それぞれの年賀状(一月のお題「年賀状」サンプルSS) 投稿者:AIAUS 投稿日:1月1日(月)00時11分
「あけましておめでとうございます」
 俺の目の前で、晴れ着姿の瑞希が丁寧に頭を下げている。
「あけましておめでとうございます……似合うな、晴れ着」
「そっ、そうかな……」
 瑞希は顔を赤らめてモジモジと身を縮ませている。
「とにかく、部屋に入れよ。初参りはそれからでもいいだろ」
「うん……」
 晴れ着姿の瑞希を部屋に招きいれた俺は、炬燵の上に並べられた年賀状の整理を続けることにした。

「あっ、もう年賀状、届いているんだ?」
「来たやつだけ返すつもりだったからさ、今、誰から年賀状が来たか確認を取っているんだよ」


『賀賞 今年もよろしくしてあげるわよ、ポチ 詠美』
「???」
「もしかして、賀正って書きたかったのかしら?」
「あいつ、本当に学校卒業できるのか?」

『謹賀新年 今年も宜しくお願いいたします 長谷部』
「これ、きちんと硯で墨を擦って書いたのかな?」
「多分な。彩らしいや」

『賀正 今年もよろしくお願いします チサ』
「塚本印刷の年賀状の横に書いてあるわけね。なんか、ついでっぽくない?」
「言うな。千紗ちゃんの家は今、苦しいんだ」

『新年 あけましておめでとうございます 千堂さんのこれからの同人活動のご発展とご栄達を願い、
また、今後の……』
「長い。南さんか」
「手紙でも読み飛ばされるのね、可哀想に」

『千堂く〜ん。新年のプレゼント』
「なんだ、袋が付いて……ブハッ!」
「……なに、これ?」
「有名ヤヲイサークルの誘致状。ぜひ、俺に執筆してもらいたいそうだ……」

そして、最後に現れたのは謎の銀色の紙。
表にはきちんと住所と宛先が書いてある。由宇からだ。
「10円玉でこすれってことか?」
「ハンバーガーショップとかで渡されるクジみたいなやつなの?」
「みたいだ……なんだこりゃ?」

『今から行くで』

「和樹〜っ! もう、年賀状届いたやろっ!?」
 バンッ!
 ドアを突き破るように開けて入ってきたのは、いつもと変わらぬ格好の由宇。
「なっ、なんや。姫始めの最中やったんか……40分ほど経ったらまた来るさかい、仲良うな」
「なんで、あんたはいつもいつも、そういうことばっか言うのよぉ!!」
「どひぃ〜っ!」
 晴れ着の袖をまくって握り拳を作って由宇を追いかけていく瑞希。命からがら逃げていく由宇。
今年もまた、騒がしい一年になりそうだ。

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 おまけ

「千堂さん、まだ御返事くれないなあ……」
「メールで年賀状というのは、まずかったんじゃないか?」
「そんなことないもん、お兄ちゃんの意地悪」
 兄の愛が報われない立川雄蔵であった。

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