夏だ、旅行だ、ゲーセンだ 投稿者:UMA 投稿日:7月31日(月)23時24分
「あ、お兄ちゃん。こんなところにストIIダッシュがあるよ」
「本当だ。懐かしいなぁ。しかも対戦台じゃないか」

耕一と初音の二人は今、旅行中で観光のためにある街に立ち寄っている。二人
は何気なく通りすがりのアミューズメント施設に入ったのだが、そこで初音が
偶然ストリートファイターIIダッシュの対戦台を見つけたのだ。
見た目は最新のアミューズメント機器が普通においてある、ごく普通のアミュ
ーズメント施設なのだが、店の奥にはオールドゲームコーナーがあるという、
古いゲーマーにも楽しめる総合娯楽施設だったのだ。

耕一達の周囲は、『I'm your friend!』『Destroy the core』『Get ready!』
といった音声合成やPSG音源・FM音源のチープながらも味のあるBGMが
聞こえ、いかにも昔の『ゲーセン』的なサウンドに包まれている。
当然並んでるゲームも、固定画面ドットイートゲームや月面基地から仲間を救
出するゲームといった古典的なゲームから、最近でも続編が作られているアイ
ヌ娘が何気に有名な剣格格ゲーや初音が見つけたの無職の格闘家が主人公の格
ゲーのシリーズ初期のタイトルまで、結構たくさん揃っているのだ。

「すっげー懐かしいなぁ」
「うん。そうだねー」
言いながら、懐かしそうにインストカードを眺める耕一と初音。
ちなみにこの台は対戦台で、今は1P側では誰かがガイルでプレイ中である。
しかも、連続技の種類や難易度から見て腕もかなりのものだ。スコアの下二桁
がゼロでないことから、すでに何人か対戦者を倒した猛者に違いない。

「お兄ちゃん、乱入したら?ダッシュは得意でしょ」
初音は、パンダさんの形をしたポーチから財布を取り出しながら耕一に聞く。

「そりゃ、昔はな。しかし今でもダッシュで戦えるかなぁ」
ストIIダッシュがでて早数年。今ではストIIIですらオールドゲームの一つに
数えられる、そんな時代だ。

「大丈夫だって。ダッシュのときのリュウって早くて速い波動拳と無敵の竜巻
旋風脚、それに確実にダウンする弱昇竜拳がそろってるんだから。ね?」
初音は、耕一の持ちキャラがこの頃からずーっとリュウなのを知ってる。だか
ら当時のリュウの強さを強調して、あおる。
なお、リュウの竜巻旋風脚が無敵なのは技の出際(上り)と、終わり際(下り)の
間だけなので注意されたい。

「それもそうだな。よーし、久しぶりにダッシュやってみるか!」
「うわーい!」
初音に簡単におだてられた耕一は、自信満々で2P側に座りコインを入れる。
そして、耕一がダッシュカラーのリュウを選んで対戦開始だ。

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『らうんど、わん。ふぁいっ!!』
波止場ステージで対峙するガイルとリュウ。
ここは、CPUケンのステージだ。背景の船がシリーズを重ねるに従って豪華
になっていくというステージとして有名だ。

「さーて、どう料理してやろうか…って、何っ!!」
バックジャンプで間合をあけた耕一は、相手のガイルを見て驚いた。その場に
しゃがみ込んでいたのだ。

「待ちガイル…か」
耕一はぽつりとつぶやく。
待ちガイルとは、溜め系の必殺技であるサマーソルトキックとソニックブーム
を溜めつつ相手の攻撃に対処するという、防御を主眼とした戦法だ。

「ならば、いぶりだしてやるだけだ!いくぜっ!!」
耕一はレバーを回してボタンを押す。

『はどぉぉぉけんっ!』
『そにっぶー』
ガイルは、リュウの波動拳をソニックブームでたたき落とすが、また待ちの体
制に戻る。待ちガイルの典型的なパターンだ。

『はどぉぉぉけんっ!はどぉぉぉけんっ!』
リュウはそんなことはお構いなしに弱、強と、立て続けに波動拳を連射してガ
イルにプレッシャーを与える。
するとガイルは、3発目の波動拳を垂直ジャンプでかわした。どうやら次の波
動拳のタイミングでリュウにジャンプ攻撃を仕掛けるつもりだ。

びっ!
ガイルのジャンプ攻撃に対してリュウはハイキックを放つがガイルには届かな
い。キックを出すのが早すぎたようだ。

「お兄ちゃん危ない!」
リュウのピンチに叫ぶ初音。

「かかったっ!」
だが耕一はにやりと笑う。どうやらこの展開を読んでいたらしい。
実は、波動拳のレバー操作のあとにキックボタンを押すという一種のフェイン
ト技、『足波動拳』を使ったのだ。これは、波動拳と比較して硬直の短い弱キ
ックを波動拳と同じタイミングで使う事で、相手のジャンプ攻撃を誘うという
効果があるのだ。
そして、まんまと引っかかったガイルがリュウの攻撃レンジに入った瞬間、

『しょぉぉぉりゅぅぅぅけんっ!!』
波動昇竜拳が見事に決まった瞬間である。
当然、昇竜拳は確実にダウンする弱だ。

ぱぁぁぁん!
旧ストIIシリーズ独特のヒット音とともに、ガイルはダウンする。しかも昇竜
拳を根本でヒットさせたからダメージも大きい。
そして、リュウはジャンプキックでガイルの起きあがりを攻める。定石通りに
めくりぎみに、だ。

ぶおん!
案の定ガイルは起きあがりにサマーソルトでリュウを迎撃を試みるが、リュウ
すでには着地しており、ガードされる。
先ほどのリュウのジャンプキックはやや早め出してあって、相手のリバーサル
攻撃を誘っていただけなのだ。

