姉妹鍋(2月のお題「お鍋」サンプルSS) 投稿者:AIAUS 投稿日:2月1日(木)00時44分
冬を代表する味覚、鍋。
 それは柏木家においても例外ではない。
 グツグツと煮える土鍋を囲んで、楽しい夕食が開かれていた。

「ふ〜ん。梓のところでは、こうやってダシを取るんだな。変わっているな」
「なんだよ、あたし達から見れば耕一のところのやり方の方がヘンだって」
 梓から鍋の作り方を聞きながら、耕一はしきりに感心している。
 それを横目でつまらなそうに見ているのは千鶴と楓。初音はおいしい鍋料理を食べるのに
夢中で、耕一と梓には注意が向いていないようだ。
「料理になると、梓の独壇場になるんだから」
「千鶴姉さんの独壇場になると、大変なことになるし……」
 千鶴はチロリと楓を横目でにらんだが、楓は何気ない風を装って目をそらした。

「やっぱりハマグリは使うだろ、普通」
「こっちじゃ使わないけど。やっぱり、山の中だったからかな?」

「だいたい、楓だって料理作れないじゃない」
「作れないじゃなくて、作らないだけ。千鶴姉さんと違うもの」
「あら、作らない人間がどうやって上達するの?」
 千鶴と楓の間には険悪な空気が漂っていた。

「たとえば、今、このお鍋に一つ味を足そうと思ったら、何を入れたらいいか、
あなたにわかるかしら?」

 楓は黙って、チューブ入りの「ニラショウガ」を手に取る。
 千鶴はそれをせせら笑うようにして、カップ入りの「ブルーベリージャム」を
手に取った。

「ところで、耕一。そろそろ食べないと冷めちゃうよ」
「ああ、そうだな」
「とってもおいしいよ、梓お姉ちゃんのお鍋」
 千鶴と楓の行動には気付かずに、梓と耕一、初音は鍋に箸を付ける。

「ゴフッ!!」(X3)

「おかしいわね……」
「へんだよね……」
 似た者姉妹、千鶴と楓は、床に倒れた三人を前にして、しきりに首を捻っていた。
-------------------------------------------------------------------------
このSSは、2月のお題「お鍋」のサンプルSSです。

感想、苦情、リクエストなどがございましたら、
aiaus@urban.ne.jp
まで、お気軽にお願いします。

http://www.urban.ne.jp/home/aiaus/