せんあな 投稿者:akia 投稿日:7月22日(土)18時58分
「へ〜夏祭りか・・・いいよ、ネタに詰まってた所だし・・・大志にも連絡してあるの?・
・・判った。行くよ玲子ちゃん・・・

そんな会話をしていたのは数時間前。玲子ちゃんからの電話で夏祭りを見に行くこととな
ったのだが、電話の後直ぐに大志がやってきて、現在連行状態となっていた。実際の所、
車に乗ってから二時間も経っていないだろうが、非常に山深い光景に、民家すら見えない
状態と日も暮れてきたせいも相まって、ひたすら寂しい光景となっていた。
「なぁ大志?今から行くところの祭りって、有名なのか?」
「ん?確か・・・その筋で聞いたことがあったな。ご神体を手に入れたモノはその年一番
のヒーローになれるとか」
運転席の大志に聞くと、そんな事を返してきた。なんかよくTVとかでやってるような奇
祭なのかな?
「・・・」
とにかくいつの間にかついた所は、かなり開けた場所で、もの凄い数の車によって占拠さ
れていた。そして、それに伴って凄い人数が山を目指し徒歩で上がってゆくのである。オ
レ達もその集団に入り山を登ってゆくと、古風な字体の石塔に、かなり広がった空間が目
の前に現れた。
「凄い人数だな」
辺りを見回すと、人間だらけであり、それが日も暮れたせいで焚かれた篝火によって、異
様な熱気と雰囲気を作っていたのである。
「なんか、こみパみたいな熱気だな」
汗を拭い、オレは前へと進む。確か・・・玲子ちゃんは櫓の上にいるからと言っていたっ
けな。
「なぁ大志、玲子ちゃんは・・・あれ?」
振り返ると、さっきまでいた大志が消えている。この集団のせいではぐれたか?
「ここだよ〜千堂く〜ん」
突然声を掛けられ、オレは声のする上をの方を見た。そこには、玲子ちゃん他友人多数が、
ギャラリーらしい集団となって、竹で組まれた櫓の上にいたのである。
「玲子ちゃん?」
「がんばってね〜」
「はい?」
何をがんばるんだ?そう思ったとき、一際大きな櫓の上に、白の装束に身を固めた神官ら
しい人物が現れた。辺りは一瞬にして静まり返り、神官の足元側だけ人が離れる。そして
異様な緊張感がピークに達した瞬間、神官らしい人物は、開いた空間目掛け紫の布を放っ
た。
「千堂君それ取ってーっ!」
玲子ちゃんが叫ぶ。そうか!これがご神体か!
「おりゃぁぁぁぁぁぁぁー!」
オレは夢中でダッシュし、無我夢中でそれを取った。
「やった!取ったぞーっ!・・・?」
当然乱戦模様になると思われたのだが、誰一人として、オレの側にはいなかった。
「え?」
意味が判らず、キョロキョロしていると、
「祝い神事を奉る。今宵の御神男は彼の男と決まらん。さぁ真の漢を目指し、手に入れる
が良い!」
神官はそう言った。
「・・・ご、御神男!おとこ!」
慌てて振り返れば、口や体からピンクや紫のオーラを漂わせていそうなぐらい、気合いの
入りまくった無数の男達が、いつの間にか赤ふんどし一丁になって、目を血走らせて立っ
ていたのである。
「さぁ、穴掘神社神祭、ご開通の義、ホラ貝の音を持って開始とする」
「なんだよ穴掘神社って!ご開通ってなに!」
「千堂君〜、経験したら教えてね〜」
無責任な事を言うのは玲子ちゃんだ!
「何をじゃーっ!」
「OHMy同士和樹よ!幾ら作品のリアリティを増すためとは言え、の世界に踏み込むと
は、頼もしく思うぞ。さぁ、我々の世界征服の第一歩のため、遠慮せずにがんばるがいい」
いつの間に行ったのか、玲子ちゃん達の側に大志がいやがる。こいつら絶対確信犯だった
な。それよりもだ・・・
「こんな夏祭り何処にあるーっ!」
オレの叫びは、ホラ貝の音によってかき消される。
「さぁ禁断の世界だ和樹よ!我が千年王国のためがんばってくれーっ!」
「あとで教えてね〜」
「お前ら絶対後で泣かすからなーっ!」
叫び、転がり、駆け抜けながら、オレは走る。そして、自分のサークルが絶対そっちにだ
けは並ばないようにと、心の奥底で願うのだった。

「ヲタクをなめるなー!」
そして・・・オレは風になったのであった。