけど、わたしのレベル
が高いからざっと見て3時間。夜の12時くらいまでは保つわ」
「ふーん…って、『持続時間』?」
「うん、持続時間。魔法が切れる30秒前になったら胸のカラータイマーが点
滅して知らせるわ」
魔法使いに言われて、胸にある大きな青い宝石に気がつく。どうやらこれが、
カラータイマーらしい。

「説明終わり。じゃあ、時間もないことだし、お城に行ってらっしゃい」
「い、行くってどうやって?歩いていくの?」
「ううん。あそこにある『ハイパーゴージャスウルトラ三輪車』であなたをお
城にお連れするわ」
「おおー」
魔法使いが指さす先には、スポットライトに照らされた2頭の馬に引かれてい
るゴージャスな乗り物があった。
「これが『ハイパーなんとか』ですかー」
「そぉいうこと。じゃ、いってらしゃーい」

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「シンデレラーッ!あれ?どこにいったの?まあ、いいわ。あたしたち、出か
けるから、留守番よろしくねー!」
着飾った継母と姉が再び部屋に入ってくると、そう告げて再び部屋から出てい
った。



<第1話終わり・つづく>
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どうも『めっちゃ遅くなりました』のUMAです。

今回は2000年08月のイベントSSのお題である『夜の学校+クロスオーバー』
で書いてみました。

一応補足しておくと『夜の隆山小学校の講堂で、リーフキャラがいる劇団が公
演を行う』という、強引な設定です(汗)

シンデレラで書こうとは前々から思っていたので、今回無理矢理使っちゃいま
した。

なお今回は少し長くなったので1話で終わりませんでした。