『しょぉぉぉりゅぅぅぅけんっ!!』
そして、空中から隙だらけでに降りてきたガイルに根本昇竜拳をたたき込んで
ピヨらせるリュウ。そして、ふらふらになって起きあがってきたガイルにとど
めのアッパー強昇竜拳を喰らわせた。

ぱぁん、ぱぁぁぁぁん!!
『しょぉぉぉりゅぅぅぅけんっ!!』
『うおあ、ぅぉぁ、…!!』
『ゆー、ういん』
画面内でリュウは拳をあげて勝ちをアピールする。
このラウンドは、耕一の読み勝ち、といったところか。

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・

2ラウンド目は波動昇竜拳のタイミングを読まれて、ジャンプパンチ→アッパ
ーサマー(ガイルの代表的な連続技)や、ソニック裏拳(弱ソニックブームと同
時に遠距離強パンチを当てる連続技)で一方的に攻められてガイルの勝ち。
耕一がリバーサル昇竜拳をミスったのも敗因だろう。
そして3ラウンド目は両者ともにもてる技を出し合った結果、僅差でリュウが
勝利を得た。

「ふう。久しぶりでもなんとかなるもんだな。まさに『昔取った杵柄』ってヤ
ツだな」
「お兄ちゃん、すごーい。あ、バルログが乱入してきたよ」
「相手にとって不足なし!かかってきな!!」

その後、周りにいたギャラリーが次々と耕一のリュウに乱入してきたが同キャ
ラのリュウに負けるまで、耕一の連勝は12まで続いた。

「やっぱりお兄ちゃんってすごーい!」
初音は目を輝かせて耕一を迎える。

「いやぁ、さすがに数年のブランクは大きいよ。そうだ、初音ちゃんも乱入し
てみるかい?」
「え?初音はいいよ。あのリュウ、お兄ちゃんでもかなわなかったんだもん」
「そうか。じゃあ、別のゲームしようか。何がいい?」
「うんと…。お兄ちゃんと一緒に出来るのがいいなー。あ、じゃあ…」

・
・
・

それから暫く二人は、泡で包んで敵をやっつける怪獣のゲームや、キャラはか
わいいんだけど攻撃方法が槍で敵を突いて地べたに叩きつけるという結構えげ
つないゲームや、守銭奴のような神の子と緑色の原住民の冒険ゲームや、元祖
友情ぶちこわし兄弟ゲームなどで遊んだ。

「ふう、遊んだ遊んだ。やっぱ昔のゲームって面白いよなー」
と、耕一。
別に最近のゲームがつまらないという訳じゃなく、ゲームタイトル自体が少な
かった頃は、一つのゲームに割ける時間が多くなるために記憶に残りやすいの
だが、それが彼の記憶の中で美化されて『昔のゲームは面白い』となったのだ
ろう。



二人が店内を歩いてると、店内スピーカの有線が『蛍の光』に変わる。閉店の
サインだ。

「あ、もうこんな時間。そろそろホテルに戻んないと」
初音は左腕の黄色いピカチューな腕時計を見る。それにつられて耕一ものぞき
見る。

「何っ!…あ、本当だ。仕方ない。すっげー名残惜しいけど、帰ろっか」
「うん」
言って耕一の腕に抱きつく初音。

「あ、お兄ちゃん。ダッシュの対戦、まだ続いてるみたいだよ」
二人が出口に向かう途中、何気なくダッシュの対戦台を覗くと1Pも2Pもス
コアの下二桁の数字がさっき耕一がプレイしたときよりずいぶん増えているの
が見えた。
時間的に考えて、その数は耕一が乱入した時からの累計分に違いない。
ちなみに今戦っているのはダルシムはすぐドリと小スラで相手を翻弄する戦法
のダルシムと、ほとんど迎撃しかしない典型的な待ちガイルのようだ。
そして、待ちきれずにジャンプ→すぐドリを繰り出したダルシムをサマーソル
トキックでたたき落としてガイルが勝利した。

「やっぱ、待ちガイルはサギ強いぜ…」
「うん…」
そう呟く二人だった。



<二人とも、観光はどうした・おしまい>
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どうも『レトロゲーム万歳!』のUMAです。

今回は2000年07月のイベントSSのお題である『三題噺(犬、間違い、昔話)』
で書いてみました。

最初は耕一と初音がキャンプに行くって話しを書いていたんですけど、そのと
き『間違い』を『マッチが要る』として使おうとして、『まっちがいる』と入
力して変換キーを押したら『マッチガイル』とATOKが楽しい変換をしてく
れたのは神のいたずらか(笑)
まだ冒頭の辺りしか書いてなかったこともあって速攻で軌道修正して書き上が
ったのが今回のお話です。

なお、ストIIダッシュについての記述はほとんど記憶に頼って書いてますので
誤記が含まれてる可能性があります(汗)



以下に、三題噺の各お題目をどこで使ったかを記します。
・犬  …ゲーセンの情景描写
     …アイヌ娘が何気に有名な…
・間違い…ストIIダッシュ乱入直後の耕一の台詞
     「待ちガイル…か」
・昔話 …ストIIダッシュ乱入直前の耕一の台詞
     「そりゃ、昔はな。しかし今でもダッシュで戦えるかなぁ」

今回はお題目の言葉を全部ひねった使い方してます。

       ・・        ・・
「犬」  →「いぬ」    →「あいぬむすめ」

       ・・・・     ・・・・
「間違い」→「まちがい」  →「まちがいる」

       ・・・・・・   ・・・・・ ・
「昔話」 →「むかしはなし」→「むかしはな。しかし」



ぢゃ、そういうこって。でわでわ〜(^^)/