みんな。 投稿者:ATA 投稿日:6月24日(日)23時22分
水瀬名雪は部室で他の部員と供に、
競技大会のへの練習プログラムを顧問と組んでいた。
名雪はもうすぐマラソンに出場するのだ。
それも、全国大会である。
名雪はふぅっと、息を吐きながら背伸びをした。
「水瀬、練習は今までよりもキツくなるが…お前なら大丈夫だろう」
「はい、先生。頑張りますっ」
名雪は力を込めて明るい声で言った。
「よし、早速トレーニングをするぞ、今日は35kmからだ」
「はいっ!」

名雪は運動場に出て、準備運動を始めた。

準備運動が一通り終わると、名雪は原付に乗った先生と供に、
校門から出て、ものみの丘へと走っていった。
フォームを整えながら呼吸を無意識のうちに整えていく。
「水瀬!もっとペースをあげろ!!」
顧問に言われ、意識的にペースが下がらないように気を付けながら、
走る。
只只走る。
それは自分でも走っていて楽しいからだ。
走ることは楽しい。
それに気付いたのは小学校の頃だ。
祐一に拒絶され、無気力気味になっていた自分が集中できたもの。
それがマラソンだった。
悲しみを忘れようと走った。
だが、いつの間にかそれが自分にとってとても大切な時間に変わった。
走ることは楽しいのだ。
そう思ったとき、名雪は中学に入ったら陸上部に入ろうと思い始めていた。
さすがに最初の頃は回りとの実力の差に驚かされた。
と言っても、自分と同じくらいに始めた部員も居たので最初はその部員達と、
一緒に練習したりしていた。
でも、自分はもっと速くなろうとした。
だから努力した。
マラソン専門誌も買うようになって、色々学んだ。
何時しか名雪は陸上部一のトップランナーになっていた。
それは才能でもなんでもない。
努力。
日々の惜しみない練習によるものだった。
「水瀬!ペースが落ちているぞ!」
考え事をしていたせいでペースが落ちたらしい。
気を付けてもう一度ペースを上げる。
息が苦しい。
でも、もっと負担を掛けなければ。
負担を掛けて、鉄の心臓を作り上げるのだ。
心臓が破裂しそうになるくらい負担を掛ける。
もっと、速く成るために。
もっと長く走れるために。




〜水瀬家〜

「ただ今〜」
「あら、名雪。お帰りなさい、もうすぐご飯よ、早く着替えてらっしゃい」
「はーい」
名雪は2階へ上がり、着替えを済ますとリビングへ降りた。
「名雪、もうすぐレースなのか?」
祐一が声を掛ける。
「駄目だよ、祐一。帰ってきたらお帰りさない、だよ」
「おかえり」
「ただいま」
「で、レースもうすぐなのか?」
「うん、あと1ヶ月後くらいかな」
「それで帰りが遅いのか」
因みに、今は8時半だ。
「うん、…遅かったら先に食べててくれてもいいんだよ?」
「気にするなよ。俺は家族揃って食べたいんだ」
本当は名雪と一緒に食べたいんだ、
と言い書けたが恥ずかしくて祐一は言わなかった。
「まぁ、無理だけは止めておけよ、怪我したらレースに関わる」
「うん、ありがと。祐一」



〜レース当日〜


特に怪我も故障もしないで当日の地区予選まで来れた。
そして、お母さんに尤も効率の良い食事に、この2週間前から変えている。
体調も良い。
天候は曇り。
ベストコンディションだ。
雪国生まれのため、寒い方が走りやすい。
今日こそはいける。
1年の時は50位だった。
悔しかった。
学年が上の者も居るから当然と言えば当然なのだが。
それでも悔しかった。
それから1年間。
鍛えに鍛えた。
今日こそは入賞してみせる。
プレッシャーがある。
でも、そのプレッシャーすら楽しめるようになっている。
今日こそは…。
お母さんは仕事を休んで来てくれた。
祐一も来てくれた。
真琴も来てくれた。
去年とは違う、今年は祐一が応援してくれている。
だから…今日こそは――。
アナウンスが流れた。
後10分で始まる。
ウォームアップは万端。
顧問はいつも通りに行けと言った。
スタートラインに立つ。

あと、7分。
あと、6分。
緊張する。
あと5分。
あと4分。
もし…抜かれたら…。
あと3分。
そんな弱気でどうする。
あと2分。
今日こそは勝つんだ。
あと、1分。
集中しろ。
――スタート!



10km地点。
先頭集団に入り込んだ。
それも先頭を走っている。
プレッシャー。
ランナーの強敵。
負けない。
負けてなるものか。
20km地点。
先頭集団の真ん中になっている。
マグロのようだ。
駄目だ、このままでは。
30km地点。
先頭集団の後方。
駄目だ。
このペースは駄目だ。
このままでは。
35キロ。
先頭集団に着いているのが不思議なくらいだ。
息が苦しい。
抜かれるたびに泣きそうになる。
厭だ。
もう駄目だ。
今年も駄目なのか。
今年は――祐一も見ているのに。
祐一――。
そうだ、祐一だ。
何処に…。



居た。


「名雪ぃぃぃぃぃぃ!!!!!」



祐一。



「頑張れぇぇぇぇぇ!!!!!」



うん、私、頑張るよ。
祐一が……祐一がずっと応援してきてくれたの知っているから。
言わなくても解ってたから。
もう―――負けないよ。


――ペースが上がる。



「名雪ーー!しっかり!!」



お母さん。
うん、しっかりするよ。

――ペースが上がる。
苦しくない。



「名雪!!頑張りなさいよぉ!!」



真琴。
うん、頑張るよ。





―――ペースが上がる。
気が付けば前には誰も居なく――。
――後ろには先頭集団が居た。









・
・
・
・




ゴールッ。
1位で入賞。
やったよ。
祐一。
祐一やお母さん真琴。
みんなが応援してくれてたんだね。
有り難う。
みんな。
嬉しいよ。
みんな。
「名雪、やったわね」
お母さん。
「名雪! 凄い!! 凄い!! 漫画みたいだったよ!」
真琴。
「名雪!―――良くやったな」
――ゆういち。

有り難う。
有り難う、みんな。
みんな。

「名雪、泣くなよなぁ、優勝したんだしさ」
「うん……御免…ね」
「なんで謝るんだよ」
「うん…変だよね…ひっく」
「ホラ、名雪これで涙拭けよ」
祐一がタオルを渡してくれる。
「お前は俺の彼女なんだからさ」
有り難う。
本当に有り難う、祐一。




一通り泣き終わった私は優勝台にたった。
人より高い位置でメダルを貰い、トロフィーを受け取った。

記者の人達が私を取り囲んだ。
色々な事を聞かれた。
有る記者がこう聞いた。

「最後のラストスパートは何を考えて走ったの?」

私はこういった。

「―――応援してくれた、みんなの事ですっ」


(完)


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後書き


つーわけで、助造さん主催のSSバトル2作目。
もー、ネタ無いですよ。
さすがに。
矢張り、ぽんぽん量産する人は凄いですわ。
真似出来ないですね。
今回は宿敵夏樹さんを倒すために、
他のSSで使おうと思ってたネタを披露したわけです。
……他の連載どうしよう(汗)
投稿2回目のATAでした。
あと、俺がシリアス書けないと思ってる人達がほとんどなので、
今回はシリアスに。

大した内容でなくて御免なさい。
全国大会とか適当に書いてるんで、間違ってたら御免なさい。
へっぽこランナーで御免なさい。
……俺も速く成りたいです。

では。


http://www.asm.ne.jp/~atayan/

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