あおのかがやき 投稿者:akia 投稿日:7月31日(火)22時00分
『コレを詠美に・・・』

「和樹・・・もう少し、寄って行けば良いのに」
一人残った部屋で、詠美はため息をついた。久々に会えた和樹に、何かを言いたかったの
だが、用事があると言って帰ってしまったのである。
「へ〜、ウチがいない間に和樹来たんか」
「ちょっとパンダ!勝手に人の部屋に入って来ないでよ!」
七月の晴天。突然の来訪者は、詠美の部屋に問答無用で上がりこんできた。
「しゃーないやろ、和樹の所に入ったら留守やったさかい、涼みに来れる場所言うたら、
ココしかないしな」
そう言い、由宇は勝手にエアコンの当たる位置に移動する。
「ああーっパンダ!何勝手に詠美ちゃん様の専用席に座ってるのよ!」
「うるさい!それよりなんや、なんで和樹がココに来る」
ギンと詠美を一睨みする由宇。思わずたじろぎつつも、
「べ、別になんでもないわよ」
詠美はシラを切って見せる。
「そうかい・・・てっきり十八になった記念に、和樹から何か貰ったのか思ったんやけど
な」
「な、ななななななななななななななななな、わたしは三月生まれなんだから、それじゃ
なくて」
どもり、震えながら詠美は由宇を指差す。
「ビンゴやな。さっさと見せ」
「どうして!」
「どうしてもこうしてもあるかい!さっさと見せんと、大阪湾に沈めるぞ!」
「ふみゅー」
そして、詠美は仕方なく水槽を指差した。
「・・・魚?」
見れば、水槽の中にビニールの袋が入れてあって、その中に青いメタリック的な色彩を放つ小魚が泳いでいた。
「ネオンテトラ」
詠美は囁くように言う。
「なんや、熱帯魚か・・・ん」
何か引っかかるのか、由宇は眉間にしわを寄せて青い魚を見る。
「な、何よ!」
「いっぴき、にひき、さんびき、よんひき・・・」
ぶつぶつ言いながら、由宇はその青い魚を数え始める。
「じゅうろっぴき、じゅうななひき」
そして、由宇はため息と共に、詠美を指差した。
「じゅうはっぴきかい」
「な、なんでわたしが魚なのよ!」
「四ヶ月前、バイトやって金貯める言うたけど・・・なんや、ショックやな」
ガックリと肩を落とす由宇。
「何が!」
「ウチ帰る。邪魔したな」
「ちょっとパンダ!」
「気づいてないんやったら、その青い魚見てみい」
「え?」
由宇に言われるがまま、詠美が見てみる。
「ネオンテトラ・・・」
つぶやきつつ、詠美はビニール袋を水槽から取りだし、注視した。
「!」
メタリックブルーの輝きの中に、別な青の輝きが有る事を・・・。
「これ指輪」
銀の台座にはまった青い輝き。それが水底でキラリと日差しを受け輝いた。

そして・・・

「じょうはっぴき目の魚は人魚姫かい・・・ああもう、嬉し泣きならウチのいない所でや
ってや!」
由宇の声を聞きながら、人魚姫は嬉し涙を流したのであった。



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