プレゼント(クリスマス) 投稿者:akia 投稿日:12月20日(水)18時25分
「はい、これで終わりです」
サンタの格好をした理緒が、段ボール箱の整理を終えて一息つく。クリスマス商戦も今日
で終わり、年末年始の郵便のバイトを除けば、理緒はイブと明日一日フリーの身の上で
あった。
「ほんとにお疲れ様、今度はバイトでなくお客さんとして来るといい。うんとオマケして
あげるからね」
「いえ、とんでもないです」
初老のスーパーの店長に言われ、理緒はパタパタと遠慮するように手を振る。
「ほんと遠慮しなくていいよ・・・ん、そう言えば時間は良いのかな?」
「え?」
慌てて理緒が時計を見ると、時計の針は九時を少し回った所。
「ほら、バイトに来たときプレゼントみたいな箱を持っていたから、誰かに上げるのかと
思ってね」
「ち、違います。コレは浩之さん貰ったもので」
「ほう、理緒ちゃんの彼氏か」
店長は軽く笑いながら言う。
「や、や、やだっ違いますよ。浩之さんは・・・」
顔を赤らめ、しどろもどろになってしまう理緒。そして、そんな理緒を見つめながら店長
は優しく問いかける。
「中には何が入っているのかな?」
「?・・・開けてみます」
そして理緒は、ポケットにしまってあった箱を取りだす。
「あ、いいよ。それは理緒ちゃんが貰った大事なものだから」
「でも・・・正直言って、一人で見るのは怖くて・・・大事な人から貰った大事な物を一
人で見る勇気がなくて・・・だから、一緒に見て頂けますか?」
ついと、理緒は複雑な笑顔を店長に向ける。
「そうかい、それでは一緒に見ようかな」
「はい」
店長の言葉に後押しされ、理緒は箱のラッピングを破り、中身の箱を開けた。
「うわ、可愛い・・・見てください店長さん」
素直に喜び、理緒は箱の中身を店長に見せる。
「ほぅ、ウサギの人形だね」
「可愛いなぁ・・・アレ、何かついてる」
「どうしたの?」
「あの、何かこの子の腕に何かついているみたいで・・・これ・・・指輪?」
二人して見てみれば、確かに銀色に輝く指輪がウサギの腕にはまっていたのである。
「え、どう言う意味?」
「クリスマスプレゼントにしては、意味深だね」
素知らぬ風に店長は言う。
「そ、そんな事ないですよ。き、きっと最初からこの子に付いていたんですよ」
なんとか弁明しようとする理緒であったが、その時、ウサギの腕から指輪が外れ落ち、
ちょうど理緒の手のひらの上へと舞い降りた。
「・・・」
理緒の手のひらで輝くのは、黄色の澄んだ輝きの石。『ぽう』っとした表情で眺める理緒
に、
「きっと彼は待っている。だから・・・サンタは待たせてはいけないよ」
店長は背中を押してあげる。そして・・・

「はい」

ほんとうに嬉しそうな笑顔で、理緒は返事を返したのであった。


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