Treasure Hunter (解答編) R/D版 投稿者:R/D 投稿日:3月28日(水)23時51分
「漢字だよ」
 祐介が胸を張って言う。沙織は首をかしげた。
「漢字…って」
「もう一度、問題の紙をよく見てよ」
 沙織は頷いてその紙を見る。

           宝のありかをここにしめす
          そこには3本の木が並んでいる
        1本目の木のそばには白色のものがある
       2本目の木は他の2本にくらべてずっと太い
      3本目の木のそばにくると涼やかな風が吹いている
        みつけるべきものはそこにかくされている

「1本目は『木』のそばに『白』がある。木の隣に白と書いたら、何と読めるかな」
「えーっと、『柏』になるよね」
「そう。次に2本目。これは他の2本に比べて太い。『柏』の中にある木偏より太いのは
『木』という文字そのものさ」
「…あっ」
「分かる? この二つをあわせると『柏木』になるんだよ」
「そっか。そうすると」
「3本目は『木』のそばに『風』、即ち『楓』。きっと柏木楓さんがコインを持っている
んだと思う」
 祐介は自信を持って断言した。沙織は黙って紙を見つめている。
「…沙織ちゃん?」
「…………」
「何かおかしいところでもあるかな」
「おかしくはない、けど」
「けど?」
「別の解釈もできるんじゃないかしら」
 沙織は顔を上げて祐介を真っ直ぐに見る。祐介は少し不機嫌そうな顔で彼女を見返す。
「そうかな? これが一番妥当な解釈だと思うけど」
「まあ待ってよ。1本目は『木のそばに白色のもの』でしょ?」
「そうなってるね」
「木の隣に白で『柏』はいいけど、柏の木そのものは別に白くないと思う」
「いや、それは」
「柏と関係して、なおかつ白いもの。これって柏餅じゃないかしら」
「…はあ?」
 呆気に取られる祐介。それを無視して沙織は話を続ける。
「次は漢字なら『木』ね。これって木から取るパルプ、つまり『紙』を意味しているとも
考えられるわよね」
「いや、あまり考えられないと思うけど」
「紙といえば新聞紙。子供のころに新聞紙を使って兜を作ったこと、あるでしょ」
「それが何の関係があるの?」
「最後は『木のそばに涼やかな風』。冬の風なら『冷たい風』という表現になるでしょう
から、この風は多分春か秋。新緑の五月の風なんてちょうどいいじゃないかしら」
「あのー」
「柏餅、新聞紙の兜、そして五月の風。この3つのキーワードが意味することはずばり、
端午の節句ね」
「どうやったらそんな結論になるんだ」
「この宝捜しの主催は鶴来屋、つまり柏木一族よ。柏木家の中で端午の節句に関係あるの
はただ一人。そう、実は宝物とは耕一さんのことだったのよっ。さあっ、そうと分かれば
さっそく耕一さんをゲット…」
「ちょーっと待ったーっ」
 土煙を上げて駆け寄ってきた柏木梓に突き飛ばされる祐介。沙織の前で足を止めた梓は
沙織の顔を正面から睨みつける。慌てて目をそらして口笛を吹き始める沙織。
「…こんなところで何をしているのかな、千鶴姉」
「あ、あら、何のことかしら。私は新城さおりんよ」
「本物の新城さんとは胸の大きさが違う」
「そ、そんなことないわよっ。ちゃんとパッドを入れて…」
 失言に気づいて顔をしかめる沙織。梓がニヤリと笑う。
「…ふっ。バレちゃ仕方ないわね」
 首筋に手を伸ばし、ゆっくりとマスクを取り外す。沙織の顔の下から現れたのは鶴来屋
会長、柏木千鶴の姿だった。
「そ、そんな。いつの間に入れ替わったんだ」
 祐介は地面に倒れたまま唖然として千鶴を見つめる。千鶴は妖艶な微笑みを浮かべる。
「さ、沙織ちゃんはどこに」
「大丈夫。命に別状はないわ」
「別状があってたまるかっ」
「梓。今回は私の負けね」
 祐介の抗議を無視して窓際に近づく千鶴。
「でも、忘れないでね。私はいつの日にか必ず耕一さんを手に入れて見せるわっ」
「何だと」
 千鶴は窓を勢いよく開け放つ。窓の外には今まさに気球が浮かび上がろうとしていた。
気嚢にはでっかく『ちーちゃん参上』と書いてある。
「逃げるのかっ」
「ほーほほほほほっ。また会いましょう皆さん。それでは、アディオス・アミーゴっ」
 気球へ飛び移る千鶴。慌てて窓際に駆け寄った梓は、おーほほほほほほほほほほほほほ
と高笑いを上げながら上空へ逃げ去る彼女を地団太踏んで見送るのであった。

 土曜ワイド劇場
 湯けむり旅情 謎の暗号に秘められた財宝が惨劇を呼ぶ、怪女二十面相の正体とは!?
                                       完

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