夏だ、神戸だ、花火大会だ 投稿者:UMA 投稿日:7月31日(月)23時27分
「お、始まったみたいだな」
「え?あ…」
智子がそういって海を見ると一つの火の玉が上る。

どーん!

やがて火の玉は大きな音と共に夜空に大輪の花を咲かせる。
花火大会の始まりだ。

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今日は神戸のメリケンパーク沖で行われる『みなとこうべ海上花火大会』だ。
これは今月20日から続く神戸祭りのイベントの一つで、港町神戸らしく海辺
で行われるあたりが面白い。

「やっぱり夏は花火だよなー」
「うん、綺麗やねー」
空を見上げる浩之にそっと寄り添う浴衣姿の智子。

「そういえば藤田くん…」
「ん?」
「今日は何で神戸に居んの?旅行か何か?」
夕方、智子が友人からドタキャン喰らって仕方なく一人でメリケンパークまで
来たら、そこに何故か浩之がいたのだ。

「うん。まあ、そんなところだ」
曖昧に答える浩之。

「やっぱり旅行なんだ。ってことは、神岸さんも一緒?」
「い?ななななんでここであかりが出てくるんだ。第一、あかりに今日神戸に
来ることは言ってないぞ」
智子の質問に思い切り狼狽える浩之。

「え、一人?だって、二人って付き合っとるんやろ?違うん?じゃあ、二人が
付き合ってるって噂、あれってデマやったんか」
「え…と…」
『っしゃぁぁぁっ!これで私にもチャンスがある訳やねっ!!』
浩之に答える隙を与えず、一気に妄想の世界へ突っ走った智子は心の中でガッ
ツポーズを取る。



すると、そこへ
「だーれだ?」
と、浩之の背後から気配を消して近づき目隠しをする女性が現れた。

「…あ、あかり…。どうしてここに…」
「ぴんぽん、ぴんぽぉぉぉん。大正解〜!!」
恐怖で引きつった声で答える浩之に対して、とっても明るい笑顔を向けたのは
神岸あかりだった。

「か、神岸さん、こんばんわ」
目の前にいる人の背後に回るまで、完全に気配を消してその存在を微塵も感じ
させずに近づいたあかりに、智子は完全にビビった。

「保科さん。こんばんわ。あ、その浴衣かわいいなー」
「え?あ…。あ、ありがとう」
「じゃあ浩之ちゃん。一緒に花火見よっ」
ぐいっ。
浴衣の話しで智子の気をそらしたあかりは浩之の腕を引っ張る。

「!ちょい待ちっ!!」
「え、何?保科さん」
智子はあかりが引っ張る手の反対側の腕を掴んでいる。ついでに空いた腕を浩
之の首に引っかける。

「藤田くんは私と花火見るんや」
「え?」
「さっき藤田くんは『俺、委員長と花火がみたいんだ』って言ってんねんで」
「え?え?…本当なの、浩之ちゃん?」
「…がっ…」
浩之が答えようとするが、智子が浩之の頭を押さえつけて強引に頷かせる。当
然、浩之の意志とは別に。

「な、ホンマやろ?」
「…って痛いだろ、委員長!」
「ええやん。藤田くんかて、神岸さんより私と花火見たいんやろ」
「強引に頷かせて俺の意志はどうなるんだよっ!」
「…私、帰る」
浩之と智子の漫才(?)を見ていたあかりがそう呟く。うつむいてるので表情は
見えないが泣いてるようだ。

「え…あかり…?」
「神岸さんは一人寂しゅう帰りぃ!私らはゆっくり花火見てるわ」
「…」
智子がそういうと、あかりは何も言わずに走り去った。

「さ、邪魔者は居らんくなったわ。ゆっくり花火見物しよ。…藤田くん?」
「…委員長…。俺、やっぱりあかりが…。ごめん…って、え?」
浩之が両手を合わせて智子に謝ったその瞬間、周囲が暗転して智子が隠し持っ
ていたハリセンに光が集まる。スーパーコンボ発動のサインだ。

「やっぱり!藤田くんはっ!神岸さんと!付き合って!たんじゃないの!馬鹿
ぁぁぁっ!!」
これはハリセンでどつきまわす乱舞系のスーパーコンボ、真・炎のツッコミ乱
れ打ちだ。
しかも、智子は途中をキャンセルでEX飛翔斬、さらにジャンプの頂点でEX
流星脚へ繋いで浩之を遠くへ蹴り飛ばしたのだ。
ちなみに最後の『馬鹿ぁぁぁっ!!』の部分がEX飛翔斬の部分だ。

「ほげぇぇぇ!!」
切りもみ状になって吹き飛ぶ浩之。

ごすっ!ずざぁぁぁっ!!
「げはっげはっ…。うん?あかり…か」
「…うん」
浩之が吹き飛ばされた先は、偶然か、狙ったのかは分からないがあかりの足下
だった。

「…と。ごめんな、あかり。…って、こんな時に言っても全然説得力ないな」
「ううん、いいの…。それより、一緒に花火…見て、いいかな…?」
「ああ…。あかりが見たいなら、俺はいいぜ」
「うん!」
あかりはズタボロになった浩之を壁際に座らせると、自分もその横に座った。

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「ねえ、浩之ちゃん。浩之ちゃんは『打ち上げ花火』と『仕掛け花火』と、ど
っちが好き?」
「唐突だなー」
「答えてよ」
「うーん、やっぱ派手な『打ち上げ花火』かな?」
「…わかったわ」
「え゛?まさかっ!!」
あかりの雰囲気がちょっぴり変わったのを敏感に察知した浩之は座ったまま後
ずさりする。
その直後、周囲が暗転してあかりの右拳のあたりに光が集まる。スーパーコン
ボ発動のサインだ。

そして、暗転が終わるとあかりは昇竜拳を連発する。昇竜裂破…いや、滅殺豪
昇竜だろうか。しかし、後ずさりしたのが幸いしたのか浩之はガードが間に合
ったようだ。

『くっ!打ち上げ花火→スーパーコンボフィニッシュ→曙フィニッシュ…って
ことなのかぁぁぁ?』
と、ガードしながら即座に思った浩之は、

「ま、待てあかり!やっぱり俺は『仕掛け花火』の方が好きだぜ!!」
と叫んだ。するとあかりは、

「うん、いいわよ」
と、にっこりと微笑んであかりはあっさり了承した。そして3発目の昇竜拳を
キャンセルさせて片足で立って周囲を暗転させる。

「うそぉぉぉ!!」
浩之は叫ぶが嘘ではない。あかりは瞬獄殺でキャンセルしたのだ。
この技はガード不可の一種の投技。ガード硬直の浩之にはジャンプで避ける余
裕すら残されていない。

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そして、神戸の夜に『天』の文字をかたどった花火があがったという。



<おしまい>
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どうも『これでも神戸市民なんよ』のUMAです。

今回は2000年07月のイベントSSのお題である『夏祭り』で書いてみました。

儂の住んでる神戸市の夏まつりである『第30回神戸夏まつり』より、『みな
とこうべ海上花火大会』をネタに書いてみました。

が、全然花火大会っぽくないですね(汗)



ぢゃ、そういうこっって。でわでわ〜(^^)/